多様性を受け入れる。「こうでなければ」のハードルが低い国イギリス

イギリスで感じていた多様性

前回のコラムから今日までの間に、エリザベス女王がご逝去、チャールズ皇太子が国王になられ、エリザベス女王が最後に任命なさったトラス首相はわずか45日で退任、代わってスナク氏が首相に、とイギリスは大きな出来事がたくさんありました。
首相のひとりは女性、もう一人はインド系移民2世と、「イギリスにルーツを持つ白人男性」ではないことに感心していた私が、かつてイギリスで感じていた「多様性」について今日はお話ししようと思います。

2014年当時のスナク首相
スナク首相
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「みんな一緒に」の日本から「人それぞれ」のイギリスへ

前回までに書いたブリティッシュスクールに転校した中3の秋まで、私は東京の学校に通っていました。都心の一貫校だったこともあり、義務教育後も高校そして大学に上がるのは当然。進学しないという選択肢は私にも周りの子たちにも存在しませんでした。ところが転校先のブリティッシュスクールでは、「勉強が好きじゃない子は無理して進学しなくてもいい」という考え方。え?みんな大学を目指さないの?と驚きましたし、16歳の誕生日には義務教育は終わったという意味で「もう学校に来なくてもいいんだよ」と友達に言われ、頭が「???」となったのを覚えています。

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背景を少しご説明しますと、そもそも1980年当時のイギリスは大学進学率がまだ低く、大学機関も国立のみ三十数校しかありませんでした。またこのブリティッシュスクールが英軍子女ための学校だったため、義務教育終了とともに男子は軍隊に入るケースも身近にあった、というのも「16歳になったから学校は終わり」発言に関係していたかもしれません。

「みんな一緒」ではないもう一つの例は、学校のスキー合宿です。日本なら林間学校や修学旅行などは全員参加が前提ですが、この学校では希望者のみ。それも1学年200人くらいいるのに、参加できるのは30名ほど。希望者多数の場合はくじ引きです。1週間ほどのスキー合宿でいなくなる人のほうが圧倒的少数なので授業は通常通りに進んでおり、その間の勉強については「帰ってきたら自力で追いついてね」という方針。おおらかでした。

無理して全員で高みを目指すより、ひとりひとりが楽しめることを

昔は「学芸会」と呼ばれた子供の学校での発表会や、学校のスポーツ大会も然りです。日本の学校では学芸会のためにクラスごと、学年ごとに綿密に練習をし、もちろん全員参加。スポーツ大会なら運動能力の高い選ばれた子たちが競い合っていましたが、私のブリティッシュスクールではこれもまた、日本の比ではないほど緩いのです。
ある年、Old Time Music Hall という昔ながらの歌や芝居を披露する学芸会的なイベントがあったのですが、これまた参加は有志のみ。当日は参加していない生徒と親たちが観客です。演技が抜群にうまい子がいて驚かされましたが、歌はソロも合唱も調子はずれ多数(笑)。でも生徒たちも先生もとっても楽しそうで、観客から大喝采を浴びて幕を閉じました。

スポーツに至っては、学校対抗のネットボール(バスケットボールのルールに似たイギリスで盛んなゲーム)大会があったとき、ちょっと関心を示した私も選抜メンバーに入れられる、というアバウトさです。

私は子供の頃から本当に運動が苦手でかけっこはいつもビリ、球技はどれも鈍いことこの上なし。なぜ私がどれくらいネットボールできるかできないか見ずに決めちゃうの?本当に役に立ちませんよ?とは思ったものの、当時はまだそれを上手く英語で伝えられずに試合当日を迎え、よくわからないうちにどこかの英軍キャンプ内の学校へ、試合のために一日がかりで行くことになりました。もちろんこの日も授業は進んでいます。

ネットボール中の生徒たち
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日本の学校のように、若いうちに全員で完成度の高いものを目指すというのは、子供の心身に無理がない限りはとても良いことだと思います。が、私が経験したイギリスの学校のように、緩くアバウトであることが許される環境だと「OKとされるストライクゾーン」がとても広く、だから他人にも寛容になれる。それが結果的に社会全体としては強みになるんじゃないかと思うのです。

イギリス首相の話からかなりスケールダウンした身近なエピソードになりましたが、こんなところも私が好きなイギリス社会の良さのひとつです。


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高島まき

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イギリス英語発音スクール British English House 代表。日本では数少ない正統派イギリス英語発音の専門家として定評があり、自身のスクール主...

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