中世の面影を色濃く残す町ライ(Rye)

前回の『ハウスオブポタリー』のルーツをご紹介した「ライ(Rye)で育まれた陶器作りのクラフトマンシップ」に引き続き、今回もライの町をご紹介します。

中世の町並みが保存されたライ(Rye)

ロンドンから高速道路M20に乗り南へ2時間程のドライブで人口5,000人の小さな町ライに到着します。
ライは中世時代に羊毛やお酒の密売人たちが、船で英仏海峡を渡り寄港する港として繁栄してきました。当時のままの姿を保存する町並みは訪れる私たちを中世時代へタイムスリップさせてくれます。旧市街に残る家々は歴史的建造物として指定を受けているため容易に改装することは出来ません。古い建物を保存するのは並大抵のことではないと推察します。
歴史の一部を担う心意気と責任感が無ければ暮らせませんね。

ライの町

中世時代、海に面していた町は海岸の後退により丘の上に取り残されました。現在3.2キロ離れた海と市街地は運河でつながっています。

ライの運河の桟橋に繋がれたボート

夏になると運河はヨーロッパから訪れる人々の船でいっぱいになります。多国籍の国旗がはためく船の上で、様々な言語で談笑している観光客たちの姿はライの夏の風物詩です。

ハイストリートへの入り口

ハイストリートへの入り口。この道の両サイドにお洒落なカフェやレストラン、アンティークショップなどが軒を連ねています。

壁にマーメイドストリートの標識が

マーメイドストリートは観光客が必ず通る道です。

ライの町中の丸い石を敷き詰めた石畳

この地方の海岸で採れるCobble(丸い石)を敷き詰めた石畳。
中世時代に荷を積んだ馬車や牛車が坂を滑らないようにとの配慮から作られました。美しく印象的な石畳は、観光客たちの絶好のフォトスポットとなっています。

1156年創業の老舗ホテル『マーメイドイン』(The Mermaid Inn)は、
〇〇で有名

ライの老舗ホテル、マーメイドインもこの道沿いにあります。

マーメイドインの玄関

お宿は1156年に創業。最初の建物は遺憾ながら火事で焼失してしまい1420年に再建され現在に至っています。(看板に書かれていますね!)

マーメイドインの玄関横に1420年再建の文字が

このホテルの地下には秘密の通路があり、中世時代に海から運河を渡って町に入った密売人たちは、この宿屋で集合し不法な商いをしていました。

マーメイドインの内部

お宿の内部。建具も天井も今の規格よりずっと低いことから、昔のイギリス人の身長が偲ばれます。冬の寒さ軽減のため窓は小さく配置されています。室内は暗く終日電灯が欠かせませんが、セントラルヒーティングや給湯設備は完備しており宿泊は快適でした。
実はこのお宿は幽霊が出ることで有名です。私がマーメイドインに宿泊したことを聞いた人々全員から”幽霊に会った?”と尋ねられました。残念ながら私は御目文字できませんでしたが、沢山の人が出会ったそうです。
それもこのホテルの魅力のひとつなのですね。

ランドゲートの幽霊ばなし

ライのランドゲート

もうひとつの幽霊話を紹介します。
14世紀にフランスの侵攻から町を守るため、ライには4ケ所のゲートが設けられました。写真は最後のひとつとなったランドゲートです。ここで古い人骨が発見されました。このひとつは教区教会の修道士だったそうです。彼はライの町に住む美しい娘に恋をして二人で駆け落ちを企てました。しかし事前に発覚し、彼らはランドゲートの傍で殺害されました。遺恨を持って亡くなったため、幽霊となって町を徘徊したそうです。
ランドゲートの前に住んでいる友人に”彼らに会った?”と聞いたけれど、残念ながら会えていないそうです。

古い街には沢山の幽霊話があります。イギリス人はこの手のお話が大好きなので私が興味を持って訪ねると、嬉々として話してくれます。古い建物と街並みは幽霊たちにとって格好の住処かもしれません。

ライでアンティークに浸る

ライのアンティークショップ

ライでしたいことの筆頭に上がるのがアンティークショップ巡りです。町全体がアンティークなだけあり古い品物を扱うお店も軒を並べています。価格もとてもリーゾナブルなので、つい買いすぎてしまうという難点もあります。

ライで開かれているフリーマーケットの様子

毎週水曜日の朝に開催されるフリーマーケット。

ライで開かれているカーブーツセールの様子

夏の風物詩、カーブーツセール。モノを滞留させず、積極的にリサイクルする試みです。
車のブーツ(トランク)に売りたいものを積んで、ピクニックがてら気軽に参加できるのでイギリス人に大人気です。一般の方からアンティークディーラーまで出店しているため、買い付けに行くときは見逃せないイベントとなっています。

こんな可愛いお店番もいます!

カーブーツセール会場内で犬がお留守番

古いモノを大切にする英国人たちは住居から家具、テーブルウェアに至るまで、何代もの人々の手を通るほど価値が増えると考えます。彼らは古き良きモノにはキャラクターが有ると言います。
手から手へと繋がれてきた品々に敬意を払い、それに付随するヒストリーを愛するのです。この様な謙虚な考え方に触れるたび英国文化の奥深さに感じ入ります。

荻野洋子

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英国留学中に体験した現地の暮らしに感銘を受け、1990年に自宅のある鎌倉山にイギリスのライフスタイルを発信するショップ、ハウスオブポタリーをオープン。ショッ...

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