パンケーキデイのお話し&レシピ

イングリッシュパンケーキ
パンケーキにはグラニュー糖とレモンたっぷり、そしてクルクル巻いていただくのがお約束

国中こぞってパンケーキを食べる、年に一度の「パンケーキデイ」

2月、イギリスのスーパーを訪れると、あることに気づきます。卵型のチョコレートやホットクロスバンズ(上に十字の模様の付いたドライフルーツ入りの甘いパン)などのイースターものと並んで、どんと目立つところに山積みになっているのがパンケーキミックスとレモン果汁。
実はイギリスには年に一度、「パンケーキデイ」と呼ばれる日が存在します。この日国中で皆こぞってパンケーキを食べるという楽しい風習なのですが、その日の正式な名前はShrove Tuesday。日付は毎年2月初旬から3月初旬の間で年ごとに変動します。というのも移動祝祭日であるイースターの46日前から始まるレント(四旬節)の前日と決められているため。今年は2月16日の火曜日がパンケーキデイにあたります。
レントの間、昔の人々は食事や祝宴などを節制し、肉類や卵、牛乳やバターといった贅沢品を断ち、イエス・キリストの受難と苦しみを分かち合いながら、イースター(復活祭)までの期間を過ごしました。そのため、そのレントが始まる前日のシュロブチューズデイには家に残っていた卵や乳製品を使いきるためにパンケーキを焼いて食べていた~というのが、パンケーキデイと呼ばれるようになった理由と言われています。また、このパンケーキの4つの材料、卵、小麦粉、塩、牛乳はそれぞれ、創造、命の糧、健全、潔白を意味しているのだとか。
現在この断食(節制)の習慣は消え、美味しいパンケーキを食べる習慣だけが残ったのですが、人によっては、何か一つ自分の大好きなモノ、例えばお酒とかチョコレートなどをレント期間中は我慢するわ、という話しをよく耳にします。

イギリス中で開かれるイベント「パンケーキレース」

オルニーのパンケーキレース
オルニーのパンケーキレース開始直前の様子。フライパンの中のパンケーキが見えますか?

ところでこの日、パンケーキを食べる他にもう一つ、楽しいイベントがイギリス中で開かれます。それが「パンケーキレース」。エプロン姿に三角巾、そしてパンケーキ入りのフライパンを持ってかけっこするという実に微笑ましいもの。小学校や自治体などが主催して、あちこちで開かれるのですが、最も有名なのが、バッキンガムシャーのOlneyという町のパンケーキレース。町の中央のマーケットプレイスから教会までの415ヤードを、フライパンを持った女性たちが疾走します。なんでもその歴史は1445年まで遡れるのだとか。
~シュロブチューズデイ当日、パンケーキを焼いていて時間をすっかり忘れていた主婦が、Shriving bell(礼拝の始まる鐘の音)を聞いて、慌ててフライパンを手にしたまま教会までかけていったのがその始まりと言われています~。

オルニーのパンケーキレース
オルニーのパンケーキレース。沢山の応援の人たちが見守る中、フライパンを片手に全力疾走!

それにしてもこのレース、お遊びかと思いきやなんのなんの、その速さたるや2020年の優勝者はなんと66秒!今年は残念なことに開催されませんが、2022年エントリーがもう始まっています。ちなみに来年は3月1日(火)。参加資格は18歳以上でオルニーに3か月以上在住の女性。今かならまだ間に合うかも? 首尾よくオルニーに移住したとして、レース当日、参加者は自分でパンケーキ持参がルール。日本風のふっくらホットケーキを持って行って「これはパンケーキじゃないから失格!」なんてことになったらせっかくの努力が水の泡。パンケーキレースにご興味ある方もない方も、まずは下記のレシピで是非一度イギリスパンケーキお試し下さい。

イングリッシュパンケーキ<レシピ>

材料は卵と牛乳と小麦粉とお塩のみ。ベーキングパウダーもお砂糖も入りません。ふんわり感を楽しむ他のパンケーキたちとは一線を画した実に潔いまでのシンプルさです。 作り方もコツがいらないほどシンプルですが、食べ方のコツはあります。とにかく、思い切ってたっぷりのグラニュー糖とレモン果汁をかけること。そしてそれを端からクルクル巻いて召し上がってみて下さい。もちっとした食感の優しい味のパンケーキに、シャリシャリとしたお砂糖、思わず目を閉じてしまうほど鮮烈なレモンの爽やかな酸味、もう一枚~とつい手が伸びてしまう軽さがまた魅力です。

< English pancakes~イングリッシュパンケーキ~>

A ┏薄力粉 ______100g
 ┗塩 __________ひとつまみ
卵 ______________1個
牛乳 ____________250ml

バター(フライパン用)
レモン・グラニュー糖(トッピング用)適量

  1. Aを合わせてボールにふるい入れます。中央をくぼませ、そこに卵を割り入れ、牛乳も少し加え、中央からホイッパーで少しずつ粉をとりこむようにしながら混ぜていきます。すべての粉が見えなくなったら、残りの牛乳を加えながら全体を溶き伸ばして均一な生地にします。
  2. フライパンを軽く熱してバターを少量とかし、お玉1杯分の生地を流します。
    フライパンをまわしてうすく広げ、きれいな焼き色がついたらひっくり返し、反対側も軽く焼き目がつく程度に焼いて取り出して完成。
    厚みの目安はクレープよりほんの少し厚いかな、と思う程度で。

※ グラニュー糖とレモン果汁が基本ですが、ゴールデンシロップや蜂蜜、ジャムなどお好みのトッピングでお召し上がりください。

安田真理子

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仙台市出身 宇都宮にてイギリス菓子教室「Galettes and Biscuits(ガレットアンドビスケット)」を主宰。イギリスの暮らしに息づくお菓子の味・...

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