セイボリーベイキングのお話しとセイボリースコーンのレシピ

セイボリー料理でのピクニック風景
セイボリーでのピクニックランチ
「ブリティッシュセイボリーベイキング」より

私事ですが、9月29日に「British Savoury Baking ~イギリスの古くて新しいセイボリーベイキング~」という本を出させていただきました。 今回はケーキやプディングといった甘いものではなく、スコーンならチーズなどを使った塩味のもの、パイも野菜やお肉などを使った食事系のものをメインとしたレシピ本です。

「ブリティッシュセイボリーベイキング」表紙
「ブリティッシュセイボリーベイキング」表紙

よく耳にするようになった「セイボリー」とは?

近頃耳にするようになったこの「セイボリー」という言葉。一言で説明するのは難しいのですが、ここでは「塩味の、食事系の」という意味で使っています。
日本ではアフタヌーンティーに出てくるサンドイッチやキッシュなど塩味のティーフーズを指してよく使われていますね。
英語のセイボリーという単語には「味が良い、風味がある」という意味や、今はあまり見られなくなりましたが、セイボリーコースと呼ばれる料理の最後を締めくくる塩味のカナッペ的フードを指すこともあります。ですが、現在よく使われるのはやはり「塩味の」という意味において。

では、塩味のものなら、何にでも使えるかというと、さにあらず。線引きは少々曖昧なのですが、甘いものと塩味の両方があり得る場合に、これは塩味ですよ、甘いものではないですよ、と強調したいときに特に使われる傾向にあります。

テーブルにならぶチーズ&オリーブスコーン
チーズ&オリーブスコーン

日本語で「これは甘くないお漬物です」「甘くないおにぎりです」などと言わないように、セイボリーという語も「これはセイボリーのカレーです」「これはセイボリーのステーキです」などと、はじめから塩味前提のものには使いません。例えばベイキングで言えば、甘いものであることが多いスコーンやビスケットにチーズやハーブなどを入れて食事系(塩味)に仕立てた場合は「セイボリースコーン」「セイボリービスケット」と呼びます。また、通常は甘いものを詰めるシュー皮にチーズやスモークサーモンなどのフィリングを入れる時は、セイボリーフィリングをシューペストリーに詰める、と表現します。

またイギリスでは「セイボリースナック」という表現も使いますが、これは私たち日本人がイメージするものと少々異なります。日本語で「スナック」はいわゆるスナック菓子、ポテトチップスのような袋菓子的なもののみを想像しがちですが、イギリスでいうスナックはおやつ、あるいはお酒の席や人が集まった時、お腹が空いた時に軽くつまむものを指し、コーンスナックやポテトチップスなどはもちろん、そこにはポークパイやソーセージロール、スコッチエッグやナッツ、小型のパイなども含まれます。

セイボリーの料理たち
「ブリティッシュセイボリーベイキング」より

セイボリーとわたしの出会い

ここまで書いてきて思い出したことがひとつ。何故私がセイボリーという言葉を昔から違和感なく使ってきたのか、、、それは数十年前、学生の頃にアルバイトをしていた某ドーナッツショップ、、、そこではミートパイやソーセージ、チーズなどを入れた塩味のパイやドーナッツをセイボリードーナッツ、セイボリーパイと呼んで他の甘いものと区別していたから。
その頃はセイボリーという語の意味も綴りも全く考えず、ただ単に甘くないものを指すひとつの「ジャンル」とだけ認識していたのですが、まさか数十年後に自分の本のタイトルにセイボリーという語を使い、その語をこうして説明することになろうとは、人生何がどうつながるか分からないものです。

イギリスのセイボリーのレシピをご紹介します

閑話休題。
拙著「British Savoury Baking ~イギリスの古くて新しいセイボリーベイキング~」では、1章でスコーンやソーダブレッド、第2章で様々なペストリーを使ったパイ類、第3章でイーストを使ったパンから、クラッカー類、ヨークシャープディングなど様々なイギリスのセイボリーレシピを、新旧織り交ぜ50種以上紹介しています。またそれらに合わせて食べたい、チャツネやフムス、スープといったサイドメニューも掲載。
休日のランチやピクニック、お客様がいらした際のワインのお供やアフタヌーンティーにまで幅広く使えるレシピがぎっしり詰まっています。

ピクニックバスケットとチーズ&オリーブスコーンのランチ
ピクニックにもピッタリのチーズ&オリーブスコーン

今日はその中でも、私が普段からランチやピクニックのためによく作る、チーズとオリーブのスコーンをご紹介します。生地自体は一般的なチーズスコーンですが、そこにオリーブをたっぷり加え、大きなトレイベイク風に焼き上げたもの。

焼きあがったスコーンは前もって入れておいたラインに沿って、ちぎりパンのように、ラフに手でちぎっていただくのですが、それがまた気取らない食事やスナックにぴったり。
型抜きするチーズスコーンより生地をいじらない分ふんわりと、そして大きく焼くため乾燥しがちな断面がなくしっとりと焼きあがります。お手軽なのに、目先が変って新鮮な「チーズ&オリーブスコーン」、この秋是非お試しいただきたい一品です。

チーズ&オリーブスコーン<レシピ>

ちぎりパンのようなチーズ&オリーブスコーン
チーズ&オリーブスコーン

Cheese & Olive Scone

~チーズ&オリーブスコーン~

17×27cm長方形型1台分

【A】
 ┏ 薄力粉 _______300g
 ┃ ベーキングパウダー __大さじ1
 ┗ 塩 ________小さじ 2/3

無塩バター ______60g
チーズ(あればチェダーチーズで)____100~120g(おろしたもの)
オリーブ ________80g(粗くカット)

【B】
 ┏ 卵 ____1個分
 ┗ 牛乳 __卵と併せて180mlになる分量

<トッピング用>
チェダーチーズ・牛乳 _____適量

<下準備 >
*バターは1cm角にカットし冷蔵庫で冷やしておく
*型にオーブンペーパーを敷く
*オーブン予熱200℃

  1.  Aをあわせてボールにふるい入れ、バターを加えます。指先をこすり合わせるようにして粉の中でバターの粒を小さくしていき、全体をさらさらのパン粉状にします。チーズとオリーブも加えます。
  2. Bをよく混ぜ合わせてから、①に回し入れ、水分を全体に散らすようテーブルナイフまたはゴムべらでざっと混ぜてひとかたまりにします。
  3. 打ち粉をふった台に生地を取り出し、軽く練り、めん棒または手で型のサイズになるよう延ばします。型に移し、カードなどを使って12等分になるよう切込みを底までいれます。

トッピング用の牛乳を刷毛で表面に塗り、チーズを好みの量ちらします。 200℃のオーブンで25分程こんがり焼いて完成。切り込みに添ってちぎって召し上がれ

* 型がない場合は長方形にまとめた生地をオーブンペーパーを敷いた天板に直接のせて焼いても構いません。

安田真理子

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仙台市出身 宇都宮にてイギリス菓子教室「Galettes and Biscuits(ガレットアンドビスケット)」を主宰。イギリスの暮らしに息づくお菓子の味・...

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