もしも、エリザベス女王のお茶会に招かれたら?
もしも、エリザベス女王のお茶会に招かれたら?
ドキっとするタイトルですよね。実際に、ロンドンのバッキンガム宮殿でお茶会に招待される…なんていうドラマティックな出来事、本当にあるのでしょうか?
まさか、人生の中でそんなことは絶対にないわ…と思ったかたも、「ティーマナーを身につけることは、紳士・淑女の教養のひとつ」ティーカップ片手に耳を傾けてみてください。
さすがに、バッキンガム宮殿のドローイングルームに招かれて、エリザベス女王と
ティーテーブルを囲む……なんていうシチュエーションは、王侯貴族や皇室メンバーでは
ないかぎり無いとしても、女王陛下主催のガーデンパーティに招かれるということは、
イギリスに暮らしているかたにとっては、そう珍しいことではないようです。
英国王室主催のガーデンパーティとは
私の知り合いの中にも、実際に招待を受けたかたが何人かいらっしゃいますし、日本人でも出席したことがあるというかたもいらっしゃいます。
日本でいうと、毎年恒例、皇居で行われている園遊会のようなもので、年に3回、社会貢献を認められた約8,000人のかたに招待状が送られます。
招待される側も、ある日突然、王冠の紋章が入った一枚のカードが送られてくるだけ。
取り立てて招待される理由や経緯などは書かれていないため、「受け取ってびっくり!」ということもあるようです。
英国王室主催のガーデンティーパーティの歴史は、1860年代からはじまります。
第7代ベッドフォード公爵夫人アンナ・マリアが空腹に耐えられず、ウォーバンアビーの館でひっそりと始めたアフタヌーンティー。それは、上流階級のソサエティーの中で、ひっそりと催されるものでした。
それを世に知らしめたのは、時の女王ヴィクトリアです。
ヴィクトリア女王とアフタヌーンティー
アンナ・マリアは女王が18歳で即位した際、王室の侍女を務めていました。なぜ、貴族のご夫人が、わざわざ女官を?と思いますが、宮廷に仕えるメンバー<a lady-in-waiting>に選ばれることは、貴族社会においては非常に栄誉なことだったのです。
1841年、新婚のヴィクトリア女王とアルバート公は、ウォーバンアビーの館を訪問します。そこで受けたアンナ・マリアからのアフタヌーンティーのもてなしに感銘を受け、女王は新婚生活の中にも取り入れるようになります。
その後、王室主催の行事としても茶会が用いられるようになり、貴族の秘密のお茶会
<アフタヌーンティー>は階級を越えて広まっていきました。
当時ヴィクトリア女王からご招待を受けるのは、貴族、政治家、外交官など、一部のLadies and Gentleman限られていたようです。
エリザベス女王のお茶会に饗されるメニュー
ガーデンティーパーティの慣習はその後も受け継がれ、現在もエリザベス女王主催の
お茶会は恒例となり、バッキンガム宮殿の庭園で行われています。
庭を愛する英国人にとって、ガーデンパーティは最高の贅沢でもあるのです。
午後3時、軍楽隊による生演奏の中、お茶会が始まります。
庭にはマーキーとよばれるテントがいくつも張られ、長いテーブルに紅茶とティーフーズが並べられていて、ゲストは立食のビュッフェスタイルで自由に楽しみます。
午後4時になると王室メンバーが登場。
ロイヤルファミリー専用のマーキーがあり、そこに立ち入りが許されるのは、高位の賓客や要職者。
さすがにエリザベス女王がポットを握ってティーサービスということはありませんが、サービスのかたが丁寧にお茶をいれてくれます。
ドレスコードやマナーもエリザベス女王に準じます。
男性はモーニング、女性はアフタヌーンドレスが基準ですが、それほど堅苦しいものではなく、スマートカジュアルのような装いのかたも見受けられます。
ロイヤルファミリーの方々は、積極的にゲストとのコミュニケーションをはかるので、
「女王陛下が前をお通りになったら、カーテシー(curtsy)でご挨拶しなきゃ」と片足を斜めに引き、少し膝を曲げる仕草を練習する女性の微笑ましい姿もあります。
テーブル並ぶのは、サンドイッチ20,000個、ドロップスコーン9,000個、フルーツタルト9,000個、チョコレートケーキ8,000個、レモンケーキ8,000個、などなど多種多様のティーフーズ。
そして、主役の紅茶は王室御用達紅茶商トワイニングがガーデンティーパーティ用にブレンドしたスペシャルティー。想像しただけでワクワクしますね。
バッキンガム宮殿は、コロナ前までは女王不在の期間に一般公開されていました。
事前にチケットを取ると、日本にも英国王室からの素敵な招待状が届くという粋なはからいも人気でした。
ガーデンティーパーティが開かれる庭園に足を踏み入れて、紅茶やケーキをいただくこともでき、ちょっとした<ロイヤル気分>を味わうこともできます。