写真家『辻丸純一』とイギリスの出会い

映画を通じたイギリスとの出会い

1996年頃のロンドンブリッジ
1996年頃のロンドンブリッジ

いまからちょうど50年前1971年の作品、小学生の恋を描いた映画「小さな恋のメロデイ」の鑑賞は、当時人気のミュージシャンが音楽を担当していたこともあり、いまでも記憶に残る映画作品でした。 その映画から半年もしないうちに、映画の主人公マーク・レスターが日本のチョコレート広告撮影のために来日し、運良くその撮影アシスタントとしてご本人とご一緒させていただいたのが、私の初めてのイギリスとの出会いでした。

カメラマンとしてヨーロッパへ

1971年パリの街角で
1971年パリの街角で

マーク・レスターとの出会いと前後して、カメラマンの道を歩み始めた1971年に寺山修司氏の劇団「天井桟敷」ヨーロッパ公演に同行することに。これがヨーロッパの地を踏む初めての出来事で、当時はアジア、インド、中近東などを経由する南回りルート。いまでは想像もつかないほど時間をかけてのパリ到着でした。

初めてのヨーロッパ、パリの華やかな街並みを見て、新鮮な感動を覚えたことを今でも思い出します。寺山修司氏のヨーロッパ公演も、フランス北部の街ナンシーでの演劇祭と、パリの市場を使って行われ、いくつかのトラブルがありながらも連日大成功で、カメラマンとして毎日シャッターを押したことが、私のカメラマン人生のスタートに大変貴重な経験となったのです。 その公演撮影の合間をみて3日間ロンドンへ渡りましたが、パリとは違って勝手知ったる英語で記載された地下鉄の看板や地図、街並みに触れ安心し、また建造物もパリと比べると重厚で落ち着いた感じを受けたことを覚えています。骨董品や古着の値段に驚き強く印象に残ったポートベロー・ロードの「蚤の市」や、大英博物館の展示物に感動し、3日間という短期間にもかかわらず、イギリス、ロンドンに強く惹かれていきました。これが、私のこれからの長い人生をかけて写真を撮っていくイギリスとの初めての出会いになるとは、まだこの時は知るよしもありませんでした。

再びのロンドン

1998年頃のビッグベン
1998年頃のビッグベン

25歳になった1973年には、フリーカメラマンとして少しずつですが仕事を拡張でき、その後も順調で2年後の1975年には毎日撮影に追われる日々となります。そんな時に、ふと眺めた英国ファッション誌が人生の転換の契機に。当時受けていた連載の案件、定期的なお仕事もすべて整理し、イギリスへ渡る決意をしたのです。

翌1976年に1年間イギリスで暮らせる生活費を持って単身渡英します。イギリスに知り合いやコネクションがあるわけでもなく、確たる目的も持っていない思い付きでの渡英でしたが、この期間に経験した数々のことは、その後のカメラマン人生に大きな影響を与えました。渡英直後の3か月間借りたウエスト・ハムステッドの安宿では、多くの同類の日本人が出入りし貴重な現地情報の入手に役立ち、ウエスト・ハムステッドでの生活の後は、私がお気に入りのロンドンの街、ノッティングヒル駅から近いポートベロー・ロードの中心地に移り住んだのです。現地で知り合ったロンドンのカメラマンとは、幾度となく意見を交わし、日本人が持つ繊細な撮影技法は決してロンドンのカメラマンには引けを取らないことを悟り、良い写真を撮るためには技術ではなくアイデアや、その人の生き方が写真に影響を与ええるといことに、気付かされたものでした。 映画「ノッティングヒルの恋人」で有名になり、今ではファッションの街としてにぎわっているこの街に、いまもロンドンへ行くたびに訪ねるのですが、当時と何も変わらず、そのままの面影を残す街並みに出会えることに驚きを隠せません。

ロンドンとの別れ

1978年アフガニスタンにて
1978年アフガニスタンにて

1年半のロンドン生活も軍資金がなくなり、1977年帰国を決断します。ちなみに、帰国時は資金の関係で陸路、日本までアジア・ハイウェイを使っての帰国を選択することに。イタリヤ、 ギリシャ、イラン、パキスタン、インド、ネパールからタイまで約半年かかり、様々な生活環境の中での寝袋とカメラだけの旅で、またこれはこれでドラマとなり、私の人生の価値観を変えるものとなりました。

美しいイギリスの風景をもとめて

2018年湖水地方 エスウェイト湖
2018年湖水地方 エスウェイト湖

帰国から1年ほどで、以前のように雑誌や広告の仕事が入り始めるのですが、イギリスとの不思議な仕事の縁がここから始まり、その後何度か撮影のためイギリスへ行く機会が訪れることになります。仕事では、ロンドンのみならずケント州や港町のブライトンを撮影し、イギリスの田舎の風景に触れるようになり魅了されていきます。1995年ころからは旅行誌や海外ツアーのパンフレット写真撮影の仕事に携わります。JALの機内誌ではマン島のオートバイレースの撮影も行い、撮影旅行のたびにさらにイギリスの地方へ惹かれていくこととなりました。 次の転機は1996年でした。それまで仕事で撮影するイギリスの写真は版権の関係もあり、自由に活用できないため、私の作品として残すために自費で渡英し撮影することにしました。それが、その後小学館や講談社などで発刊することになる、湖水地方の写真を集めた書籍となります。湖水地方の魅力については、以前ロンドン滞在時に書店で偶然みかけた湖水地方の羊農家の四季にまつわる写真集がきっかけでした。おかげさまで、廃刊になった書籍もありますが、以下の出版物を発行させていただくことができました。

辻丸純一の出版物

2000年8月 「湖水地方四季物語」(東京書籍) ※当時は、湖水地方の個展も開催
2002年6月 「英国で一番美しい村々」(小学館)
2003年 「英国で一番美しい風景湖水地方」(小学館)
2005年 「イギリス湖水地方」(JTBパブリッシング)
「スコットランドを旅する」(千早書房)
2007年 「英国湖水地方からの手紙」(講談社)
2010年 「ロンドンより南へ」(ダイヤモンド社)
2016年 「ピーターラビットのすべて」(小学館)
2020年 DVD「英国湖水地方世界遺産」

これから、英国ファンサイト UK Walkerで、英国の美しさを、写真を交えて紹介していきます。

辻丸純一

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イギリスと出会ってから50年過ぎました。私の人生の節目に必ずイギリスが絡んで来ました。今回も写真と映像参加せていただく事になり感謝、感謝です。 日本よりイギ...

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