英国人にとってのアンティークとは
~ 伝統を愛する国・英国 ~

前回、前々回とドラマ 『ダウントン・アビー』を通して主にアンティーク ジュエリーについて綴って参りましたが、今回は基本に戻り、そもそも【英国人にとってのアンティーとは】について、私なりに感じる事を綴ってみたいと思います。

アンティークマーケットの風景
Sunbury アンティーク・マーケットの風景
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“アンティーク”の言葉に、英国をイメージ

ブルー&ホワイトの陶磁器
『ブルー&ホワイトの陶磁器』
英国の家庭、特にティータイムの光景などでよく見かける
英国はもちろんの事、日本でもとても人気がある伝統的な陶磁器のパターン
 まるで中国や日本のデザインのような東洋的な風景が描かれている《ブルー ウィロー》と、
英国の貴族の館や田園風景が描かれているモチーフが代表的なデザインである
掲載写真の製品は、1800年代後期頃から1900年代初期頃に製作されたプレートや、スープボウル

日本人の多くは【アンティーク】という言葉を聞いて、先ずは英国をイメージする方が多いかと思います。実際、私がアンティークを好きになり、アンティーク・ディーラーという現在の仕事に就いていますのも、英国との関わりがあります。

英国は長い歴史があり、格式や伝統を重んじる国と言えます。今まで私が出逢ってきた英国人の方々は、皆、英国人である事に誇りを持ち、どちらかというと、保守的な考え方をしている人が多いように感じます。年配で、且つ、それなりの家柄の方ほど、そのような印象を受けます。

80年代にはじめて訪れた英国

私が初めて英国を訪れたのは今から30数年前、まだ高校生のころです。当時、父親が仕事の関係でロンドンに駐在しており、学生であった私は休暇の度に家族と、時には単身で遊びに行ったものでした。

着陸前の空からのイギリスの風景
着陸前のロンドン近郊の街

初訪英の際、搭乗していた飛行機がヒースロー空港に近付くにつれ、窓から見えた英国の景色。そして着陸に向け徐々に降下していくと、その街並みがどんどん目の前に広がり・・・その時の感動は今でも記憶に鮮烈に残っています。
緑豊かな田園風景や、歴史を感じる古い建造物・・・。

『名探偵 シャーロック・ホームズ』の世界が広がる街

小学生のころより読書と言えば、外国が舞台となっているものを好む習性がありましたが、その中に『名探偵 シャーロック・ホームズ』が含まれていました。

シャーロックホームズ像
シャーロックホームズ像
Eric Neil VázquezによるPixabayからの画像

とても人気のある小説ですので、何度もドラマや映画が製作されていますが、その中でも最も原作の世界観に忠実で評判が高いのが、1984年に英国のグラナダTVで製作された長編ドラマ『シャーロック・ホームズの冒険』と言えるでしょう。日本では、1985年の初放映から何度も再放映されていますし、UK Walkerファンの皆様の中には記憶に残っている方もいらっしゃるかと思います。
私もすっかりこのドラマの虜となり、その数年後に初めて英国を訪れる事になったのですが、飛行機の窓から眼下に広がる光景は、『名探偵 シャーロック・ホームズ』を彷彿とさせるような、正に私のイメージ通りの英国でした。

2012年のロンドン オリンピック開催に向けた頃より、ロンドンは随分と新しくて、スタイリッシュな建造物が増え出したように感じますが、当時はまだそのようなモダンな建物が少なかったように記憶しています。

赤煉瓦のロンドンの建物
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はるか上空、飛行機の窓から目に飛び込んできた英国の街並みの中でも、特に印象的だったのが、赤煉瓦の可愛らしくもクラシックな建物。
『名探偵 シャーロック・ホームズ』の時代背景は、19世紀末。その頃のように馬車こそ道を走ってはいませんが、あの時代と同じような光景が目の前に広がっているのです。それもその筈、赤煉瓦造りの建物はヴィクトリアン様式と言い、大英帝国の最盛期、19世紀のヴィクトリア女王時代に流行った建築様式であり、その物語の舞台となっている時代でもあるからです。
英国に限らず、ヨーロッパ諸国には今も古い街並みが残っている場所が色々とありますが、子供時代にそれまで訪れた事がある海外の地と言えば、アメリカ(カリフォルニア州)、そして、香港とシンガポールですから、実際に体感する英国の空気は、それまでの経験とは全く異なる興奮を与えてくれました。

英国人にとってのアンティークとは

英国の街中を巡っているだけでも、アンティークの世界です。英国人にとって、古いものは特別では無く、とても身近なものであるという事を改めて肌で感じます。

クランベリー ガラス
『クランベリー ガラス』
クランベリーの実のような美しい色合いから、英国ではクランベリーガラス、ゴールド ルビーガラスと呼ばれている
製作過程で金を混ぜる事によって、この艶やかで鮮やかな独特の赤色の発色が生まれるが、貴重な金を用いるとても高価なガラスで、
庶民が楽しむものでは無く、貴族や富裕層向けに製作された製品
英国ではヴィクトリア時代(1837~1901年)に人気があり、この時代頃に製作された製品が、非常に質が良い
掲載写真の製品は、ヴィクトリア時代(1837~1901年)に製作されたワイングラスや、ボウルなど

英国では新築の住居は少なく、歴史ある古い建物を必要に応じて手を入れながら住み、そして次世代に残していくのだそうです。日本であれば、19世紀の建造物があれば、それなりの話題となりますが、英国では歴史ある古い建造物が決して珍しくは無く、更には数世紀も昔に遡る時代の建築まで目にする事が出来るのは驚きであります。

英国人は生まれた時から古いものに囲まれて育っており、また古いものを大切にしていき、次世代に託していこうとする精神が自然と身に付いているのでしょう。
【古いもの】という一言が指し示す対象は、あまりにも多岐に渡ります。ミュージアムピース級の逸品から、リサイクルショップに並んでいるようなものまで。
以前のコラム(2021.2.10 掲載版)にも綴りましたが、現在、最も信頼されている定義としての【アンティーク】は、「製造されてから100 年以上経過した手工芸品・工芸品・美術品」です。

アンティークに触れる多くの機会

コッツウォルズ アンティーク・ショップのショーウインドウ
コッツウォルズ アンティーク・ショップのショーウインドウ

「そんなお宝、そう容易く身近で目にする事は無いのでは?!」と思われている、アンティーク ファンの方がいらっしゃいましたら、一度は英国を訪れてみては如何でしょうか。日本国内にもアンティークを手にする事が出来るショップや、イベントなど沢山ありますが、英国はその比ではありません。
残念ながら、年々、アンティーク・ショップの軒数も減少してきてはいますが、やはり「アンティークと言えば、英国」といったイメージに反せず、まだまだショップや、大小の規模は様々ですがフェアも各地で開催されています。

アンティーク・マーケットの風景
Sunbury アンティーク・マーケットの風景
©All rights reserved by noriko.stardust

アンティーク・ショップやモール、各イベント会場には無料の関連冊子も色々と置かれており、英国各地のイベント開催の情報などが掲載されています。とても数多くのフェアが開催されているので、そういう点からも英国人のアンティーク好きが分かります。

英国で人気のアンティーク鑑定番組『アンティーク・ロードショー』

また、テレビでもアンティークの鑑定番組が放映されており、最も有名なのは1979年に放映スタートした人気長寿番組、BBC放送の『アンティーク・ロードショー』です。様々なジャンルの権威あるプロ鑑定士が英国各地を廻り、視聴者が持ち寄ったアンティークを鑑定するのですが、鑑定だけでは無く、ロケ地も見所です。正に英国らしい景色の中、お城や教会、美しい庭園を会場としているので、それを見ているだけでもとても興味深く、気持ちも癒されます。
https://www.bbc.co.uk/programmes/b006mj2y
日本の人気番組、テレビ東京の『開運!なんでも鑑定団』は、このBBCの番組を参考に企画・制作されたであろう事は容易に想像出来ますが、その世界観は随分と異なっています。

自然に身に付いた英国人のアンティークに対する価値観

ビンテージもののカメラ
ロンドン グリニッチマーケットでの風景
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英国人の生活のあらゆるシーンにアンティークが存在しており、古いものを受け継ぎ大切に扱い、次世代に残していこうという精神は誰かから教わって学んだというよりも、ごくごく自然に身に付いていったのでしょう。
また、英国のように他民族国家であると、余計に自国の伝統や格式を大切にしようという意識も強くなるのかも知れません。
日本と英国は共に歴史が古く、島国という事もあり、国民性が似た部分が多いと思いますし、そのように耳にもしますが、日本人に比べると英国人は良い意味でとてもコンサバティブな価値観を持っているように思います。
私は元々東京で生まれ、ずっと生活をしていますが、良くも悪くも、あまりにもスピーディーに景色が変わっていく事に戸惑いを感じずにはいられません。
そして、新しい流行が生まれては、すぐに消えていき・・・。
個人的には、新しいもの・流行を追い求めるだけでは無く、もう少し豊かな気持ちを持って、ゆったりと過ごしていくべきなのでは無いかと、日々、思うのであります。

次回のコラムでは、より具体的にアンティーク・ショップや、フェアを巡った際のお話を綴っていく予定です。

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小俣晶子

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両親の仕事の関係で学生時代より渡英する機会が多く、現在は先代(母)を受け継ぎ、東京 銀座にてジュエリー&ウォッチを中心としたショップ《 Antiques E...

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