写真で巡るイギリスの旅
~スコットランドの島々とハイランド~
今回ご紹介するスコットランドの島々とハイランドマップ
ハイランド・ゲーム(ブレーマー・ギャザリング)
毎年9月の第一土曜日に、スコットランドのブレーマーで行われる、スポーツと音楽の祭典。
かつて、スコットランドの貴族や豪族は力自慢や技の優れた兵士を集めるための大会を各地で開いていた。それらのハイランド・ゲームズの中で、最も大きい大きな競技大会がこのブレーマー・ギャザリングである。
屈強なハイランドの男性たちが民族衣装を着て、丸太棒投げや石投げで競うシーンをテレビや雑誌で一度は目にされたことがあるのではないだろうか。
会場にはエリザベス女王が見学するための貴賓席が設けられている。午後の遅い時間、観客たちの拍手喝采の中でエリザベス女王が入場すると、祭りは最高潮に達し会場が一体感に包まれる。
実際には車で会場の中に入りガラスのケースで仕切られた小屋に入られる。エリザベス女王が国民に愛されていると感じた瞬間だった。
英国王室の避暑地として使用され、現在もエリザベス女王がブレーマー・ギャザリングの時に滞在するバルモラル城。周囲を森や荘園に囲まれていて、とても美しい。
ネッシー伝説のネス湖
ネッシーは、多くの人々が目撃したと伝えられてきた。有名写真が捏造だったことがわかっても、ネス湖を訪れる観光客にとってはそれが事実かどうかなど、関係がないようだ。人々は伝説に夢をいだいてやってくるのである。写真はネス湖にたたずむ廃墟のアーカート城。ネッシーの伝説と相まって、とても風情を感じさせてくれる。
ネス湖のエキシビションセンターにいるネッシーの彫刻。
グレートブリテン島最北の地 ジョン・オ・グローツ
イングランド、ウェールズ、スコットランドで形成するイギリス国土の中心的な島、そのグレートブリテン島の最北端 ジョン・オ・グローツのフェリー乗り場に立つ標識は、グレートブリテン島の南西の果てコーンウォール半島のランズ・エンド(前回の記事で紹介)まで、ここから(874マイル)約1,400キロの距離があることを示している。最西端のランズ・エンドからこの最北端のジョン・オ・グローツまで、この標識を写真に収めたときには感慨で胸がいっぱいになった。
50mもの高さの巨大な三角帽が2つ並んで海中から突き出ているような風景、ジョン・オ・グローツの奇岩は印象に残る一枚だ。
ジョン・オ・グローズに向かってドライブの途中にバグパイプの練習に出会った。
通り過ぎてしまってから気になり、引き返して撮影した。大西洋を背景に村祭のバクパイプの音色が響き渡っていた 。
オークニー諸島 新石器時代の遺跡(世界遺産)
スカンジナビア半島に近く、15世紀まではデンマーク・ノルウェー連合王国が統治していたオークニー諸島。バイキングの影響を受け、スコットランドの他のエリアとは文化的に全く異なる土地だ。緯度が高くても暖流のおかげか比較的温暖な気候である 。
グレートブリテン島最北の村ジョン・オ・グローツからオークニー諸島に向かうフェリー乗り場。
オークニー諸島のメインランド島の巨石群「リング・オブ・ブロッガー」は中でも規模が大きく、「オークニー諸島の新石器時代遺跡群」の4つの遺跡の一つとして1999年に世界遺産に登録された。
夕日に赤く染まる巨石群を撮ろうと場所を探すが、悔しいことに絶好のポイントには既に先客がいる。遥か彼方の日本からこの夕日を撮りに来たと、ブロークンイングリッシュを交えて一生懸命伝えてみた。するとうれしいことに、この写真の撮影スポットを譲ってくれるイギリス人が現れたのだ。日が沈み始めるのを待つ間、撮影談議に花が咲いたことは言うまでもない。
アイラ島 シングルモルト蒸留所とアザラシの島
アイラ島は 人口3,400人ほどの島だ。この島を訪れる観光客の多くは、9つある蒸留所をめぐるウイスキーフアンが多い。ボウモア蒸溜所はアイラ島では一番古く1779年の創業。アイラモルトを代表するブランドだけあってやはり見学者も多い 。
アイラ島は海に囲まれた海産物の宝庫の島でもある。
私が入ったレストランでおすすめされたメニューの牡蠣を注文すると、アイラ島の岩場で取れた牡蠣にアイラモルトのウィスキーを掛けて提供してくれた。モチモチとしてミルキーで濃厚な海の味の牡蠣とスモーキーなモルトの香りが口の中で混ざり合いとても美味しかったことを、写真を見るたびに思い出す。この時はついついもう一皿注文してしまった 。
バイオリンを聞くアイラ島のアザラシたち
アイラ島に住むフィオナさんは家族でアザラシを守るボランティアをしている。水槽の中で怪我をした子供のアザラシを保護し、元気になったら海に返していているそうだ。
エンジン付きのボートに乗り込み30分ほどで到着する岩礁で、フィオナさんがバイオリンを取り出し静かに弾き始める。曇っていた空も晴れて、優しいメロデイーが流れていく。ファインダー越しに見る彼女はまるでファンタジーの世界の別世界の住人の様だ。2頭のアザラシが彼女に近づいてきた。アザラシは彼女の弾くバイオリンの音色を聞くように岩場をグルグル巡り、帰るときにはボートのそばを離れなかった。
アイルランド出身修道僧”聖コロンバ”ゆかりのアイオナ島
スコットランド西海岸沖にあるマル島の西の端にくっつくように浮かぶアイオナ島。南北5.6キロ、南西2.49キロと地図上では見落としてしまいそうな小さな島だ。しかしこの島はスコットランド人にとって、とても重要な場所である。563年アイルランドからやってきた聖コロンバはこの島にアイオナ修道院を建て、そこを拠点にスコットランド全土に布教を行った。
ワーズワースやウォルター・スコット、ジョン・キーツなど文学者をはじめ、英国王室関係者も数多くこの地を訪れている 。
マル島からアイオア島までフェリーでわずか5分、海の色は青く砂浜は白く美しい 。聖堂の前にはケルト十字架の石柱が2つ建っている。アイラ島でも十字架を見かけたが、その十字架もここの響を受けているらしい。
奇岩、洞窟で観光客を魅了する無人島 スタッファ島
マル島から出ているボートツアーで、無人島のスタッファ島へ向かう。 まるでこちらに向かってライオンが吠えているような大きな穴が開いているフィンガルの洞窟。洞窟の高さは20m幅15メートル奥行き150mもある。島の岩肌は人を寄せ付けないほど切り立っているが、船は波の状態を見ながら無事に接岸できた。
スタッファ島にはさまざまな作家や芸術家が訪れている。ドイツの音楽家 メンデルス・ゾーンも1829年この島を訪れ 洞窟の中で聞いた激しい音や砕け散る波しぶきに触発されて「フィンガルの洞窟」を作曲した。この曲が有名になるとこの島にはより多くの観光客が訪れるようになった 。
ヘブリディーズ諸島のハリス島
人も殆ど住まないアウター・ヘブリディーズ。ヘブリディーズ諸島は、スコットランド本土の険しい西岸に沿って北大西洋にひろがる180以上の島々で構成される。イギリス地図の上部左側に描かれている島々である。
ヘブリディーズ諸島は、スコットランド文化の神秘のひとつとされてきた。スカイ島からのフェリーはハリス島との付け根にあるタワーバードに着く。そこから車で一時間ほどの地に、古ぼけているがアイオナ島の修道院とそっくりのセント・クレメント教会がある。
人の気配がなく入口の扉は空いており中には燭台や椅子もない。静寂に包まれ窓からの光が室内を明るく照らしているだけだ。ガイドブックで紹介されていた宣教師が骸骨を片手に持っていた。周りの古い彫刻も朽ち果てず残っており、なんとも不気味な思いをしたものだ。
ルイス島 カラニシュの巨石群
同じヘブリディーズ諸島の島、というよりも前述のハリス島と同じ島なのだが、南部をハリス島と呼び、ハリス島を含めたこの島をルイス島と呼ぶらしい。
このルイス島へ向かう途中、海水が牧草地に迫っている入り江を通った。草地の間にいくつもの海水が流れており、そこを羊の群れがジャンプしながら渡っていく。背後の山には雲がかかりまさに幽玄の世界が広がっている。
ハリス島から2時間ほど走ると石柱が見えてくる。遮る物が無く遠くからでもよく見える。たくさんの石が大小合わせ50ぐらい立ち並んでいる。このスタンディングストーンは約4000年前の新石器時代に作られたことが科学的に証明されている。一番高いもので4.6mもある。
ある本に書かれていた伝説では、キリスト教を広めるためにアイルランドの聖人の一人、聖キーランが島に渡ってきたが、ここに住んでいた巨人は冷やかすばかりで一向に改宗しようとしない。そこで聖キーランは巨人をこの大きな石に変えてしまった。そしてこの巨人は「愚かな人間」と呼ばれるようになった。
- 使用機材: Canon EOS 5D MarkII
イギリス旅行でも、なかなか訪れる機会が少ないスコットランド北西部の島々。
大都市のロンドンやエジンバラなどとは異なった文化と風景を楽しむことができる。機会を作って、ぜひ訪れてほしい村々である。
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