レディライクにアフタヌーンティーを楽しむためのマナー考
はじめまして、宮脇樹里です
はじめまして、宮脇樹里です。現在、日本橋にあるジュリスティールームの
ブランドオーナーとしてメニュー監修や商品開発の仕事をしています。
それ以前は、英国のコッツウォルズで『ジュリス』という店舗の経営、ティールーム業に携わりました。その拠点を日本に移したのが2017年。その頃から日本でも徐々に英国菓子の認知度が高まり、今やアフタヌーンティーは空前のブームを迎えています。
英国式ティータイムで知った「何もしない」時間の過ごし方
コロナ禍にもかかわらず数ヶ月先まで予約が埋まるホテルもあるというから驚きを隠せません。私もアフタヌーンティーは大好きで、英国在住時代は、よくマナーハウス(領主の館(ホテルレストラン))へ出かけて午後のお茶を楽しんだものです。冬は燃える暖炉に当たりながら、夏は手入れの行き届いた庭園を眺めながら過ごすティータイムは究極の贅沢です。
せわしない日常の疲れを忘れて「何もしない」時間の過ごし方を英国式のティータイムで知りました。
作法とは、本質を知ることがマナー習得への近道
本場英国でティールーム業に携わった経験から、これまで英国菓子や紅茶文化をメインテーマに取材を受けましたが、最近はアフタヌーンティーのマナーについてよくきかれます。あるライフスタイル誌の取材でライターさんがこんなことを言いました。
『アフタヌーンティーに憧れても、お作法となるとなんか身構えてしまって心から楽しめないのよね』。
『お作法を知らないとなぜ楽しめないのですか?』と私。
『アレ、なんでだろう…恥をかくから?』とライターさんも困惑気味。
憧れのアフタヌーンティーを楽しみたいけれど、一歩踏み出せないでいる、そういう方にひとつ知って頂きたいことがあります。もしもそんなジレンマを抱えていたら、ここで作法とは何か。その本質を知って頂くことが、何よりマナー習得への近道です。
ティーカップの持ち方やティーフーズの頂き方、ミルクが先とか後とか、そういう所作の話ではありません。
でも、これを心に留めておくと、これまでの景色が明日から違って見えるかもしれません。あなたを取り巻く環境も変わっていくでしょう。なぜならそれは対人関係にも活かせるからです。
英国であった残念なできごと
次にあげる3つの事例は、私の友人含む人たちが英国訪問中、満足のいくサービスを受けられなかった、ちょっと残念なお話。
店側の立場からそのような接客態度をした理由は何かを考えてみました。
まずは、 “とっておきのティープレイス”のリストを携え、はりきって英国へ旅立った友人の話。
彼女によると、予約先のホテルラウンジで支配人から不快な扱いを受け、楽しみだった午後のお茶も気分台無し。眺めのよい窓際席が空いているのに頑なに「予約席だ」と断られ、軽くあしらわれたことに我慢がならなかったそうです。スマホを離さず、シャッター音を響かせていたK子ちゃんは、お庭の眺めはおあずけとなってしまいました。
次は、たまたま私も居合わせたラウンジでのワンシーン。
ロンドンのホテルラウンジでなかなかオーダーを取ってもらえない3人組の日本人男性客。とうとうその一人が立ち上がり、ブンブン手を振って『お~い!』と日本語で叫んでもウェイターは一瞥もくれない。いったんおかけになってお待ちになってはいかが、とこちらが声を掛けて間もなく、ウェイターが男性客のテーブルに現れるという、笑うに笑えない話。
そしてこれは私自身の体験談ですが、長年通い続けたマナーハウスでのテレビ撮影での一コマ。
交渉の末、やっと撮影許可を頂き日本からの撮影クルーが同行した際のこと。クルーメンバーにはドレスコードを伝えておいたのに、当日現れた短パン姿のカメラマン。フロアマネージャーから、にべも愛想もなく『NO!』と拒否されてしまいました。 つまりは、サービスを提供する側が、こちらの教養としてのマナーを見て、瞬時に判断をしているのです。
欧米社会では、一流のサービスを享受するにふさわしい振る舞いがお客様側にも求められているということでしょうか。
マナーの基本は、周りの人に少しの気遣いを
ただ、私たち日本人がすべて異文化のことを理解し、完璧な作法を身につけるべき、ということではありません。リスペクトをもって人に接することを意識すれば、相手もあなたを尊重し受け入れる、というのは私自身が体験してきたことです。
接する人を思いやり、気遣いができるかどうか。ウェイターに『こんにちは』の挨拶や笑顔もなく、案内すら待たずに勝手に席に着く。あるいは、仕事から解放されたくてラウンジでお茶をゆっくり楽しんでいる人にもお構いなしにすぐ隣でPCを開き、キーボードをバチバチ鳴らして、仕事を始めるビジネスマン。あなたは、どう思います?私は、デスクの上に残してきた仕事が急に気になりはじめて、一気にテンションが下がります。
自分以外の周りの人にちょっと意識を向けることが思いやりであり、マナーの基本ではないかと思います。だからこそそういう配慮を持ち合わせている人を教養人と呼び、リスペクトをされるのが欧米の社会。大切なのは、大人の配慮ができるかどうかであって、たとえ所作の一つ二つ間違えてもそれは恥ではありません。『女王様とフィンガーボール』のエピソードは、女王様が、客人に恥をかかせないためにフィンガーボールの水を飲むこともいとわない寛容さを語っています。マナーの達人とは、相手を理解し受け入れようとするやさしさとマインドを持ち合わせている人だということを教えてくれます。
もちろん、あのエピソードには、様々な解釈があるのでそれぞれに正しいと思います。やさしさの定義も人によってさまざまですね。マナーの所作とは、あくまでも相手へのリスペクトを形にしたものにすぎません。 偉そうにマナーについて語ってみましたが、ここまで私が英国での紅茶文化を通し、体験的に知り得たことです。
貴族発祥の紅茶文化アフタヌーンティー
多くの日本の女性が憧れるアフタヌーンティーは、まさに貴族発祥の紅茶文化。現代において階級を語るなど野暮なことはしませんが、彼らの紅茶のスタイルにも関心を寄せアプローチすることで新たに見えてくる世界を楽しんでください。さらにはアフタヌーンティー上のマナーにとどまらず、相互理解を深める様々なシーンでもお役立て頂けるとうれしいです。
ENJOY YOUR TEATIME!
JURI’S TEA ROOMご紹介
http://www.juris-tearooms.com/
〒103-8001
東京都中央区日本橋室町1-4-1 日本橋三越本店 本館地下1階
電話番号 : 03-3273-1840
営業時間 : 10:00 – 19:30
宮脇樹里について
- セントアンドリュース大学(英国)卒業、修士号取得
- コルドン・ブルーロンドン校卒業
- 2003年 英国コッツウォルズにて『Juri’s』開業
- 2017年 三越日本橋本店『ジュリスティールームス』開店(ブランドオーナー)
英国コッツウォルズにて、両親と共に思いつきで始めたティールーム業で、それまで習ったフランス菓子を並べるが、地元イギリス人から見向きもされず奮闘の日々を送る。
コッツウォルズの保守的な地元の人々の食文化への理解を深めるうちに、次第にリピーター客も増え、ティータイムにはアフタヌーンティーの予約客で埋まる人気店となる。
2008年 英国最高峰の英国ティーギルド「TOP TEA PLACE 2008」受賞。外国人で初の受賞者となる。
2017年9月 三越日本橋本店『ジュリスティールームス』ブランドオーナーとなり、商品企画や監修をつとめる。
現在、英国菓子教室『ジュリス ブリティッシュ ベーキング』オンライン化に向け準備中。
ジュリス ブリティッシュ ベーキング
LINE公式はコチラ
https://lin.ee/wzp91oh
【受賞】
2008年 英国ティーギルド「TOP TEA PLACE 2008」
【ディプロマ】
*グランディプロム(コルドン・ブルーロンドン校)
*国際プロトコルディプロマ(IVPスイスフィニッシングスクール)
【メディア出演】
* 『 Ozmagazine 』 『 Hanako』 『 Fudge 』
食情報誌やライフスタイル誌に掲載
* NHK『美の壺』『あさイチ』
紅茶と英国菓子で楽しむ英国式ティータイムの
魅力について出演
【著書】
*「コッツウォルズでティールーム~イギリスのお菓子に出合う」(文化出版局)
*「コルドン・ブルーの青い空~女ひとり、ロンドンシェフ修業」(講談社文庫)
*「コッツウォルズでティールーム~イギリスのお菓子に出合う」(文化出版局)
*「コルドン・ブルーの青い空~女ひとり、ロンドンシェフ修業」(講談社文庫)