フールのお話しとレシピ

初夏の到来を告げるフルーツ「グーズベリー」

薄緑色のグーズベリー
薄緑色のグーズベリー

イギリスに初夏の到来を告げるフルーツと言えば「グーズベリー」。
きれいな薄緑色をした半透明の実が光に透ける様はまるでビー玉のよう。細く長い棘のある枝に、鈴なりにぶら下がるグーズベリーを見ていると、日本の梅雨のうっとうしさもどこかに吹き飛んでいってしまいそうな涼やかさです。

グーズベリーの日本名は西洋スグリ。確かに葉の形を見てみると、フサスグリ(レッドカラント)にそっくり。赤いスグリのほうは時々日本でも見かけますが、グーズベリーのほうはまだまだ稀。イギリスでも、オールドファッションな果物という位置づけで、いつでもどこでも買えるというわけではなく、スーパーの棚に短いシーズン並ぶ程度。今の季節なら、ファームショップや、PYO(フルーツや野菜摘みができる農場)に行くと出会える確率が高いかもしれません。

手間をかけて作る「グーズベリー」のデザート

近頃はデザートグーズベリーなる、まるでぶどうのような大粒で紫色をしたタイプも売られていますが、基本的に生食するには厳しい酸っぱさ。お砂糖と共に加熱して、ジャムにしたり、チャツネにしたりとひと手間必要。ポイッと手軽に口に放り込むことのできない酸っぱいフルーツは今の時代流行らないのでしょう。

たった今ひと手間、と言いましたが、正確にはふた手間かも?
グーズベリーの特徴の一つが、摘んだ後、実の上部に残る細いけれど堅い茎と、下部の花殻。まずは調理前にこれをハサミなどで取り去らなくてはならないのです。これを英語で「Top and tail」というのですが、量があると結構な手間。忙しく、甘いフルーツに慣れた現代人にはこれもまた受けない理由の一つかもしれません。

ですが、このグーズベリーと同じく、今が旬のエルダーフラワーとの相性は最高で、この組み合わせのフールやジャムは昔からの定番。スーパーのデザートコーナーにも、毎年このシーズンにはカップ入りのフールが登場します。

エルダーフラワー
エルダーフラワー

イギリスの古式ゆかしい伝統的なデザート「フール」

さて、この「フール」が今日のお題。
フールとはお砂糖と一緒に柔らかく煮たフルーツをピュレ状にして、カスタードやクリームと和えたデザート。イギリスの古式ゆかしい伝統的なデザートの一つです。
17世紀ごろから人気が出始めたという当時のフールは、柔らかく煮たフルーツのピュレにお砂糖と卵を加えて濃度をつけたもの、クリームは入っていませんでした。そこにローズウォーターやオレンジフラワーウォーターなどで香りつけしていたそう。18世紀に入ると生クリームが加わり、卵が抜けることも多くなり、現代のフールに近づきます。

グーズベリーフール
グーズベリーフール

現代のものは、ホイップしたたっぷりの生クリームに形が残る程度に軽く煮たフルーツをふんわり合わせるタイプが多く、クレームフレッシュやグリークヨーグルトを加えたサッパリしたものが人気。簡単にできるので、レストランなどのお店で食べるというよりは、家庭で作る簡単デザート。イギリスなら缶詰のグーズベリーも売られているので、それを使えばそれこそあっという間に出来てしまいます。

フールに最適なもう一つのフルーツ「ルバーブ」

パイと言えばアップルパイが大定番なのと同様、イギリスではフールと言えばグーズベリーフールが筆頭にあがりますが、二番手にくるのはルバーブ。これもまたイギリスらしいフルーツ(正確にはタデ科の大黄の一種なのでフルーツとは言わないかもしれませんが、お砂糖と煮てジャムやお菓子にすることが多いので扱いはフルーツ)。酸味が強く、生食に向かないのはグーズベリーと一緒。どちらも割と簡単に育つので自宅の裏庭や家庭菜園に植えられ、家庭のデザートに利用されてきました。

ルバーブ畑
ルバーブ畑

フキのような太い茎の部分を食べるルバーブには2タイプあり、初夏から夏にかけてぐんぐん伸びる大きなグリーンの葉が特徴の露地ものと、早春にムロの中で育てられた透けるようなピンク色の茎に、黄緑色の矢じりのような葉をした促成栽培のフォーストルバーブ。

フォーストルバーブ
フォーストルバーブ

繊細な味わいのフォーストルバーブも、赤やグリーンの逞しい露地もののルバーブもどちらも、お砂糖を加えて煮るとあっという間に柔らかくなるので、フールには最適。グーズベリーに負けない酸味で、後味爽やかなフールになります。

「フール」の名前の由来

ところで、気になるのが「フール(Fool)」というその名前。
そう、エイプリルフールのフールと同じ綴り。誰でも作れるくらい簡単だからかしら?なんて想像してしまいますが、はっきりしたところは不明。フランス語で「押し潰す」を意味するfoulerが語源という説も。
語源といえば、前述の「グーズベリー(Gooseberry)」はその酸味が「goose(ガチョウ)」に合うから~という説や、フランス語の「groseille(すぐり)」に由来するという説などが存在します。

グーズベリーはまだちょっと日本では入手しづらいですが、ルバーブは大分お取り寄せも可能になってきました。これからの季節ぴったりの甘酸っぱい爽やかなフール、是非一度お試し下さい。

ルバーブフール<レシピ>

ルバーブフール
ルバーブフール

Rhubarb fool

~ルバーブフール~

ルバーブ __________________250g
【A】
 ┏グラニュー糖 _______50g
 ┗オレンジ絞り汁 _____大さじ3
【B】
 ┏生クリーム(乳脂肪分40%以上) __200ml
 ┃グラニュー糖 _____________大さじ2
 ┃バニラエクストラクト ___数滴(省略可)
 ┗ギリシャヨーグルト _____100g

  1. ルバーブを3cm長さにカットして鍋に入れ、Aを加えて弱火で10分ほどルバーブが柔らかくなるまで加熱します(少し形を残す程度に)。バットなどに移し冷ましておきます。
  2. ボールにBを入れ(ボールの底を氷水で冷やしながら)、ふんわり角が立つ程度に泡立てます。
  3. <2>のクリームにギリシャヨーグルトを加えてゴムベラで混ぜ、冷めた<1>のルバーブの2/3量も加え、マーブル模様が消えない程度に軽くあわせます。
  4. 小さなグラスに分けて入れ、冷蔵庫でサーブするまで冷やしておき、食べる直前に残りのルバーブを上にのせます。
    ビスケットやショートブレッドなどを添えるとさらに美味しくいただけますよ。

*<グーズベリー&エルダーフラワーフール>にする場合*
グーズベリー250gにグラニュー糖大さじ2、エルダーフラワーコーディアル大さじ3を加えて軽く煮たもの(形が残る程度に)をルバーブと置き換え同様に作ります。


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冷凍ルバーブ(1kg)
¥880

無農薬栽培されたアラスカ産の冷凍ルバーブ1キロです。
クール宅急便冷凍タイプにて配送で配送されます。赤いルバーブを選んでいるそうですが、まれに緑色が紛れている場合があるようです。

北海道産のグーズベリー(生果実)500g
8月上旬の出荷(予約のみ)
¥2,160

やはり日本で薄緑色のグーズベリーを探すのは難しいですね。
北海道(主に中富良野町)産のグーズベリー(生果実)500gは、赤い色のベリーです。 8月上旬から発送を開始。グーズベリーは、直径8mm~10mm程度の実をつける、スグリ科の落葉小果樹で、サックリとした肉厚の食感と、葡萄のような甘酸っぱい味わいがあります。

安田真理子

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仙台市出身 宇都宮にてイギリス菓子教室「Galettes and Biscuits(ガレットアンドビスケット)」を主宰。イギリスの暮らしに息づくお菓子の味・...

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