イギリスのマーマレードの世界
~イギリスの家庭で作る、セヴィルオレンジのマーマレード Part1~

イギリス人に深く愛されているセヴィルオレンジのマーマレード。
イギリスの家庭で見た二通りの作り方を、今回と次回にわけてお話しします。

マーマレードに最適のセヴィルオレンジとは?

鍋の中のセヴィルオレンジとレモン
オレンジ色がセヴィルオレンジ、黄色がレモン

イギリスのマーマレードには欠かせない、セヴィルオレンジ。
スペインのセヴィリア地方のオレンジという名前で、サワーオレンジの一種、皮に特有の香りと苦みがあり、見た目はおいしそうなオレンジ色ですが、酸味が強く、そのまま食べる事はできません。スペインからイギリスへ輸出され、1月になると、マーマレード用として店頭に並びます。
このセヴィルオレンジは、ペクチンが多く、香りも良く、マーマレードにするとBitter & Sweetな味わいで、マーマレードに適した品種です。

セヴィルオレンジと日本のダイダイの違い

日本の柑橘類としてセヴィルオレンジに近いのが、お正月の飾りに使われる、ダイダイ(橙)です。酸味と苦みが強く、果汁はポン酢など食酢の原料になります。
まずインドで発生し、東進して日本にきたのが、ダイダイ。インドからアラビアの砂漠を超えて西進したのが、サワーオレンジ。ヨーロッパには、十字軍の時代に渡ったといわれています。
セヴィルオレンジとダイダイの味はどう違うのか、それぞれ生で食べてみました。セヴィルオレンジの果皮は刺激的な香りと苦み、果汁はオレンジ系の香りで酸味があります。ダイダイの場合は、果皮は苦みが強く、果汁は醤油に合うような和を感じる酸っぱさです。マーマレードを作る時も、セヴィルオレンジの方が固まる力が強い気がします。

イギリスのマーマレードの考え方

セヴィルオレンジで作るマーマレードは、果皮の苦み抜きをしません。しかし不思議と苦すぎる事はなく、逆にその苦みが砂糖の甘さと調和して、おいしさが生まれます。
もともとマーマレードは保存食ですから、家庭で作る場合は、カビがこないように、大量の砂糖を入れて、保存性を高めます。出来上がったマーマレードはパンにつけても、だらだらと流れない、しっかりと固まったマーマレードになります。
イギリスでは、マーマレードと言えば、とろりとしたジェリーの部分に浮かぶオレンジの果皮(ピール)の美しさを愛で、そのおいしさを味わうものです。

マーマレードの先生、メアリーさん
料理上手のメアリー、私のマーマレードの先生
メアリーのキッチンから眺める風景
ヘレフォードに住んでいたメアリーのキッチン、庭に来る野鳥を眺めながらマーマレード作り

メアリーから習ったマーマレード

今回はメアリーから習った「オレンジを丸ごと煮る」マーマレードの作り方をお話しします。
この方法は、オレンジ全体が柔らかくなっているので、果皮をカットするのも簡単。出来上がったマーマレードは全体的に濁ってしまいますが、濃厚な味わいのマーマレードになります。

オレンジを鍋で煮る

鍋で煮るオレンジ

トラディショナルなセヴィルオレンジマーマレードのレシピの場合、セヴィルオレンジ1kgに対して、レモン1~2個、水2リットル、グラニュー糖1.5kgです。
セヴィルオレンジには、ペクチンがたくさん含まれていますが、そのペクチンの働きを高めるためと、酸味を加えるために、レモンを加えます。
鍋を火にかけて、大体2時間程煮ます。圧力鍋を使う場合は、水は半分の量で、約20分。オレンジの皮が硬ければ、もう少し火にかけます。ここでオレンジの皮を十分に柔らかくしておかないと、砂糖を加えた時、果皮が締まって硬くなります。

果皮と中身をわけて、下ごしらえ

オレンジは、中身と果皮を別にして、果皮は好みの大きさにカットします。メアリーが作る場合は、レモンの果皮もカットして入れていましたが、これはどちらでも構いません。

マーマレード作りの一コマ

ペクチンをより抽出するため、オレンジの中身や種は、別の小さな鍋に入れて、水を少々加え、ぐつぐつと煮ます。その後、ザルで濾して、カットしておいた果皮をあわせて、分量を量ります。

マーマレード作りの一コマ

マーマレードに使う砂糖

マーマレードに使う砂糖

マーマレードに使う砂糖は、さとうきびのグラニュー糖を使います。もしくは、グラニュー糖より砂糖の結晶が大きい、プリザービングシュガーを使います。日本でいう「白ザラ糖」です。どちらの砂糖も純度が高いので、家庭では値段が安いグラニュー糖を使う場合が多いようです。

マーマレードの仕上げ

さぁ、いよいよ砂糖を入れて、マーマレードを仕上げます。おいしいマーマレードが完成するか、失敗するか、ここが一番重要です。

マーマレード作りの一コマ

写真の大きな鍋は、プリザービングパンといい、イギリスで、ジャムやマーマレード、チャツネなど保存食を作る時に使うステンレス製の鍋です。私もマーマレードを作る時は、この鍋を使います。
計量しておいたグラニュー糖を一度にざっと入れます。あぁ、こんなに砂糖を始めから一度に入れて、オレンジの果皮が硬くならないのか、そんな心配は無用です。果皮が柔らかくなっていれば、硬くなりません。砂糖を加えて鍋ごと一晩おいて、オレンジの果皮に砂糖をしっかり浸透させてから作る方法もあります。

マーマレードの温度を確認

砂糖を入れて溶けたら、強火で加熱します。そのまま吹きこぼれないように注意しながら、加熱するうちに、大きな泡がだんだん小さな泡になり、オレンジ色の艶がある色合いに変わってきます。
泡の状態を見ながら、ここで温度計の登場です。Setting Point(凝固点)、マーマレードが固まるかどうか、温度と状態を確認します。セヴィルオレンジのマーマレードの出来上がりの温度は、104.5℃。この温度になると、熱いうちはサラサラのマーマレードが、冷めると固まってきます。
固まり具合を確認するもう一つの方法は、あらかじめ小皿を冷凍庫で冷やしておき、そこに熱いマーマレードの液を垂らします。再度冷凍庫に30秒程入れ、取り出して指でさわると液にシワがよれば、出来上がりのサインです。これをリンクルテストといいます。
この見極めがとても大切で、早すぎるとマーマレードは固まらないし、遅いと飴のような香りで、とても甘すぎるマーマレードになります。
今回はセヴィルオレンジのトラディショナルな作り方なので、マーマレードの温度も高く、砂糖の量も多めです。甘い柑橘類の場合は、その分、砂糖の分量もやや少なめにして、104.5℃よりは少し低めの温度で仕上げます。

出来上がったばかりのマーマレード
ツヤツヤした出来上がったばかりのマーマレード

出来上がったら5分待つのが肝心

瓶詰めするマーマレード

火を止めたら、そのまま5分待ちます。ビンに詰めた時、果皮が上に浮かび過ぎないように温度を少し下げます。アクを取るのもこの時です。ビンの殺菌のため、オーブンで125℃、15分程温めたビンに詰めます。そしてフタをして、出来上がりです。
今まで、もう何百回とマーマレードを作ってきましたが、メアリーと一緒に作ったあの冬の日が、私のマーマレード作りの原点です。

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また、『UK Walkerオンラインストア』でも取り扱わせていただく予定です

林敦子

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EnglishKitchen®代表。イギリステイストのマーマレード、ジャム。チャツネを製造販売。 日本紅茶協会認定ティーインストラクター。 イギリスでマーマ...

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