「+1ステップ」で最後までおいしく!おススメの紅茶の淹れ方

テーブル上のカップ&ソーサーに淹れられた紅茶

イギリス式紅茶の淹れ方の基本「ゴールデンルール」

イギリスに伝わる紅茶の淹れ方の基本として、「ゴールデンルール」があります。
古くから紅茶の淹れ方にこだわりを持つ人たちの、様々な意見や主張が残されているのですが、ゴールデンルールに関しては、19世紀に出版された『ビートンの家政本(Mrs Beeton’s Book of Household Management)』に書かれた4つのステップが元だと言われています。

水をしっかり沸騰させること、ポットを温めること、茶葉をきちんと量ること、ポットに茶葉を入れたら熱湯で十分抽出すること。

今に伝わるゴールデンルールにはさらにもう一つ、良質な茶葉を使うという項目が加わり、本来の風味を存分に引き出す5つの要素となっています。

==◆The Five Golden Rules◆==

1.新鮮で良質な茶葉を使う
2.ティーポットを温める
3.茶葉の分量を量る
4.沸騰した瞬間の熱湯を使う
5.茶葉を蒸らす間、ゆっくり待つ

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ティーポットに紅茶を淹れて砂時計で時間をはかり、紅茶を待つひととき
ゆっくり待つ時間も紅茶にとって大切なこと

「+1ステップ」で最後までおいしく!現代版おススメの紅茶の淹れ方

リーフティーを淹れる正統派な方法として長らくこのゴールデンルールが守られてきましたが、より美味しさを追求する場合、一つ気になることがあります。

それは、ポットの中にずっと茶葉が入りっぱなしだということ。ロンドンの水道水は硬水で、その特徴として渋みが出にくい利点があります。ただ、ずっと茶殻を入れっぱなしにすることで、ベストな味わいを通り越して飲みにくくなってしまう場合があるのも事実。

そのため、イギリスの紅茶文化には、濃くなり過ぎた紅茶を薄めるためのお湯を入れておくホットウォータージャグがありますし、一杯目は香りを、2杯目は味を……と、変化する味わいを楽しむ方法も伝えられています。どちらも大変素敵な方法で、私もそれを初めて知ったときはと心からうっとり♪イギリスへの憧れを益々強くしたものです(^^)

ですが最近は、より茶葉の持ち味を引き出すには?という視点に立ち、特に有名ホテルなどでは、伝統から一歩踏み出して、お茶がらを入れっぱなしにしない方法を採用するところが多くなっています。

紅茶の色、味、香りを存分に引き出し、最後までベストな味わいを堪能できる、おススメの淹れ方をご紹介しましょう。

基本の紅茶の淹れ方

◆基本の紅茶の淹れ方◆

≪用意するもの≫
・ ティーポット (抽出用1つ、サーブ用1つ)
・ ティーキャディースプーン
 (茶葉計量専用スプーン。ティースプーンや料理用小さじで代用可)
・ 茶漉し
・ タイマー
・ 茶葉

≪淹れ方≫
1. 蛇口からくみたての水をやかんに入れ、コイン大の気泡が上がるまでしっかり沸かす。
2. 抽出用、サーブ用のポットにお湯を入れ、あらかじめ温めておく。
3. 抽出用ポットのお湯を捨て、ティースプーン山盛り1杯(およそ2.5g)×人数分の茶葉を入れる。150cc×人数分の熱湯を注ぎ、その茶葉に合った時間まで蒸らす。
4. カップにお湯を入れ温める。時間になる前に、サーブ用のポットとカップのお湯を捨てておく。
5. サーブ用のポットに、4の紅茶を、茶漉しを使って最後の一滴までこし出す。
6. カップに注ぎ分ける。

<ポイント1> ポットを二つ使います!一つは抽出用、もう一つはサーブ用

お茶がらを抽出用のポットに残さず、茶葉に合ったちょうどいいタイミングで全て漉して、サーブ用ポットに移し替えます。こうすることで、その紅茶にとって一番いい風味で最後まで飲むことができます。

<ポイント2> ”くみたて、沸かしたて”にこだわる

*熱湯で持ち味を全て引き出す
紅茶は熱湯で抽出します。低温でも抽出できる旨味成分だけでなく、高温で抽出される渋みのもとのタンニンや苦みのもとのカフェインも味わいの一つとして引き出すためです。

*ジャンピング
抽出するとき、沸騰させたお湯に適度に空気が含まれていると、お湯の対流に乗って茶葉が上へ下へと動く現象が見られます。これをジャンピングといいます。茶葉は製造過程で揉まれているので、よれています。そのよりがジャンピングの自然な力でほぐれ、成分がしっかり抽出されます。また、空気を程よく含んでいることで口当たりもよくなります。ジャンピングが起きる条件として必要なのが、空気をたくさん含んだ新鮮な水であることと、その水が沸騰したてであること。なので、蛇口からくみたての水を、沸かしたての状態で使用します。

茶葉がジャンピングするティーポット
お湯の温度、空気の含み具合、条件がそろうときれいにジャンピングしま す
お湯を注ぐときは、ポットの真ん中を狙って勢いよく

●お湯の温度の見分け方

・温度が低い場合…ジャンピングせず、茶葉が上に浮いたままの状態に。
=お湯を沸かし足りない。お湯の中に空気が多く残り過ぎている。

・温度が高い場合…ジャンピングせず、茶葉がすぐに下に沈みます。
=お湯を沸かし過ぎている。空気が抜けてしまっている。
汲み置きの水や再沸騰のお湯を使っても、沈みやすくなります。

<ポイント3> 最後の一滴まで漉し出します

最後の一滴のことをベスト・ドロップといいます。それだけ飲んでも大変渋いのですが、そこに旨みが凝縮しているとされ、これを入れることで紅茶の味がぐっと引き締まります。抽出したポットと茶こしを一緒に軽く振って、ベストドロップを切りましょう。

●抽出時間の目安
初めて淹れる紅茶の蒸らし時間について。パッケージに書いてあればそれを参考にしますが、何も書いていない場合は、下記の時間を目安にします。

  • OP(オレンジ・ペコー。大型茶葉という意味) …… 4分
  • BOP(ブロークン・オレンジ・ペコー。細かくカットした茶葉) …… 2分30秒

紅茶の種類によって風味の出方がちがいますので、最終的にはお好みに合わせて調整します。目安はあくまでも目安。ご自分のお好みに合わせてコントロールできるところが、紅茶を淹れる醍醐味の一つです。

真の英国式紅茶の世界とは?

イギリスの一流ホテルのラウンジやティールームではUK TEA ACADEMY認定のティー ソムリエたちが多く活躍。お茶がらを抜く方法で紅茶を提供していますし、お茶の繊細な風味を味わえるよう、水をわざわざ軟水化して使っているところもあります。イギリスの紅茶文化は、伝統をベースにしながらもどんどん進化しているさ中です。

ですが、ここまでお読みになって、特にイギリスで暮らした経験のある方は、おや?と思われたかもしれません。

「一般のイギリス人で、こんなに丁寧に紅茶を淹れている人、本当にいるのかしら?」

イギリスでよく使われている紐のないティーパック
イギリスのティーバッグ
ポットやカップに入れっぱなしに するために紐のないものが多い

イギリスの紅茶の消費量の実に96%がティーバッグ紅茶という時代です。また、家庭でリーフティーを淹れるにしても、日常の飲み物であるがゆえに、あまり深く考えず気軽に淹れているという印象があります。

よくある淹れ方としては、茶葉を熱湯で蒸らしたあと、濃さを均一にするために、ポットの中をティースプーンで軽くひと混ぜしてからカップに注ぐというもの。雑味が出ないよう優しくくるりとかき混ぜます。

ですが、これも全員がする訳ではなく、する人もいればしない人もいます。また、人数やシチュエーションによって色々な方法で淹れるため、形式にこだわらない場合が多いのです。

「では一体何が本当の英国式紅茶の淹れ方なの!?」と混乱してしまいそうな話ですが、実際のところ、日常においては、色々な人がいて、その人それぞれの淹れ方ある。どれかが間違っているわけではなく、一つだけが正解ということでもありません。

一流ホテルで味わう研ぎ澄まされた繊細な紅茶も、家庭的でちょっと大雑把に淹れた紅茶も、その場でそれを味わう人たちが、美味しく幸せな気持ちであればそれでいいです。真の英国式紅茶の世界とは、それら全てを包みこむおおらかさの中にあるのかもしれない。私はそんな風に思っています。


産地の旬にこだわった紅茶の通信販売を行っています。
よろしければ、『紅茶専門店・銀の芽』サイトもご覧になってみてください。
また、インスタグラムでも情報発信を行っています。

私が学んだUK TEA ACADEMYのサイトはこちらでご覧ください。

島田枝里

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母の影響で、小学生の頃から毎朝の飲み物は紅茶。大学時代のイギリス旅行、局アナ(信越放送・TBS系列)時代に通った紅茶教室を通じて、紅茶愛を一層深める。産地、...

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