写真で巡るイギリスの旅
~シングルモルトの島々《後編・アイラ島》~
前回のスコットランド、アイランズを紹介した前編に引き続き、後編はシングルモルトウイスキーの宝庫、アイラ島とアイラ島の蒸留所を紹介しよう。
- キンタイア半島からアイラ島へ
- 海抜0mに建つ蒸留所、ボウモア(Bowmore Distillery)
- 癖の強い風味だがファンの多いラフロイグ(Laphroaig Distillery)
- ピートの香りが強く染みついたアードベッグ(Ardbeg Distillery)
- アイラ島で唯一ジンも手掛けるブルイックラディ(Bruichladdich Distillery)
- ピート感のない異色のアイラモルト、ブナハーブン(Bunnahabhain Distillery)
- フルーティーなウイスキーを造るカリラ(Caol ila Distillery)
- パンチ力の効いたシングルモルト、ラガヴーリン(Lagavulin Ditillery)
キンタイア半島からアイラ島へ
キンタイア半島の付け根に近い街、ケナクレイグから乗ったアイラ島行きのフェリーは、早朝にもかかわらず乗客でいっぱいだ。ラウンジに座って、うとうとしているうちにアイラ島に2時間で到着する。フェリーが到着したアイラ島のポートエレンは、インフォメーションセンターもない小さな港町だった。
地図を眺め、とりあえず島の中心地ボウモアに向かってみる。起伏のない道がどこまでも真っ直ぐ続き、ところどころ道の両脇が沈んで水がたまっているアイラ島特有のピートでできた湿地地帯があった。
アイラ島の産業はウイスキー造りと観光。まさにウイスキーを作るためにあるような島だ。島全体が海藻成分オークを含む厚いピートが堆積している。
このウイスキーを眠らせる熟成庫は、海辺に建てられ常に海風にさらされている潮風とヨードの香りが強烈なウイスキーはこんな環境で作られていた。
アイラ島は人口およそ3,400人の 600キロ平方メートルほど の島だ この島を訪れる観光客の多くは蒸留所をめぐるウイスキーフアンと言っても過言ではない。蒸留所は島のあちこちに分散している。見学の時間も限られているので、全てをくまなく見るためには1週間は覚悟しなければならないであろう。
海抜0mに建つ蒸留所、ボウモア(Bowmore Distillery)
ボウモアとはゲール語で「大いなる岩礁」を意味する。この蒸溜所は島一番の大きな湾に面した海抜0m地帯に立ち、その名のように大西洋が荒れたときには打ち寄せる波しぶきの下に隠れてしまうのだ 。
アイラ島のほぼ真ん中ともいえる場所に建つボウモア蒸留所 。ここのウイスキー造りは1779年の創立以来まったく変わっていない。大麦を発芽させる製麦作業 は、自社によるフロアモルティング。モルトマンと呼ばれる職人がおよそ8tの大麦を4時間ごとにスコップでかき混ぜるのだ。
しかし、最近は熟練の技能を必要とするモルトマンによる”フロアモルティング”から、機械化された”モダンモルティング”を行う専門業者(モルトスターと呼ばれる)に委託する蒸留所が増えている。自社で、フロアモルティングを行う蒸留所は、このボウモア蒸留所を含めて数えるほどになっていた。
この後、麦芽はアイラ島特有のピートが溶け込んだ仕組み水で整えられ、ピートで焚きしめられて、ヘビーな酒質を生むストレート型ポットスチルで蒸留される。
熟成は海抜0mの倉庫で10数年から20年以上かかる。試飲室でのテイスティングはハードで、少し薬くささを感じる癖のある味は、アイラモルト 全体に共通するものだ。ピートの中に含まれる香りがこの味に大きく影響している。
》ボウモア蒸留所:https://www.bowmore.com/
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癖の強い風味だがファンの多いラフロイグ(Laphroaig Distillery)
ラフロイグは、ヨードピートと潮の香りを際立たせる重厚でクラシックな風味が特徴だ。蒸留所は島の南の海岸、ポートエレン港の近くに位置している。ここではアイラ島に自らのフェザーと海藻と苔を大量に含んだピートエリアを所有し、フロアモルティングから製麦 の工程を通した麦芽はじっくりとピートで焚きしめられている。その後発酵させ得られたもろみは、小さなスチルで蒸留されている。
その熟成には、海に直接面した倉庫で行われている。
蒸留時に採取する原酒のタイミングを遅らせ、よりタールの風味を強めるなどの工夫がなさなされている。今まで飲んだシングルモルトの中でも最も個性的な香りだった。
強烈な香りは薬を飲んでいるような感じすらあったが、不思議なことにすぐまた飲みたくなる、そんな個性を持つシングルモルトウイスキーだ 。
チャールズ皇太子もファンというラフロイグ。正露丸のようなクレゾールと評されることもある。蒸留所に紋章が飾れている。
》ラフロイグ蒸留所: https://www.laphroaig.com/en/
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ピートの香りが強く染みついたアードベッグ(Ardbeg Distillery)
アードベックの歴史は古く、1794年までさかのぼる。シングルモルトが秘密のウイスキーだった時代に、アードベックはすでに世界の偉大な蒸溜所の一つだった。一時閉鎖を余儀なくされたが、1997年の再開はアイラモルトの復活の最初の兆候であり、 アードベックはこの中で主要な位置を占めるとともにその恩恵を受ける蒸溜所にもなった。若い所長のスチュワート・トムソンとその妻のジャッキーに対する会社の信頼も報われている。彼女の知識とエネルギーは「蒸留所の看板」であり見学者の間にも人気がある。
ここのキルンは送風機がなく、そのためピートの煙がヘビーに染み着くという点で非常にユニークである。水源がピューテイーであるということも、アードベッグのタールようなフレーバーに大きな影響を及ぼしている。アードベックを愛する者の中には、りんごの木やレモンの皮のようなフルーティーさは、スピリット・スチルの再循環システムに由来するものだと信じる者もいる 。
1980年の初頭に閉鎖されたアードベッグ蒸留所だが、1980年代の終わりには再稼働している。
ここのキルンは送風機がなくそのためピートの煙がヘビーに染み付くという点で非常にユニークであった 。
アードベッグのポットスチルから魅力的なウイスキー、しっかりとしていて、かつ暖かく癒すような食欲をそそる味わいのシングルモルトが作られている。
》アードベッグ蒸留所: https://www.ardbeg.com/en-int
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アードベッグ 10年 箱入り [ ウイスキー イギリス 700ml ]
¥4,970
アイラ島で唯一ジンも手掛けるブルイックラディ(Bruichladdich Distillery)
ブルイックラディ蒸留所は、ロッホ・インダール (アイラ島のボウモアも面した湾)の北の海岸にある。
蒸留所の水は、隣りを流れるブルックラディ川の水を使っている。川の水は鉄分を多く含んだ岩から湧き出たもので、ピートの上を静かに流れてきたため風味深い味わいである。 長い間にわたってライトでありながらもしっかりとした麦芽風味が守られ、ほのかなパッションフルーツと海藻や塩を融合させた趣のある風味を楽しむことができた 。希釈するときに蒸留所の仕込み水を使用することとチル・フィルターをかけないことによって、その味わいが一層強められているようだ 。
ブルイックラディ蒸留所では2003年に瓶詰めの機械一式を設置したことにより、一層その味わいを深めることが可能になった。蒸留所は、1881年に建てられ1886年には改装 されている。1975年には蒸留所の拡張工事を経験しているが、現在も創設当時と当時と変わらない蒸留所の面影を残している 。
蒸留所のニックネーム「ザ・ラディ」を商品名にし、 蒸溜所の建物の塗装の色と合わせるために海の色である薄い青のラベルをつけた 。
》ブルイックラディ蒸留所: https://www.bruichladdich.com/
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¥5,155~
ピート感のない異色のアイラモルト、ブナハーブン(Bunnahabhain Distillery)
1881年に建てられたブラハーブンはアイラの蒸留所の中でも一番わかりにくいところに位置しているようだ。蒸留所の名称は、ゲール語で「河口」を意味するもので、ゲール語を母国語としないものにとってはとても難しい名前である。
この蒸留所ではアイラ島で唯一の純粋な湧水、石灰岩を通って湧き出た水をパイプで蒸留所に運び使っている。そのため、途中でピートを取り込まないので口当たりが軽く、香りもライトで「最も飲みやすいアイラ」と言われる異色のアイラモルトが生まれる。
》ブナハーブン蒸留所: https://bunnahabhain.com/
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ブナハーブン 12年 [ ウイスキー イギリス 700ml ] [ギフトBox入り]
¥4,547~
フルーティーなウイスキーを造るカリラ(Caol ila Distillery)
カリラと発音される名前は、ゲール語で「海峡」を意味している。 ポート・アスケイグ港近くの入江にあり、スチルハウスの大きな窓からは海峡を渡るフェリーが、ぽっぽっと音をたてて海を横切る風景を見ることができる。
蒸留所が一番よく見えるのはフェリーからだ。1846年に創業した蒸留所、1970年代に改築された建物は、現在では時代の傑作として認められている。蒸留所は機能的で、かつ魅力的であった。
蒸留所の仕込み水は、極めて塩分が強くミネラルを含んだ石灰岩から湧き出たものを使っている。
蒸留に使うポットスチルは、3つのストレートヘッド型のウォッシュスチルと、3つのスピリット・スチルが使われていた。
カリラのウイスキーは、フレーバーの非常に生き生きとした味わいで、麦芽の甘さ、フルーティーななかにも、芳醇な花の香りをまとったエステリーを伴うウイスキーだった 。
》カリラ蒸留所: https://www.malts.com/en-gb/distilleries/caol-ila
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カリラ 12年 箱入り [ ウイスキー イギリス 700ml ]
¥5,248~
パンチ力の効いたシングルモルト、ラガヴーリン(Lagavulin Ditillery)
これまで紹介してきた蒸留所の名称は、スコットランドで使われてきたゲール語からくるものが多いが、ラガヴーリンという意味もゲール語で「水車小屋がある窪地」という意味だ。
ラガヴーリン蒸留所としての歴史は1816年の創業から始まるが、その創業以前の1700年代中頃に非合法の蒸留所として酒造りを行っていたころまで遡ることができる。
ブレンデッドウイスキーで有名な「ホワイトホース」のキーモルトウイスキーとして使われていた、ラガヴーリンのウイスキー。現在は、ブレンド用のウイスキーよりもシングルモルトウイスキーの比重が高くなり、こくがあってパンチ力の効いた重量級ボクサーのようなシングルモルトウイスキーを造っている。
》ラガヴーリン蒸留所:https://www.malts.com/en-gb/distilleries/lagavulin
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ラガヴーリン 16年 箱入り [ ウイスキー イギリス 700ml ]
¥7,259~
スコッチウイスキーの中でも、シングルモルトウイスキー好きには聖地とも呼べるアイラ島。
ピート香の強いシングルモルトが多いが、蒸留所によって造るウイスキーには個性があった。
機会があれば、ぜひご自身で足を運んで蒸留所をめぐっていただきたいものだ。
春以降に再開されるアイラ島の蒸留所をめぐる現地ツアー(4~9月催行)もあるので、参考にご覧いただきたい。
【ウイスキー蒸溜所】アイラ島の8つの蒸留所を制覇!2泊3日エディンバラ発着ツアー
催行:旅ロンド(フジサントラベル)