英国のクランブルのひみつとレシピ

1.節約型クランブル

世界中で愛されている「クランブル」。起源はイギリスだといわれています。クランブルといえばフルーツの上に乗せてオーブンで焼かれた「サクサク」な食感を思い浮かべるかと思いますが、実は英国家庭で作られるクランブルは私たちが想像するクランブルとはちょっと異なります。

英国では大きく2種のクランブルがあります。
大きく分けると「節約型」か「贅沢型」か。

耐熱ガラス皿で作ったクランブル
耐熱ガラス皿からスプーンで取り分けるクランブル
節約型のクランブル

戦時中の英国では高価な材料が手に入らなかったことから、小麦粉やバター、砂糖たっぷりのタルトを作ることは大変贅沢な事でした。そこで、タルト生地を逆さにして表面に少量生地を乗せようというアイディアから節約レシピとして作られるようになったのが英国のクランブルです。特徴としてはたっぷりの小麦粉に対して少量の砂糖、バターのみ。質素な配合になっています。

この「節約型クランブル」は小麦粉が多い為「粉っぽい」のが特徴です。その為、汁気のあるフルーツに乗せギュギュっと平らに押し付けて焼き上げます。正にタルトの逆さまバージョン!押し付けることで小麦粉が林檎やルバーブなどジューシーなフルーツの水分を上手く吸い取ってくれていてしっとり感もあります。
日本人にはちょっと粉っぽいかな?べちゃべちゃしているかな?と感じるかもしれませんが、その素朴さもまた魅力です。

2.美味しさの秘密「カスタード」

デザートが隠れるほどのカスタード。これが英国流。クッキングアップルにルバーブ、ベリー、日本では酸味も優しいものが多いように感じますが、英国の果物は力強く酸味も強烈!クランブルには果物を砂糖で煮たりせず生のまま使うのが一般的ですからクランブルだけではちょっと酸っぱ過ぎると感じることも多いのですが、そこへ甘いカスタードが加わると、酸味と甘みの絶妙なハーモニーがたまりません!更にたっぷりのカスタードのお陰で粉っぽさもさほど気にならなくなるのです。

ファームショップのカフェで食べたカスタードたっぷりのクランブル
ファームショップのカフェで食べたカスタードたっぷりのクランブル

クランブルだけでなく、様々なデザートにカスタードをかける英国ではお手軽なインスタントのカスタードパウダーが一般的に使われていますが、スーパーにも様々な美味しいカスタードが売られています。是非お好みを探してみてくださいね。

3.クランブルに好まれるフルーツは?

英国のクランブルに好まれるフルーツダントツNo1は何といっても「林檎」です。英国では林檎がいくつかのカテゴリーに分けられていて、大きくは「デザート(スイーツ)アップル」か「クッキングアップル」です。「クッキングアップル」はその名の通り「調理用」の林檎。代表的なものに「ブラムリーアップル」があります。驚くほど酸っぱくて生食には適していませんが、加熱すると酸味が和らぎホクホクとした食感とコクが大変美味しい林檎です。

その他、ルバーブやブラックベリー、アプリコット、ピーチ、洋ナシなどもクランブルに好まれます。

マーケットで売られていたアップル
ロンドンのファーマーズマーケットに並ぶブラムリーアップル

ブラムリーアップルは民家の庭にも多く植えられていて豊かに実をつけている様子に出会うことができます。お邪魔したお宅では食べきれない実が地面に沢山落ちていて、ワンちゃんがボール代わりに遊んでいる光景に出会い驚きました!秋になると「ご自由にどうぞ!」と家の前にお裾分けが出されている事も。

4.リッチなクランブル

質素な「節約」クランブルに対して、フレンチ式のリッチなクランブルはロンドンのお洒落なカフェや高級ホテルで出されることが多くあります。これは所謂私たち日本人が想像するクランブル。サクサクとリッチな食感と風味が魅力です。

特徴としては「アーモンドパウダー」や「ヘーゼルナッツパウダー」など高価な材料が使われて、バター、砂糖もたっぷり、贅沢な配合です。砕いたナッツやオーツ麦が入ることも多く、粉っぽさはなく、ザクザク食感を楽しむことができます。

おしゃれなケーキ鍋でデーブルに出されたクランブル
英国社交クラブのモダンなクランブル
テーブルのお皿に盛られたルパーブクランブルとその上に盛られたアイスクリーム
ロンドンの人気カフェ「デイルズフォード・オーガニック」のルバーブクランブル

5.クランブルレシピ2種

ここでは2種のクランブルレシピをご紹介致しますので、是非ご家庭にあるフルーツで作ってみてください。皆様はどちらがお好みでしょうか?

A.クラシカルな「節約型」クランブルレシピ

小麦粉(125g)
無塩バター(50g)
砂糖(50g)
フルーツ(約450g)
※好みでシナモンを小1

B.リッチなクランブルレシピ(直径20cmの耐熱皿1個分)

アーモンドパウダーやヘーゼルナッツパウダー(50g)
砂糖(50g)
無塩バター(50g)
小麦粉(50g)
塩(ひとつまみ)
林檎2~3個
※好みでシナモン等のスパイス(小1/2)やオーツ麦、砕いたナッツ類

作り方(どちらも同じ)

  1. オーブンを180℃に予熱する。
  2. ボウルにふるった小麦粉、冷えたバターを入れ指先で小麦粉とバターを擦り混ぜる。
  3. 砂糖を加えて混ぜ冷やしておく。
  4. 林檎などのフルーツを好きな形に切り耐熱皿に入れ砂糖(分量外)をまぶしておく。
  5. 冷えたクランブルを乗せオーブンで30~45分焼く。
    ※1のレシピの時は全体にクランブル生地を広げてぎゅっぎゅっと押さえつけるように全体に広げる。
  6. フルーツがグツグツと煮えて、クランブルがこんがり焼きあがったら出来上がり。
    好みでカスタードやアイスクリームを添えていただく。

※フードプロセッサー使用もOK。全ての材料を入れて混ぜるだけ。
注意:しっかり冷やしたバターを使います。混ぜすぎると生地が滑らかにまとまってしまいますので注意。荒いそぼろ上になったらOKです。
※クランブル生地は密閉して1か月程度冷凍可能です。沢山作って冷凍しておくとすぐに使うことが出来て便利です。

《ライター~牟田彩乃~ 告知情報》

三越カルチャ―サロン(入会金不要
英国菓子クラス「英国の夏のサマープディング」
7月17日(月・祝) 14:30~16:30
※詳細は、イベント名をクリックしてご確認ください。

自宅サロンレッスン情報はこちらよりご確認いただけます。
https://lit.link/ayanolondonparis

牟田彩乃

8,089 views

英国菓子研究家 牟田彩乃 パティシエである祖父の影響で幼いころからお菓子作りに親しむ。ANA国際線客室乗務員を経てパリへお菓子留学。結婚後は夫の駐在に伴いア...

プロフィール

ピックアップ記事

関連記事一覧