ロンドンの人気アフタヌーンティー教室で学ぶ
「おもてなしの心」

ビートルズゆかりの地として有名な「アビーロード」からほど近く、セントジョンズウッドの閑静な住宅街で、2002年からアフタヌーンティー教室を開講されていたジュリアナ先生。

英国らしさを感じられる、広々としたヴィクトリアンハウスで、イギリス在住の方はもちろんのこと、世界中から訪れる生徒さんに「ティータイムの楽しさ」を伝え続けてきました。

日本のテレビや雑誌でも度々紹介されているジュリアナ先生のアフタヌーンティー教室

これまでに日本のテレビや雑誌でも度々紹介されており、海外からの生徒は日本人の割合がとても多く、レッスンには、進行のお手伝いと英日通訳を兼ねた日本人アシスタントが常駐しています。

今回は、2019〜2020年までアシスタントを務めていた私が、毎週火曜の素敵なティーレッスンの様子をご紹介します。

豊かな時間が流れるキッチン

ジュリアナ先生のキッチン

ここがロンドンでの私の“職場”だった、ジュリアナ先生のキッチン。

グリーンの壁にウッド調で揃えられた家具がとてもよく合い、窓の外に広がる中庭には、先生が愛情込めて育てているお花たちが咲いています。 緑いっぱいの中庭には、美しくさえずる小鳥たちや、庭の実をつまみ食いしにやってきたリスたちが次々にやってきて、パンにバターを塗ったり、茶器を並べたり、レッスンの準備で忙しなく動いている私の心を和ませてくれました。

アフタヌーンティーレッスン

ジュリアナ先生の自宅が教室に

毎週火曜のアフタヌーンティー教室では、自宅でアフタヌーンティーパーティーを開く際のいろはを、ジュリアナ先生のコツ付きで楽しく学びます。

まずこのキッチンで「サンドイッチ」と「スコーン」作りを学んだら、お隣のシッティングルーム(お茶の間)に移動。先生が事前に用意してくださっていた、焼き菓子とケーキを囲みながら、全員でアフタヌーンティーをいただく流れです。

テーブルセッティング

生徒さんが来る前に、テーブルをセッティングするのも私のお仕事。

人数分の食器と紙ナプキンを用意して並べるのですが、紙ナプキンは、その日のお花の色に合わせて、毎回異なる色・デザインのものを使用しています。

テーブルに飾られたお花のほとんどは、ジュリアナ先生のお庭に咲いていたもの

ちなみにテーブルに飾っていたお花のほとんどは、ジュリアナ先生のお庭に咲いていたもの。その日の朝にジュリアナ先生がお庭から摘んできてくださっていました。

写真を撮ったこの日は、大きなピンクのお花に合わせて、ピンクとゴールドの紙ナプキンを使いました。(花瓶がなくても、お皿に乗せるだけで、こんなに華やかなデコレーションになるのか!と学んだ日でもありました)

クリスマスシーズンの飾りつけ、ポインセチア

ポインセチアを飾っていたクリスマスシーズンには、赤とゴールドの紙ナプキンを。

「綺麗なお花が飾ってあると、会話のきっかけにもなるし、紙ナプキンの色と揃えているのよ、と言われれば、それだけで丁寧に迎えられている気分になるでしょう?」と先生。

慣れないうち、セッティングにも手間取っていましたが、「今日はどんな生徒さんたちがやってくるんだろう」と思いを馳せながらテーブルに色を添えていくこの時間が、いつしか本当に楽しい時間になっていました。

サンドイッチ

レッスンで作るサンドイッチは、サーモン、たまご、キュウリの3種類。ピンク、黄色、緑と色も鮮やかなのですが、より見た目を楽しめるようにと、丸、三角、四角と形にも変化をつけるのがジュリアナ先生流。

ジュリアナ先生流のサンドイッチ

「アフタヌーンティーを食べると思って、みんなお腹を空かせてきてるでしょう?」と、とっても気が利くジュリアナ先生。スコーン作りに取り掛かる前に、サンドイッチの味見の時間も設けられていました。

味見の時間には、サンドイッチ作りのコツはもちろん、余ったパンの耳の救済レシピや、冷蔵庫に入れておくときのポイント、サンドイッチが乾燥しない裏技など、いろんなお話をしてくださいます。

スコーン

ティータイムには欠かせないスコーン。ジュリアナ先生のスコーンは、口当たりの軽いふわふわの食感が魅力的です。

生徒さん(お客さん)たちが、熱々のスコーンを楽しめるよう、生地作りから成形までを生徒さんと一緒に行なったあと、アフタヌーンティーを楽しむお茶の間に移動し、みなさんがサンドイッチを食べ始めたら、私がスコーンをオーブンに入れて焼成するという流れです。

オーブンで焼くスコーン

アラームが鳴ってオーブンを開ける時間は、まさに至福のひととき。焼き立てのスコーンの香りがキッチン中にふわっと広がり、幸せな気持ちに包まれます。

焼きたてのスコーン

ですが、寒い冬のある日のレッスン。オーブンを開けても、甘い香りは漂わず、冷たく小さなスコーンが並んでいて、思わず冷や汗をかきそうになったことがありました。

慌ててお茶の間にいる先生を呼び、スコーンの様子を告げると、私の背中をさすりながら「まあ、かわいそうに! オーブンを開けて、本当に驚いたんじゃない? もう大丈夫よ。焼き上がりまでに時間があるから、早くお茶しに来なさいね」と言って、笑顔でハグをしてくれました。

スコーンやお客さんの心配よりも、真っ先に私の心配をして声をかけてくれたジュリアナ先生に、周りへの「思いやり」こそが「おもてなし」の基本なのだと気付かされた瞬間でした。

“高価なもの”より“好きなもの”を

スコーンの並んだテーブル

ちなみにスコーンは、このレースの可愛らしいクロスに包んでお出ししていました。これはポルトガルで、パンを出すときに使われているもので、以前ジュリアナ先生の自宅で働かれていた、ポルトガル出身のメイドさんから頂いたものなのだとか。

「アフタヌーンティーだからと高価なものを揃える必要はないの。自分が好きなものを使うのが、お客さんにも喜んでもらえるコツなのよ」とジュリアナ先生。

レッスンで使っていた茶器

レッスンで使っていた茶器も、同じブランド・同じ柄で揃えていらっしゃるわけではなく、ジュリアナ先生の好みで集めたという、色とりどりのお花のカップを使っていました。

4種類の手作り焼き菓子

ジュリアナ先生のアフタヌーンティーに登場する焼き菓子

ジュリアナ先生のアフタヌーンティーに登場する焼き菓子は、ショートブレッド、フロランタン、バナナブレッド、ヴィクトリアサンドイッチケーキの4種類。

サンドイッチやスコーンを食べたらお腹いっぱいになってしまうので、全部食べきれない方もいらっしゃいます。一人一人にタッパー(ドギーバッグ)を渡して、余ってしまったお菓子は、お持ち帰りして楽しんでいただいていました。

ヴィクトリアサンドイッチケーキ

どのお菓子も美味しいのですが、私は先生が作る「ヴィクトリアサンドイッチケーキ」が本当に大好き。それをちゃんと知っていて、いつも少し厚めに切ったカットを私によそってくれる先生も、本当に大好きでした。

焼き菓子のレシピは、参加した生徒さん皆さんにお配りしていて、自宅で挑戦できるようになっています。私も何度か挑戦してみたのですが、やはり先生の味には全然近づけません。

幸せいっぱいのティータイム

紅茶やスイーツの美味しさを堪能しながら、思わず無口になってしまっても気まずくならないよう、アフタヌーンティー中は必ずクラシックCDをかけておくこと。

ヤケドをしてしまわないよう、人数が多いレッスンでも、必ず一人ひとりが紅茶をおけるスペースを作っておくこと。

生徒さんのカップはこまめにチェックして、空っぽの方には紅茶のお代わりのお声かけをすること……。

ジュリアナ先生のアフタヌーンティー教室

アシスタントの仕事として、覚えなければならないことはたくさんありましたが、そのどれもが生徒さん(お客さん)に心地よく過ごしてもらうための「おもてなし」。ジュリアナ先生が、楽しいティータイムを通して私たちに教えてくれたのは、美味しい紅茶の入れ方やお菓子のレシピだけでなく、“周りを思いやる心”だったように思います。

2020年、コロナウイルスの影響で、静かに教室の扉を閉めてしまった先生ですが、その心はきっと、世界中からはるばる足を運んでくれた生徒さんたちに伝わっていると信じています。

山田志桜里

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在英歴3年、現在福岡在住のフリーライター。ロンドンのティースクールを修了し、ティーインストラクターとしての活動経験も持つ紅茶好き。趣味は読書と舞台鑑賞で、愛...

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