Discovering English Wine

【Discovering English Wine】のコラムでは各ワイナリーの行き方やワインツーリズム等を始め、在英の日本人の方にはもちろん、日本からの観光客の皆様にもお役に立つイングリッシュワイン情報をお伝えさせていただきます。

第一回目の今回は、「イングリッシュワインとは?」「イングリッシュワインの現状」についてお届けいたします。

イングリッシュワインって?

イギリス南部にあるブドウ畑

イングリッシュワイン English Wine とは、イングランドまたはウェールズで栽培&生産されたワインの事を指しています。

イギリスでワイン?と驚かれる方も少なくないかもしれませんが、温暖化の恩恵を受け、ブドウ栽培、そしてワイン生産はかつて無い勢いで盛んになっており、ワインの品質、作り手のレベル、環境等も含め素晴らしく向上しています。

ブドウ畑が集中しているイギリス南部の地図(緑色の州)

北はヨークシャーから南西部のコーンウォール地方までとブドウ畑がみられますが、特にイギリス南部のケント州、イースト・サセックス州、ウェスト・サセックス州、サリー州などに多くのブドウ畑が拡大されています。

これらのワイン産地は通常、北緯51~53度の間に位置に在るので、北半球のブドウ栽培に適す緯度北緯30~50度がを超えてはいますが、先に述べた様にメキシコ暖流や温暖化の変化等の影響もあって寒さが緩和され、極地に近くてもブドウ栽培が可能になってきています。

時には冷涼な気候に見舞われるというマイナス面もありますが、ブドウの生育期の日照時間が長く、ゆっくりと成熟し、複雑なアロマと風味を持たらしてくれるという「この緯度からこそ」の利点もあります。

またイギリスのいくつかのブドウ畑には、雨が多い時期でも保水性と排水性のバランスを保ってくれるチョーク(白亜質石灰質)とグリーンサンド(濃い緑色をした緑泥石を多く含む砂)を多く含む優れた土壌が存在し、特にイギリス南部の一部は、白亜質石灰質の土壌が広がり、シャンパーニュ地方に似た土壌と気候に恵まれているのもあって、フランスの数々のシャンパーニュメゾン達の注目も熱く、これらの土地を買い取りブドウ畑を作るなど、イギリスでのワイン作り進出に乗り出して来ています。

例:ポメリーはハンプシャー州に、テタンジェはケント州、ブドウ畑を作りLOUIS POMMERY ENGLANDとして販売が始まっています。
(Domaine EvremondのClassic Cuvéeは2025年春に販売開始)

ドイツ産の品種からシャンパーニュ品種へ

イギリス南部で育つシャルドネのブドウ

一昔前までは寒冷な気候にも順応が高いミュラー・トゥルガウMüller-Thurgau等 ドイツ産の品種などが主に生産されていましたが、温暖化の影響もあり、伝統的なシャンパーニュ品種もワインに適するまで成熟するようになった事から、1990年以降にはシャルドネなどの品種も代わりに作られるようになりました。

Nyetimberナイティンバーのワイン

1988年にはウェスト・サセックス周囲州(West Sussex) にあるワイナリー 『Nyetimber ナイティンバー』が伝統的なシャンパーニュを作る目的で、代表的な3品種(シャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエ)をブドウ畑で育て始めました。Nyetimberは1992年に初のスパークリングワインNyetimber Première Cuvée Blanc de Blancs(シャルドネ種100%ブラン・ド・ブラン ファーストヴィンテージ)を生み出し、1997年に行われた世界中のワインを対象にした国際的な競技会IWSC(インターナショナル・ワイン&スピリッツ・コンペティション)のスパークリング部門での金賞及び、The Perkins Trophyパーキンズ・トロフィーの最優秀イングリッシュ・ワイン賞も受賞しました。

1998年には、1993年ヴィンテージNyetimber Classic Cuvée は”Best Bottle Fermented Sparkling Wine”. 「最優秀瓶内発酵スパークリングワイン」のIWSC国際トロフィーを続けて受賞しイングリッシュワインのセンセーショナルな幕開けとなりました。

今現在も引き続き、イングリッシュワインの多くが数々の賞を受賞し、世界からの注目を集めています。

イングリッシュワインの今

イングランドとウェールズのワイン生産者は、2023年に過去最高の880万本を販売し、ワインの売り上げは前年比10%増となりました。

食品基準庁(Food Standards Agency)のワイン・チームが発表した新しい数字によると、2023年には新たに87のブドウ畑が登録され、英国のブドウ畑の総数は1,030に達し、またワイナリーの数は209から221に増加しました。
また、総売上高に占める輸出の割合は成長を続け、8%に上昇、ブドウの木の総面積はこの10年間で123%の成長率となっています。

Wine GB(イングランドとウェールズのワイン業界団体 Wine GB:https://winegb.co.uk/)によると、 最も多く栽培されているのは品種はシャルドネChardonnay で、イギリスでの栽培面積の32%を占めています。

英国で栽培されている主なブドウ品種と作付け率表

人気なスパークリングワイン

イングリッシュスパークリングワイン

こちらもWIne GBからのデータとなりますが2023年の英国ワインの生産量の76%がスパークリングワインです。
スティルワインは23%、その内66%が白ワインです。
ロゼは20%、赤の比率はまだまだ低いのが現状です。

スパークリングワイン作りが盛んな背景には、英国はシャンパーニュの消費量、輸入量がアメリカに次いで2位と世界最大規模の輸入国という英国の消費者のスパークリングワインへの嗜好やニーズが高い事もあるのでしょう。

英国で作られるスパークリングワインの91%は『シャンパーニュやカヴァ』と同じく伝統的な製法、7%がプロセッコの製法で見られるシャルマ方式で作られています。

シャンパーニュと同じく『トラディショナル(瓶内二次発酵)方式』で作られたスパークリングワイン
『シャルマ(密閉タンク)方式』で作られたスパークリンワイン

どこで売られているの?

各ワイナリー及びオンラインショップ、大型のスーパー、そして大型のワインショップ(街の小さなワインショップにもメジャーどころのイングリッシュワインが置いてあるところはありますが、お店のオーナーがイングリッシュワインに詳しくない場合数は少なめです)売られている他、まだまだ英国国内でも数は少ないですが「イングリッシュワイン専門店」等での購入が可能となります。

サリー州にあるイングリッシュワイン専門店”Hawkins Bros”

観光客の方の場合、都内中心部にある”Fortnum & Mason”の地下のワインコーナーや大型ワインショップの”Hedonism Wines”(3-7 Davies St, London W1K 3DJ https://hedonism.co.uk/)、”Berry Bros. & Rudd”(63 Pall Mall, London SW1Y 5HZ https://www.bbr.com/)等でのお買い物がお勧めです。

スーパーに並ぶイングリッシュスパークリングワイン達

大型スーパーや村や街の生活に溶け込んだショップの場合、州ごとに「地方特産的」感じが少し現れていて興味を惹きます。
私はサリー州に住んでいるのですが、棚に並んでいるワインもやはり、大手のワインだけでなく「サリー州のワイナリー」からの品も含まれています。

どこで飲めるの?

最近はロンドン市内でレストラン、バー、パブなどでもイングリッシュワインを置いているお店が多くなっています。
ただ、グラスワインでの提供しているお店はさほど多くないので行く前にワインメニューをチェックするのもオススメです。

ロンドン市内のレストランにて、グラス提供でRathfinnyスパークリングワインを楽しめた。

観光客の方の場合、日程を合わせることが難しいかもしれませんが、ロンドン市内&地方のワインショップ等で開催されているワインティスティングイベントでも時々「イングリッシュワインティスティング」を開催していますので、日時があれば是非参加してみてくださいね。

ワイナリーのティスティングルーム等の情報はまたの機会にご紹介致します。

この様に世界から注目を集めているイングリッシュワイン。
日本でも徐々に入手できる銘柄が増えております。
これを機会に是非皆さんもイングリッシュワインを楽しんで下さい。

参考文献:
English Sparking Wine: https://en.wikipedia.org/wiki/English_sparkling_wine
Wine GB: https://winegb.co.uk/

説話社
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大島理恵子

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英国サリー州在住 英国メディカルハーバリスト/アロマセラピスト/リフレクソロジスト 1994年英国に移住。 ロンドン市内のセラピールーム及び癌センターで施術...

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