アフタヌーンティー主役の座はスコーン?それとも…

スコーンがアフタヌーンティーに登場したのはいつ?

前回の記事「イギリス国王の玉座とスコーンの関係」の中で、スコーンの由来についてご紹介をしました。アフタヌーンティーの定番ともいわれ、いまや日本で一大ブームを巻き起こしているスコーンなのですが、意外にも文献を調べてみると、初期の頃のアフタヌーンティーに現在のような形のスコーンは登場していなかったことが伺えます。
では、いつ頃からスコーンがアフタヌーンティーには欠かせない存在になったのでしょうか…?

「スコーン」という名前が初めて文献に登場するのは1513年のこと。
起源は、中世のスコットランドで発祥した「バノック」と呼ばれる原始的なパンの一種に由来するといわれています。その昔、北国のスコットランドでは小麦の栽培がむずかしかったため、大麦を平たい丸型に捏ね、バノックストーン(石)やグリドル(鉄板)を暖炉に吊るして焼いた固いパンを食べていました。大麦barleyも小麦wheatも同じイネ科の穀物ですが、グルテンの量に違いがあり、小麦で作るパンのほうがふんわり柔らかな食感になります。

その後、ヴィクトリア時代に入ると小麦粉も手に入りやすくなり、さらにベーキングパウダーやオーブンが発明されたことによって、現在のような高さのあるふっくらとした形のふんわりとしたスコーンに近づいていきました。
すると、スコットランド発祥のスコーンはイギリス全域へと広まり、どの家のキッチンにもある材料で気軽に作ることができるため、食事パンとしてだけではなく、紅茶によくあうティーフーズとしても、イギリス中に広まっていったのです。
そして、ヴィクトリア時代後期になり、アフタヌーンティーがホテルやティールームにまで広がりを見せると、シェフたちの手によって洗練されたスコーンに進化、ティーテーブルを飾るようになり、アフタヌーンティーには欠かせない存在となっていったのです。

焼きあがったばかりのドロップスコーン
グリドルで焼いたドロップスコーン

ヴィクトリア時代のティーフーズ

では、スコーンが登場するまで、どのようなものがティーフーズの主役だったのでしょうか?
まず、お茶が英国に入ってきた初期の頃から、お茶のお供の定番といえばビスケット。この組み合わせは切っても切れない関係です。
英国でのお茶の歴史をたどると、初期の頃は〈東洋からやってきた万能薬〉と位置づけられていたこともあり、お茶を飲む前には必ずパンやビスケットを口にするという習慣が、古くからありました。日本でいうとお煎茶とお煎餅のような存在、お茶の時間に欠かすことができない〈お茶トモ〉というわけです。
階級社会のイギリス。特に、高価な白い砂糖と白い粉をふんだんに使ったビスケットとお茶のペアリングは、当時のお茶会でも贅沢の極みとされていました。

19世紀のアフタヌーンティーに好まれたビスケットは、フランス語の「小さなオーブン」に由来する<プティフール・セック>と呼ばれる繊細なティービスケット。真っ白でキメ細かな小麦粉に砂糖やバターをたっぷり混ぜこみ、口溶けのよい軽い食感に仕上げます。
可憐で華やかなティービスケットは、専用の銀器に盛りつけられテーブルを彩りました。

銀器に盛りつけられた繊細なティービスケット
銀器に盛りつけられたティービスケット

イギリスで有名な「マフィン・マン」

そのほか、当時の文献によく登場するのが「バター付きのパン」。いわゆるマフィンやクランペットなどのイギリスの国民食です。
マフィンというとカップケーキ型のお菓子をイメージするかたも多いと思いますが、ここでいうマフィンはイングリッシュマフィンのこと。ヴィクトリア時代には、街中で頭の上にマフィンを乗せて売り歩く「マフィン・マン」がいたそうで、英語の童謡「マザー・グース」としても親しまれています。

Do you know the Muffin Man, The Muffin Man, The Muffin Man?
Do you know the Muffin Man Who lives in Drury Lane?
Yes, I know the Muffin Man, The Muffin Man, The Muffin Man.
Yes, I know the Muffin Man Who lives in Drury Lane.
We all know the Muffin Man, The Muffin Man, The Muffin Man?
We all know the Muffin Man, Who lives in Drury Lane?

ちなみに歌詞に出てくる「Drury Lane」は、コヴェント・ガーデン(Covent Garden)の通りの名前。かつて食料品マーケットとして栄えたコヴェント・ガーデンには、マフィン・マンが沢山いたそうですよ。

マフィンマンガ描かれたイラスト
マフィンを売り歩くMuffin Man

「The Muffin Man」と聞くと思い出すのが、紅茶留学中によく行ったケンジントンにあるティールーム。アンティークショップ巡りで歩き疲れたあとは、どこか懐かしさを感じるThe Muffin Manの紅茶とスコーンをいただくのが、最高のお愉しみでした。
High Street Kensingtonへいらっしゃることがあれば、是非立ち寄ってみてくださいね。

  • The Muffin Man
    12 Wrights Lane, London W8 6TA
    https://www.themuffinmanteashop.co.uk

《ライター》藤枝理子の著作紹介(一部)

藤枝理子

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RICO FUJIEDA アフタヌーンティー研究家 東京都世田谷区にて紅茶教室「エルミタージュ」を主宰。 紅茶好きが嵩じてイギリスに紅茶留学。帰国後に東京初...

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