チップトリー(Tiptree)の農園・工場見学 Part.2

140年にわたって保存食を作り続けてきた『チップトリー(Tiptree)の農園・工場見学 Part.1』の前回農場見学に続き、今回は工場見学の情報をお届けします。

140年の歴史を誇るウィルキン&サンズ社(Wilkin and Sons Ltd.)

チップトリーの製造元であるウィルキン家が、エセックス州のチップトリー村で果樹栽培を始めたのは1865年のこと。その20年後の1885年にウィルキン&サンズを社名とし、初めてブランド名であるチップトリーのジャムの生産が始まりました。

初期のチップツリーでのジャム作り
 ©Wilkin and Sons

現在、ウィルキン&サンズはジャムやマーマレードなどの保存食のみならず、ケーキや調味料、ジンなども生産しています。
1911年、チャールズ王の曾祖父にあたるジョージ5世の時代に王室御用達の認可を受けて以来、今日まで存続されています。

それは単に良質な商品を製造するだけではなく、ウィルキン&サンズの倫理的、かつ環境にやさしい持続的なアプローチが認められたことでもあるのです。
スタッフに会社の発展への関心を持ってもらうために、従業員持ち株制度を導入しているのもチップトリーの特徴の一つ。従業員が株のほぼ半分を保有しているということですが、彼らの商品に対する熱意もそんなことから生まれているのかもしれません。

王室御用達の認可証である紋章のついたチップトリーのジャム
©Wilkin and Sons

環境問題に配慮された工場でのジャムづくり

さて前回はチップトリーが生産するジャムの材料を栽培する農園をご紹介しました。今回はそれらの材料を使って作られるジャムやマーマレードの工場を見学した際の模様をお伝えしようと思います。
案内してくださったのは、環境マネージャーであるジェイムズさんで、見学の際に次のように語ってくれました。
「環境問題に関しては、これで十分ということはありません。例えばジャムに必要な砂糖の問題や(サトウキビの栽培をするために森林が伐採され、そのために野生動植物や地球上のエコシステムに大きな影響が出ている)、機械の動力となるガスが作り出す気候変動を防ぐため、ガス使用の減少や廃止も考慮しなければなりません。」
ジェイムズさんの言葉のひとつひとつから、今地球を脅かしている環境問題改善に対する熱意が感じられました。

クリスマスの象徴、チップトリーのクリスマスプディング

まずクリスマスプディングを作っている部屋です。クリスマスの日、食後のデザートとして出される青い炎に包まれたクリスマスプディングはクリスマスの象徴とも言える存在です。

チップトリーのクリスマスプディング
©Wilkin and Sons

ここではドライフルーツのチェックから始まり、最後にボックスに詰めるまでの全ての作業が行われています。

材料となるドライフルーツ
陶器の プディングベイスンに詰め替える
布製のカバーをしてしっかり紐でくくる
赤いセロファン紙をかぶせて出来上がり

最後に全てハンドメイドで作られたことを示し、パッキングした人のサインが入ったラベルを貼って出来上がりです。時々このプディングを買ったお客さまから、そのサインの本人宛にお礼の手紙が来るそうです。生産者とお客さまの特別なつながりが感じられる、手作り商品の暖かいエピソードを伺うことができました。

ブラッドオレンジで作られるチップトリーのマーマレード

出来上がったブラッドオレンジ・マーマレード
©Wilkin and Sons

次の製造現場ではブラッドオレンジのマーマレードが作られていました。ここではまずオレンジを丸ごとボイルしています。完全にやわらかくなったところで皮以外の果実、ワタなどを袋に入れて機械で圧縮し、ペクチンを出します。最後に砂糖を加え再びボイルして瓶に詰めます。

丸ごとボイルされるオレンジ
沸騰して柔らかくなったブラッドオレンジ
最後に砂糖を加え、更に沸騰させる最後の段階
Tiptree
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チップトリーのティールームで楽しむアフタヌーンティー

最後に敷地内にあるティールームでアフタヌーンティーをいただくことにしました。
チップトリー経営のティールームはこのほか、イーストアングリア地方周辺に6箇所あります。アフタヌーンティーは紅茶の他にサンドイッチの種類が選択できるほか、予め連絡しておけばグルテンフリーやベジタリアン、ビーガン用のものも用意してくれます。2名分で50ポンド(スパークリング・ワインが付くと60ポンド)という料金もイギリスではお手頃といったところでしょうか。

チップツリーのティールーム
チップトリーのジャムが添えられたティールームのアフタヌーンティー
©Wilkin and Sons

また犬用のドギーメニューも用意されていて、外に用意されたテーブルでは愛犬も訪問客のひとりとして歓迎されていました。

犬も大事なお客様 ©Wilkin and Sons
ティールームにはワンちゃん用のメニューの用意も
©Wilkin and Sons

併設の博物館は無料で見学可能

休憩した後は、博物館へ。ウィルキン一族のひとりであったJ.S. ウィルキンは地元の人の暮し、ジャム作りの中で使われた道具、写真や書類の収集を始めました。最初は工場内の一室に展示されていたこれらの収蔵品は今ではティールームの隣の博物館へと発展しました。そこには、1885年につくられたジャムや、ジャム作りに使われた機械などが展示されています。

博物館の展示品 ©Wilkin and Sons
初期のジャム作りに使われたお鍋
1947年に使われていたチェリーの種を取る機械

最後は売店です。チップトリーで作られるジャム、マーマレードの他、地元の工芸品などが販売されています。

売店 ©Wilkin and Sons

残念ながら工場、農園は現在のところ一般公開はされていませんが、ティールームでのお食事や売店を楽しむことはできますし、また隣接の博物館は無料で見学することが可能です。
ロンドンから列車とタクシーで約1.5時間のチップトリー。
次回の英国旅行に訪れてみてはいかがでしょうか。

  • ロンドン・リバプール・ストリート駅(Liverpool Street Station)からウィザム駅(Witham)まで列車で約1時間
  • ウィザム駅からはタクシーで約10~15分

Tiptree Jam Museum & Tea Rooms
Factory Hill,
Tiptree, Essex, CO5 0RF, England

Museum:https://www.tiptree.com/blogs/news/tiptree-jam-museum
Tea Rooms:https://tiptreetearooms.com/pages/tiptree-tea-room

木島タイヴァース由美子

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1977年英国政府観光ガイド資格であるブルーバッジを取得。以来、現在にいたるまでイギリス全土にわたって旅行者を案内。2015年にカルチャーツーリズムUKを立...

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