キャロットケーキのお話しとレシピ

イギリスのキャロットケーキ
イギリスのキャロットケーキいろいろ

イギリスのお菓子は、家庭で作るのが当たり前

イギリス菓子の大きな特徴の一つは、身近にある材料と道具で手軽に作れるものが多い、という点。
お隣の国フランスと違い、イギリスのお菓子やプディングは買ってくるものではなく、家庭で作るのが当たり前。手元にある乏しい材料で何とか美味しいデザートやおやつが作れないかと、主婦が工夫を重ねた結果生まれたお菓子も多いので、シンプルで簡単なものが目白押しです。おかげで私たちにとっても敷居が低く、おうちで作ってみようと思えるものが多いのは嬉しい限り。

今も大人気のキャロットケーキ

野菜を利用するお菓子が多いのも、家庭菓子の自然な流れ。種々ありますが、中でも甘いニンジンを使ったキャロットケーキは今も大人気。大人も子供も、老いも若きも、美味しいケーキに目がない甘党からヘルシー志向のダイエッターまで、とにかく間口が広い人気者。ティールームの定番であるのはもちろん、ナチュラルなものが好まれるファームショップなどのカフェテリア、チェーン店のコーヒーショップまで必ずと言っていい程置いてあり、それぞれがオリジナルのレシピで作っているので、旅行で訪れても気軽に食べ比べが楽しめます。

見た目とは違ったしっとり食感のキャロットケーキ

ホールのキャロットケーキ
サンドイッチティンを使って焼いたキャロットケーキ

さて、肝心のお味ですが~茶色で、一見どっしり重そうに見えるイギリスのキャロットケーキ、一口食べてみるとそのしっとり感と、深い味わいに驚きます。しっとりとした食感は大量に入れる人参から。これはチーズおろしなどで極細いシュレッド状にしたものを入れます。奥行きのある味わいはブラウンシュガーとたっぷり加えるスパイスのおかげ。よく使われるのは、コリアンダーやシナモン、ジンジャーなど数種のスパイスを混ぜたミックススパイス。他にも作り手によって、サルタナやクルミ、オレンジなど種々の材料が加わり、それらが人参と合わさって独特の風味を作りあげています。
また、軽さの秘密はバターの代わりに使う植物油。そして大きな一切れも最後まで爽やかに食べさせてくれるのが酸味のあるクリームチーズのフロスティング。デコレーションはお店によっては昔ながらのバターアイシングの時もありますが、1960~70年代にアメリカからクリームチーズフロスティングが入ってきてからは、もっぱらこちらに軍配が上がっているよう。

キャロットケーキの起源

ところで、イギリスでは一体いつ頃からキャロットケーキが食べられてきたのでしょうか。
はっきりとした年代は分かりませんが、中世にはすでに人参入りのプディングは作られていたよう。18、19世紀になると料理本にも登場し始め、有名なミセスビートンの料理書(1861)にはキャロットプディングの名前があります。これは茹でてマッシュした人参をパン粉やスエット、卵などと混ぜて、蒸すかあるいは焼いてくださいというもの。オーブンで焼いたものはケーキと呼べそうです。

トレイベイクタイプのキャロットケーキ
トレイベイクタイプのキャロットケーキ

第二次世界大戦ころから人気のケーキに

そしてキャロットケーキが一躍イギリスの人気ケーキに躍り出たのは、第二次世界大戦中のこと。食糧難が続いたこの時代、イギリス政府は、限られた配給の食糧と家庭菜園などで手に入る食材で作ることのできる料理やお菓子のレシピを、Dr.キャロットなるキャラクターまで作って広くプロモーションします。その中のひとつが甘い人参をたっぷり入れて作るキャロットケーキ。お砂糖はちょっぴり、スパイスも入らず、貴重な卵は1個だけ(乾燥卵パウダー+水)、アイシングもなし、そんなレシピですが、子供たちにとってはそれでもケーキはケーキ。笑顔で頬張ったに違いありません。他にも政府発の当時のレシピにはりんご飴やアイスキャンディー代わりに棒に生の人参を刺しただけの「キャロットオンスティック」、レモネードならぬ「キャロレード」などなど今となれば笑い話として語れるものがいっぱい。
アイシングやクリームでデコレーションされた色とりどりのケーキの中から、今はダイエット中だから~なんてキャロットケーキを選ぶことのできる今の時代、この幸せを文字どおり噛みしめるために、当時のレシピを作ってみるのもたまにはいいかもしれませんね。

トレイベイクタイプのキャロットケーキ
トレイベイクタイプのキャロットケーキ

でも今日のところは、乾燥卵とクッキングファット(調理用油脂)の戦時中レシピではなく、最高に美味しい現代のキャロットケーキをご紹介します。是非お試しを♪

キャロットケーキ<レシピ>

Carrot Cake

~キャロットケーキ~

直径20cm丸型1台 or 17×27㎝長方形

卵 _______________2個
ブラウンシュガー __150g
植物油 _________120ml
【A】
 ┏ 薄力粉 _____________200g
 ┃ ベーキングパウダー __小さじ1
 ┃ 重曹 _____________小さじ1
 ┗ ミックススパイス※ __小さじ2
人参(皮を剥いて正味) 200g
【B】
 ┏ オレンジの皮のすりおろし __1個分
 ┃ オレンジの果汁 ________大さじ3
 ┃ サルタナ______50g
 ┗ くるみ _______50g

<フロスティング>
無塩バター ________60g
粉砂糖 ___________60g
クリームチーズ ___150g
レモン果汁 _____大さじ1
くるみ(トッピング用)__少々

<下準備> *型には底と側面に紙をしいておく
*バターを室温に戻す
*オーブン予熱 170℃

  1. 人参を余分な水分が出ないようチーズおろしなどで細い千切り状にし、くるみを細かく刻みます。
  2. 卵にブラウンシュガーを加えて、ハンドミキサーでふんわりするまで2~3分混ぜます。
    植物油を加えてさらに軽く混ぜます。
  3. 2にAの粉類を全て合わせてふるい入れたら、1とBもすべて加え、ゴムベラで粉が見えなくなるまで混ぜ合わせます。
  4. 準備した型に生地を流し入れ表面を平らにし、170℃のオーブンで50分程焼きます。
    (サンドイッチティン2つに分けて焼く時や長方形のトレイで焼く時は35分程)
    5分ほど置いてから型からはずし、網にのせて冷ましておきます。
  5. <フロスティングを作る>
    バターを柔らかく練り、粉砂糖を加えてなめらかにしたら、クリームチーズとレモン果汁を加えます。ハンドミキサーでふんわりするまで撹拌しましょう。
  6. 冷めたケーキの厚みを2枚にスライスし、間に5のフロスティングのうち1/3量ほどサンドします。上に残りのフロスティングをのばし、刻んだくるみをちらします。
    ( 長方形のトレイベイクにするなら上にぬるだけで OKです。)

※ミックススパイスはイギリスの焼き菓子によく使われるスパイス
手作りする場合は
コリアンダー50%・オールスパイス30%・シナモン10%・ジンジャー5%・ナツメグ5%


★★UK Walkerおすすめの一冊!★★
Amazonでご購入いただけます
『British Savoury Baking』
イギリスの古くて新しいセイボリーベイキング

9月29日発売
安田真理子(著)

¥1,760 単行本

★★UK Walkerおすすめの一冊!★★
Amazonでご購入いただけます
ジンジャーブレッド 英国伝統のレシピとヒストリー
安田真理子(著)

¥1,564 Kindle版(電子書籍)
¥1,738 単行本

安田真理子

5,980 views

仙台市出身 宇都宮にてイギリス菓子教室「Galettes and Biscuits(ガレットアンドビスケット)」を主宰。イギリスの暮らしに息づくお菓子の味・...

プロフィール

ピックアップ記事

関連記事一覧