イギリスの赤

私たちが毎日何気なく見ている景色には様々な色が溢れています。
色にはそれぞれ気持ちを引き上げる効果があります。例えば黄色やオレンジは視覚的にモノを美味しそうに見せるため食欲を増進させる色だと言います。反対に青や緑は静けさと安心を引き出す色とのこと。家のインテリアを考えるとき前者はキッチンやダイニングに、後者は寝室や玄関ホールなどに使うと効果的だと言われます。
では赤はどうでしょうか? 

ロンドン名物のひとつ、バッキンガム宮殿の近衛兵たちの赤のユニフォームは誰でも目にしたことがあると思います。勝利のシンボルカラーである赤を纏うことで、国王を守る強い意志と気概が感じられます。

イギリス人たちの赤の使い方は絶妙です。日照の少ない北国の暗い景色の中でひときわ目立つ赤は元気の象徴。皆さんがイギリスで必ず目にする赤をもう一度確認してみましょう。

ロンドンの地下鉄(アンダーグラウンド)駅のサイン

1つ目は地下鉄のマーク。絶対に見過ごすことのない赤のマークはロンドンのシンボルといっても過言ではありません。ミニマムでスタイリッシュなデザインは街のアクセサリー的役割を担っています。

街中を走るロンドンタクシーと2階建てのロンドンバス

2つ目はダブルデッカー。赤いバスもロンドンのシンボルのひとつです。周囲の建物がシックなためバスは移動しながら景観を明るく見せてくれます。

歩道に設置された赤いポスト

3つ目はロイヤルメールの郵便ポスト。深めの赤を使ったポストは街頭のインテリアにもなっています。お洒落な佇まいを見るたびにイギリスが優れたデザインを生み出す国であることが再認識されます。

カフェの入り口の赤い鋼鉄の扉

街角には様々な色が溢れていますが基調色がレッドであることに変わりはありません。彼らの赤に対する情熱は暗い冬の時期が長い国ゆえの知恵から生まれたように思います。

半地下の室内に使われる赤の調度品

イギリスの家では半地下のお部屋をよく見かけます。地下部分なので夏は湿度が高く冬は底冷えがするなど上階より生活環境が劣っていました。しかしながら近年はセントラルヒーティングの進化に伴い快適に過ごせるスペースとして人気の部屋になってきました。

写真はロンドンのハムステッドにあるゲストハウスの一室です。ベースメントフラットのため上階のお部屋よりリーゾナブルなお値段で宿泊できると聞き早速お借りしました。

ゲストハウスの一室、ロールカーテンやベッド横の棚がダークレッドでアレンジされている

室内には赤がポイントカラーとして様々な形で配置されていました。ポストやダブルデッカーと同様のダークレッドが品よく目に映りアットホームな雰囲気を作っています。
この赤のお蔭で心楽しく滞在できました。

オフィスの壁に使われる赤

また、赤はやる気を起こさせるカラーだとも言います。元気を導き気分を高揚させる効果があるためオフィスでも大活躍する色となっています。

ソファに置かれた赤いクッションがワンポイントの室内

友人の家で見た赤。色を抑えたインテリアの中でたった一つの赤いクッションが部屋を暖かく見せていました。この赤が無かったら部屋は寒々しく見えそうです。赤は目立つ色なのほんの少しでも効果的である良い例だと思います。

四季が明確に訪れる日本では自然の色に協調するアースカラーを主体にインテリアを考えがちです。英国人が使いこなす赤を様々な形で取り込んでみてはいかがでしょうか。これから冬に向かう季節。日々の暮らしの中に元気な赤を加えて暖かく心楽しく過ごしましょう。


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荻野洋子

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英国留学中に体験した現地の暮らしに感銘を受け、1990年に自宅のある鎌倉山にイギリスのライフスタイルを発信するショップ、ハウスオブポタリーをオープン。ショッ...

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