イギリス湖水地方を歩く ~湖水地方の南の玄関口『ケンダル』(前編)~

湖水地方の南の玄関口 ケンダル

前回の「湖水地方で暮らして」に続き、今回は、湖水地方の南の玄関口、ケンダル(Kendal)の散歩コースをご紹介したいと思います。

私は湖水地方での生活の後半を、ここケンダルで暮らしました。ぐるりと緑の丘に囲まれたケンダルは、マーケットタウンとして栄えた町です。建築学的にも価値のある古い建物が多く、石畳や細い路地などにも、長い歴史を感じます。お店やレストランも多く、のんびり散歩やショッピングを楽しんで、暮らすように旅をしたい人にはおすすめの町です。

ケント川沿いの町並み
ケント川沿いの町並み

町の真ん中には、ケント川が流れています。
ケンダルの名は、このケント川の「ケント」と、古ノルド語で谷を意味する「ダル」に由来し、「ケント川の谷にある町」という意味を持っています。地元で採掘された灰色の石を用いた建物が多いことから「オールド・グレイ・タウン」の愛称があります。

ウィンダミアへ向かう旅行者の多くは、オクセンホルム駅(Oxenholme The Lake District)で湖水線(The Lakes Line)に乗り換えますが、ケンダルはそこから一つ目の駅です。もし、ウィンダミアからケンダルへ行く場合は、バスが便利です。555番のバスで約20分です。

ケンダルの歴史

ケンダルのはじまりは、1世紀まで遡ります。ローマ人がケント川(Kent River)の岸に砦を築き、その周りに町が形成されていきました。その町は、5世紀初頭にローマ人が撤退した後も残りました。1189年リチャード1世が、ケンダルの男爵、ギルバート・フィッツ・レンフライド(Gilbert Fitz-Renfried)に、サタデーマーケットを開く許可を与えたことを機に、ケンダルは繁栄していきます。

今でもマーケットは、ケンダルの日常風景の一部です。肉、野菜、果物、卵、ハンドメイドジャム、毛糸など、地元の産物が並びます。中世に入ると、ケンダルは羊毛産業の中心地となり、その後何百年もの間、羊毛産業はケンダルとその周辺地域の主要産業であり続けました。

ケンダル・パリッシュ・チャーチ
ケンダル・パリッシュ・チャーチ

14世紀の趣を残す キャッスル・デリー

では、ケンダルで一番歴史の長い家の前から散歩をスタートしましょう。

キャッスル・デリー(The Castle Dairy)は、ケンダル城とケンダル・パリッシュ・チャーチ(Kendal Parish Church)の次に古い建物で、現存する住宅としては最も古く、中世の面影を色濃く残しています。
キャッスル・デリーの真ん中のホールは、14世紀初頭に建てられたものです。16世紀に、アンソニー・ガーネット(Anthony Garnett)という人物によって、両側の翼の部分が増築されました。正面玄関の上には、彼のイニシャルであるAGと、1564と刻まれた小さなデイトストーンがはめ込まれています。上階にはチャペルがあり、そこにケンダルで最も小さいと言われる窓が付いています。

キャッスル・デリー
キャッスル・デリー

私がケンダルで暮らしていた当時、キャッスル・デリーはレストランとして使われていて、食事の前後に館内を見学させて貰うこともありました。「誰もいないのに足音がする」「ひとりでいるのに誰かに見られている気がする」という話をスタッフの方々から聞いても、妙に納得してしまう、不思議な雰囲気がありました。
イギリスでは、幽霊つき物件はかえって人気が高いと言われます。古い建物が高く評価されるイギリスならではの話ですね。
キャッスル・デリーへは、ケンダル駅から徒歩約3分。ワイルドマン・ストリート(Wildman Street) 沿いにあります。ケンダル・バス・ステーションからも、ストラモンゲート・ブリッジ(Stramongate Bridge)を渡ってすぐです。(2021年4月現在、内部は公開されていません)

ストラモンゲート・ブリッジ
ストラモンゲート・ブリッジ

レンフライド男爵が建てた丘の上の城「ケンダル・キャッスル」

町を一望できる丘の上に、ケンダル・キャッスル(Kendal Castle)はあります。
1210年頃、レンフライド男爵により建てられたこの城は、後に別の男爵家であるパー家の拠点となります。1571年に最後の男爵であるウィリアム・パー(William Parr)が亡くなると、城は荒廃の一途を辿ります。現在は、城壁と塔の一部が保存されていて、地元の人の散歩コースになっています。
キャッスル・デリーからケンダル・キャッスルへは、キャッスル・ストリート(Castle Street)、キャッスル・ロード(Castle Road)を通って、約15分です。

ケンダル・キャッスル
ケンダル・キャッスル

ミラー・ブリッジを渡って町のメイン通り”ハイゲート”へ

ケンダル・キャッスルから、サニーサイド(Sunnyside)を通って、川沿いの道まで下ります。左手に川を眺めながら歩いて行くと、古い石の橋、ミラー・ブリッジ(Miller Bridge)があります。

ミラー・ブリッジ
ミラー・ブリッジ

橋を渡って左手へ進むと、ハイゲート(Highgate) と呼ばれる町のメインストリートに出ます。

ハイゲート
ハイゲート

ハイゲートでひときわ目立つ、高い時計台のある建物が、タウンホールです。この道沿には、17世紀、18世紀に建てられた建物が数多く並んでいて、そのほとんどが、お店や、レストラン、ホテルとして、今も現役で活躍しています。

ハイゲートのタウンホール
ハイゲートのタウンホール
ハイゲートにあるパブ兼ホテルの外観
ハイゲートにあるパブ兼ホテルの外観

次回、湖水地方を歩く「ケンダル」の後編では、ケンダルにある紅茶とコーヒーの専門店『ファラーズ』や、1657年創業の『1657チョコレートハウス』をめぐります。

ayako

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旅行業界や大使館など外資系企業勤務を経て、現在はフリーランスの通訳案内士として仕事をする他、イベント通訳や、外国人への日本語指導にも携わっています。 若き日...

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