プラチナプディングのお話しとレシピ

プラチナジュビリーとストリートパーティー

ユニオンジャックで飾られた通りを行進するプラチナジュビリーのパレード
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今年はエリザベス女王即位70周年のプラチナジュビリーイヤー。イギリスではこの6月、盛大に祝賀イベントが催され、大いに盛り上がりを見せています。
予想以上に長く続いたコロナ自粛からの解放感も相まっているのでしょう。この2年は一人一人が人と人のつながりの大切さを学んだ時。国民の結束と互いを助け合うこと、思いやりの大切さを70年の長きにわたり説いてきた、女王への共感と称賛が含まれているようにも思います。

英国王室らしい華やかな行事もため息ものの素晴らしさでしたが、国民みんなが参加して楽しめるイベントが多く企画されていたのもまた、ある意味イギリスらしいところ。
6月2~4日の4連休、イギリス各地で催されたストリートパーティー。道路に長くテーブルをつなぎ、ユニオンジャックのバンティングを下げ、それぞれが食べ物を持ち寄り、ご近所みんなで青空のもと(うまくいけば)ランチを楽しむ、なんてシンプルで微笑ましいお祝いの仕方でしょう。

800メートルに及ぶ長いテーブルには488人が座り、その他芝生でのピクニックを楽しむ人たち
800メートルに及ぶ長いテーブルには488人が座り、その他芝生でのピクニックを楽しむ人たち
Photo by 木島タイヴァース由美子さん(詳細は、オンライントーク会ご案内で)

このストリートパーティーを「The Big Lunch」と名付けてイギリス全土にあらためて広めたのはエデンプロジェクトという環境と社会の共生をテーマに活動するチャリティー団体。近隣住民のコミュニケーションの円滑化を目的に2009年から始まったそれは年々広がりを見せ、今年のそれは「Big Jubilee Lunch(ビッグジュビリーランチ)」と銘打ち、国を挙げて推奨。全国で催された数は16,000件以上だとか。

プラチナプディングコンペティションとは?

もうひとつ、国民参加型の催しとして企画されたのが、女王様のためのプラチナプディングコンペティション。
バッキンガムパレスに王室御用達のデパート・フォートナム&メイソンと、前述のビッグジュビリーランチチャリティー(エデンプロジェクト)が協賛して、プラチナジュビリーをお祝いするにふさわしいプディングのレシピを国民から募集。8歳から108歳まで5,000もの応募があったそうです。条件は女王にふさわしい、けれど誰もが家庭で再現できる材料と道具で作られていること。

プラチナジュビリー・プディングコンテストの出品作をテーブルに並べ、記念撮影する参加者と審査員たち
ファイナリスト5名と審査員たち BBC News より

審査員はフォートナム&メイソンのエクゼクティブシェフはじめ、バッキンガムパレスのヘッドシェフやブリティッシュベイクオフでもおなじみのメリーベリーら8人。選ばれた5名がフォートナム&メイソンのキッチンでプディングを実際に作り、最終審査となりました。
優勝者のプディングは女王様にもふるまわれ、バッキンガムパレスで催されるジュビリーのお祝いの場に招待されます。

プラチナジュビリー・プディングコンテストの優勝作品と優勝のJemma Melvin さん
優勝者のJemma BBC News より

この栄光を勝ち取ったのはJemma Melvin さんの「レモンスイスロール アマレッティ トライフル」。彼女曰く、女王の結婚式でふるまわれたレモンポセットとアマレッティビスケットにヒントを得たのだとか。
他の4名のプディングもどれも見た目に美しく、美味しそうではありましたが、彼女のトライフルは思わずスプーンを伸ばしたくなる、そして作ってみたくなる度では間違いなくダントツ。

優勝した「レモンスイスロール・アマレッティ・トライフル」

さて、この「レモンスイスロール アマレッティ トライフル」、どんな構造かと言いますと、下から、レモンカードを巻いたスイスロール、オレンジとレモンのゼリー、カスタード、アマレッティビスケット、マンダリンクーリー、生クリーム、ホワイトチョコの飾りと砕いたアマレッティ。

プラチナジュビリー・プディングコンテストの優勝作品「レモンスイスロールアマレッティトライフル」を再現
レモンスイスロールアマレッティトライフル

確かにパーツは多いのですが、一つ一つはとてもシンプル。時間さえあれば特別な道具なしで、誰でも作ることが出来ます。
そして、これがイギリスなら、レモンカードも、ゼリーの素も、アマレッティもレディメイドのカスタードもスーパーで買って来さえすれば、忙しい人でも簡単に似たようなものを作ることが出来るのも素晴らしいところ。
家族、友人たちと集える貴重なジュビリーの週末、このプディングにチャレンジした人は相当多かったはず。
このプラチナジュビリーのためだけではなく、この後もずっと、1953年のエリザベス女王の戴冠式で供されたコロネーションチキンや、イギリスの国民的ケーキ、ビクトリアスポンジケーキなどと並んで、作り続けられるプディングになるだろうと言われています。
これら2つと比べると、少々手間はかかるので特別なお祝いの時に腕まくりして、食べてくれる人たちの笑顔を想像しながら作るのにいいですね。

実際に作る前に~

  • 公開されているオリジナルのレシピは、6パイント(約3.5リットル)入る器が必要。日本向けにはさすがに大きすぎるので、ここでは半分サイズでご紹介します。ハーフでも8~10人分くらいはあります、と言っても、甘さ控えめで、おかわりせずにはいられない美味しさ、少しくらい余っても翌日にはきっとなくなってしまうはず。
    今回は直径17㎝高さ9㎝の器を使用しています。
  • オリジナルではマンダリンクーリーのとろみをつけるのに、アロールート(クズウコンなどのでんぷん)を使っていますが、手に入りづらいのでコーンスターチを使用しています。
  • バランスの関係で、カスタードはオリジナルの半量ではなく2/3量、仕上げの生クリームは1/3量にしています。

プラチナプディング<レシピ>

Jemma’s Lemon Swiss Roll and Amaretti Trifle

~ジェマのレモンスイスロール&アマレッティトライフル~

材料

<スイスロール> 30cm×30cm天板

  • 卵 Lサイズ 2個
  • グラニュー糖 50g
  • 薄力粉 50g
  • ベーキングパウダー 小さじ1/2

<レモンカード>

  • 卵黄Lサイズ2個分
  • グラニュー糖 68g
  • 有塩バター 42g
  • レモンの皮(おろしたもの) 1/2個分
  • レモン果汁 40ml

<セントクレメンツゼリー>

  • 板ゼラチン 3枚(約7.5g)
  • レモン 2個
  • オレンジ 1 ½個
  • グラニュー糖 75g

<カスタード>

  • 生クリーム(乳脂肪40%以上) 280ml
  • 卵黄Lサイズ 2個分
  • グラニュー糖 16g
  • コーンスターチ 小さじ2
  • レモンエクストラクト 小さじ2/3(省略可能)

<アマレッティビスケット>

  • 卵白 1個分
  • グラニュー糖 85g
  • アーモンドパウダー 85g
  • アマレット 小さじ1 ½(ビターアーモンドエッセンス少々でもOK)

<チャンキーマンダリンクーリー>

  • みかんの缶詰 シロップを除いて正味360g
  • グラニュー糖 22g
  • コーンスターチ 8g
  • レモン果汁 大さじ1

<ジュエルドチョコレートバーク>

  • オレンジピール 25g
  • グラニュー糖 小さじ1(必要であれば)
  • 100g ホワイトチョコレート

生クリーム(乳脂肪40%以上)200ml

作り方

  1. スイスロールを作る。
    オーブンを180℃に予熱し、ロールケーキ用の天板にオーブンペーパーを敷きます。
    卵に砂糖を加えて、ハンドミキサーで約5分、ふんわりするまで泡立てます。薄力粉にベーキングパウダーを合わせてふるい入れ、ゴムベラで合わせて天板に流し、約12分、軽い焼き色がつくまで焼きます。
プラチナジュビリー・プディングコンテストの優勝作品「レモンスイスロールアマレッティトライフル」を作る工程1
  1. オーブンペーパーにグラニュー糖(分量外)を薄く広げ、その上に焼きあがった生地をすぐに逆さまに置き、裏の紙をはがします。温かいうちにくるくるとスポンジを巻き、紙に包んだ状態でそのままさまします。
プラチナジュビリー・プディングコンテストの優勝作品「レモンスイスロールアマレッティトライフル」を作る工程2
  1. レモンカードを作る。
    ガラスの耐熱ボールにレモンカードの材料を全て入れ、湯煎にかけます。しっかりとろみが出るまで混ぜ続け(約15分)、きれいなボールに移し冷ましておきます。
プラチナジュビリー・プディングコンテストの優勝作品「レモンスイスロールアマレッティトライフル」を作る工程3
  1. セントクレメンツゼリー(柑橘ゼリー)を作る。
    板ゼラチンを氷水で5分ふやかします。
    レモンとオレンジの皮をピーラーで3枚ずつ剥いたもの、グラニュー糖、水200mlと共に鍋に入れて中火にかけて沸かし、お砂糖が溶けたら火から下ろします。皮を取り除き、水を絞ったゼラチンを加えて溶かします。レモンとオレンジの果汁それぞれ75mlずつを加えてから濾し、固まらない程度に冷ましておきます。
  2. カスタードを作る。
    鍋に入れた生クリームを火にかけ混ぜながら沸かします。ボールにその他の材料を加えて混ぜ、温めたクリームを注いでもう一度混ぜたら、鍋に戻します。弱火にかけてとろみがつくまで混ぜながら加熱し、ジャグまたはボールに移し、冷ましておきます。表面に膜がはらないよう、オーブンペーパーまたはラップを貼りつけておきます。
  3. アマレッティビスケットを作る。
    オーブンを180℃に予熱。天板にオーブンペーパーを敷き、薄くバターかオイルを塗っておきます。
    卵白をしっかり泡立てます。お砂糖とアーモンドパウダーを加えて優しく混ぜ、アマレットを加え、滑らかなペースト状の生地を作ります。
    準備した天板に、小さじ山盛り1ずつ落とします(広がるので間隔を空けて)。
    15~20分きつね色になるまで焼いて冷ましておきます。
  4. チャンキーマンダリンクーリー(つぶつぶみかんソース)を作る。
    シロップを切ったみかんの半量(180g)とグラニュー糖を鍋に入れて火にかけ、軽くへらで潰しながら加熱します。コーンスターチを大さじ1の水で溶いたものを加えて、透明なとろみがつくまで加熱し、火から下ろします。残りのみかんとレモン果汁を加えて冷ましておきます
プラチナジュビリー・プディングコンテストの優勝作品「レモンスイスロールアマレッティトライフル」を作る工程4
  1. ジュエルドチョコレートバーク(チョコの飾り)を作る
    オレンジピールがべたつく時はグラニュー糖をまぶします。砕いたホワイトチョコレートを湯煎で溶かし、オーブンペーパーを敷いた天板に流します。オレンジピールを散らして固めます。固まったら割っておきます。
  2. 組み立て
    ②のスイスロール生地を優しく広げたら、③のレモンカードを塗り広げ、再度巻き直します。2cm程度の厚みにスライスし、断面が見えるように器に並べます。残りを底部分に敷き詰めます。
    ④のセントクレメンツゼリー(冷めて濃度が軽くつき始めた状態のもの)を注ぎ、冷蔵庫で冷やします。
    ゼリーがしっかり固まったら、⑤のカスタードを流します。
    ⑥のアマレッティビスケットをその上にのせます(軽く割っても)。アマレッティビスケットは飾り用にも少し残しておきます。
    ⑦のマンダリンクーリーを平らにのせます。
    生クリームを軽く角が立つ程度に泡立て、その上にのせます。
    最後に、⑧のチョコレートを飾り、アマレッティビスケットを砕いてのせて、完成!

お疲れ様でした。
Enjoy!


安田真理子

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仙台市出身 宇都宮にてイギリス菓子教室「Galettes and Biscuits(ガレットアンドビスケット)」を主宰。イギリスの暮らしに息づくお菓子の味・...

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