転校早々に受けた英語発音の洗礼：強い息

ドイツのブリティッシュスクール

前回（”ドイツのブリティッシュスクールで過ごした高校生活”）お話ししましたとおり、私が15歳からの3年間通ったドイツのブリティッシュスクールは英軍ベースキャンプの子供たちのための学校だったので、外国人（非イギリス人）比率は限りなく0%に近い環境でした。生徒数1,000人以上の中で日本人は妹と私のみ。ドイツだったのでドイツ人とイギリス人夫妻の子供が数名、あとは英国領だった香港やマルタ人で英軍に勤務している家庭の子供たちが数名。というわけで、ドイツに住んでいながら学校にいる日中は完全にイギリス社会にいたため、高校の3年間はむしろイギリスで過ごしたかのような気持ちになっています。

さて登校初日、右も左もわからずホームルームの教室に連れて行かれました。前回お話しした “Yes, sir” “Yes, ma’am”という返事をする出欠をとる時間です。それが終わると授業開始。科目ごとに教室が違うので、クラスの友達が連携して順番に各部屋に案内してくれました。

選択科目の美術のクラス

これを一体どうするのでしょうか？先生は、外国人である私は英語が全く分からないと思っていらしたようで、ただひたすら２つの単語だけを繰り返します。

“Peg. Pattern.” （洗濯バサミ。パターン。）

日本語にはない「強い息」を使う発音

というわけでなんとか先生の意図はわかりましたが、その時の先生のPの発音がものすごく強かったことを今でも覚えています。
これをお読みの皆様、よろしければ日本語のパ行「パピプペポ」を普通に声に出してみて下さい。Pの音は強く出ませんよね？唇もさほどピッタリ閉じなくても言えますよね。
でも英語のPの発音は、唇をピッタリと閉じている時すでに中から息で押そうとしていて、堪えきれなくなった息が唇で破裂する、という出し方をしますので、日本語のパ行とは比べ物にならない全く違う音になるわけです。当時は考える余裕もありませんでしたが、今思えばこの時、日本語にはない「強い息」という英語発音の基本をものすごくデフォルメした形で聞いていたのでした。

美術の先生がひたすら “Peg, pattern, peg, pattern”と、たまたまPで始まるこの二つの単語だけを繰り返し言っていらした姿を想像すると「ウソでしょう？」とおかしくなりますが、また同時に、英語ができない外国人という普段は遭遇しない生徒が入ってきたため色々と考えてくださっていたのだろうなあと、今さらながら感謝しています。

---