イギリス湖水地方 ~ライダルの自然に癒される~

ライダルの魅力

ライダルは、湖、山、川、滝、洞窟など、変化に富んだ自然が魅力のエリアです。木々の間に家や庭が点在する静かな村は、詩人ワーズワースが晩年を過ごした地としても知られています。今回は、自然に癒される静かな時間を過ごしたい方へ、おすすめのスポットをご紹介したいと思います。

ライダル湖
ライダル湖

ライダル湖のほとりで

ライダルチャーチ(Rydal Church)でバスを降り、川のせせらぎが聞こえる方へ下ると、透き通ったロゼイ川(River Rothay)と、小さな橋が見えてきます。この橋を渡ってしばらく草原を行くと、目の前にライダル湖が現れます。

ロゼイ川にかかる橋
ロゼイ川にかかる橋

この湖岸に、私が多くの時間をともに過ごした、一本の木があります。根っこを岩場にしっかりと絡ませて、湖上に伸び伸びと枝を広げる大木です。この木の下で感じた、湖を渡る涼やかな風を、今も恋しく思い出します。
サンドイッチ、りんご、チョコビスケット、水。ピクニックのお供は、これで十分。柔らかい木漏れ日の中で、読書をして過ごすのもおすすめですよ。

ライダル湖畔の大木
ライダル湖畔の大木

ところで、ライダル湖は、英語ではRydal Waterと言うんです。湖水地方の湖の名前には、「ウォーター(Water)」「ミア(mere)」「ターン(tarn)」のいずれかが付いていますが、これらは全て「湖」を意味しています。ライダル(Rydal)とは、古ノース語で「ライ麦が栽培される谷」だそうです。

この静かな谷では、子育てもし易いのでしょうか、白鳥の親子を良く見かけます。私は、親鳥が雛を背中に負ぶって移動することを、湖水地方に来て初めて知りました。

白鳥の雛
白鳥の雛
白鳥の親子
白鳥の親子

水仙が咲くドーラズフィールド

バス通りから、ライダルマウントへ向かう急な上り坂の途中に、セントメアリーズ教会があります。この教会は、ライダルホールの主だったフレミング夫人によって、1823年に建てられました。ワーズワースは、教会とライダルマウントの間にある半開の森林地帯をフレミング家から購入し、娘のドーラに与えました。ドーラは、1847年に43歳で亡くなります。ワーズワース夫妻は、ここを「ドーラズフィールド(Dora’s field)」と名付け、娘を偲んで何百もの水仙の球根を植えました。今でも春になると、水仙の甘い香りに満たされます。ドーラズフィールドは、現在はナショナルトラストが所有しており、教会横の入り口から入ることができます。

ドーラズフィールドの水仙の花
ドーラズフィールドの水仙の花
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ライダルマウントの風景庭園

ライダル湖を見下ろす高台に、ライダルマウントがあります。ここは、ロマン派の詩人ワーズワースが、1813年から80歳で亡くなるまでの37年間、家族とともに暮らした邸宅です。現在はワーズワースの子孫によって所有され、一般に公開されています(有料)。チューダー様式の邸宅の内部には、ワーズワースと家族の愛用の品々が展示されています。

藤が満開のライダルマウント
藤が満開のライダルマウント
ライダルマウントの館内
ライダルマウントの館内

ワーズワースは「もし詩人になっていなければ、庭師になっていた」と言うほど、造園に長けた人物でした。ライダルマウントの約5エーカー(約20,000㎡)の広大な庭園は、ワーズワース自ら設計したものです。山の斜面を生かした風景庭園で、周囲の森や湖へと、景色が切れ目なく繋がっています。水仙、ブルーベル、藤、石楠花、紅葉など、季節ごとの彩の変化も楽しめます。

ライダルマウントの庭園に咲く花
ライダルマウントの庭園に咲く花
水仙とサマーハウス
ワーズワースが建てた「サマーハウス」
庭園から望むライダル湖
ライダルマウントの庭園から望むライダル湖

長い間このライダルマウントの館長を務めていたのが、ピーターとマリアンです。リタイアするまで、邸宅内のプライベートエリアに住んでいたこのご夫婦は、私の大切な友人です。彼らの顔を見るのも、散歩の楽しみのひとつ。運が良いと、マリアンの焼き立てスコーンにありつけます。夜は、時々、詩の朗読会が開かれていました。ロマンチストなピーターが、独特な抑揚で朗読する詩のせいか、はたまた白ワインのせいか。私は、いつも眠気に誘われてしまうのでした。

秋のライダルマウント
秋のライダルマウント

滝を鑑賞する小屋「グロット」

ライダルマウントの筋向いに、約30エーカー(約120,000㎡)のライダルホールの敷地が広がっています。16世紀にフレミング家が建てたこの邸宅は、その後、立替えや増築が施され、現在は宿泊施設となっています。無料で一般に公開されている庭園の一角には、自然の滝があります。1668年、ダニエル・フレミングは、滝つぼの脇に、滝を鑑賞するための小屋を造りました。「グロット(The Grotto:小さな洞窟)」と呼ばれるこの小屋は、当時の芸術家や作家たちの間で話題になります。ワーズワースもこの小屋を大変気に入り、「Evening Walk」という詩に詠んでいます。

滝とグロット
滝とグロット
グロットから眺める滝
グロットから眺める滝

森の中を流れる小川

ライダル川(Rydal Beck)は、途中いくつかの滝に形を変えながら、ライダルの山の斜面を流れ下る小川です。ピーターとマリアンに教えて貰った、ライダル川が流れる森は、私が一番手っ取り早くリフレッシュできる場所でした。ライダルマウントから更に山側へ道を上り、右手にあるフットパスのゲートを入ります。人のいない薄暗い森は、ひとりで歩くには正直少し怖いくらい。道に迷わないように、フットパスを歩きます。滝の音、澄んだ冷たい水、湿った森の匂い。自然のシャワーが、余計なものを洗い流してくれる、そんな場所です。

ライダルのフットパス

ライダル湖からグラスミア湖へ湖畔沿いを歩くルート、ライダルマウントとダブコテージを結ぶ山側ルート(コフィンパス)など、ライダル周辺には、初心者でも楽しめるフットパスが整備されています。車の駐車スペースが少ないので、レンタカーよりもバスがおすすめ。現地のインフォメーションセンターで、フットパスのマップを手に入れます。あとは、時間に余裕を持つこと。それが、湖水地方ライダルを楽しむ秘訣です。

フットパスからの眺望
ライダル周辺のフットパスからの眺望

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ayako

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旅行業界や大使館など外資系企業勤務を経て、現在はフリーランスの通訳案内士として仕事をする他、イベント通訳や、外国人への日本語指導にも携わっています。 若き日...

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