写真で巡るイギリスの旅
~シングルモルトの島々《前編・アイランズ》~
今回は、スコットランドの逸品”スコッチウイスキー”、シングルモルトウイスキーの蒸留所を中心に、私の旅の写真をもとにご案内することとしよう。
スコッチウイスキーの6つの産地と言われるアイランズを前編で、また後編はアイラ島の蒸留所めぐりを楽しんでいただきたい。
”スコットランドのミニチュア版”アラン島(Isle of Arran)
スコットランド西部に点在する島々の一番南に位置するのがアラン島。変化に富んだ豊かな島で北に800mの山、南部は穏やかな田園風景が広がるこの島は、しばしば「スコットランドのミニチュア版」と紹介されている。グラスゴーから近く、日帰りでアラン島に観光客が訪れているようだ。
20世紀最後に創設された『アラン蒸留所(Arran Distillery)』
1995年創業のアラン蒸留所は、20世紀最後に創設された蒸留所として知られ、比較的新しい蒸留所のひとつである。19世紀には、「密造酒のブルゴーニュ」とまで言われたアラン島だが、時代の波に逆らえず1837年の閉鎖された「ラッグ蒸留所」以来、約150年の間、この島にウイスキーの蒸留所は無かった。
1995年創業のアラン蒸留所は、20世紀最後に創設された蒸留所として知られ、比較的新しい蒸留所のひとつである。
その蒸留所のビジターセンター開設(1997年8月9日)では、エリザベス女王陛下が序幕を行ったというエピソードが残っている。
白い建物が真新しい印象を与えてくれる蒸留所で、撮影に来たことを告げると、わざわざ老人のガイドが付いてくれた。ポットスチルなどひと通り見た後、最後に案内されたシングルモルトの眠っている蔵で老人がある樽を指差してくれた。
よく見ると、その2つ並んで横になっている樽には、それぞれウィリアム王子とヘンリー王子の名前が記されていた。この樽の中で熟成しているシングルモルトは、将来記念日にプレゼントされるそうだ。
》アラン蒸留所:https://www.arranwhisky.com/
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スコットランドの西、南北に長く伸びるキンタイア半島(Kintyre)
ポールマッカートニー&ウィングスの楽曲「マル・オブ・キンタイア」は、このスコットランドの西部に位置しているキンタイア岬に敬意を表したものと言われ、スコットランドの民謡をアレンジした美しいハーモニーの曲だ。
幅18キロほどで約70キロの細長い形をしている キンタイア半島の中心地は、南部にあるキャンベルタウンだ。キャンベルタウンには、たびたび海から霧が立ち込めてくる。霧は奇妙なほどに街中にある蒸留所の裏通りの倉庫に立ち込め、個性的なウイスキーづくりに貢献している。キンタイア半島のキャンベルタウンは、シングルモルトフアンたちが歴史ある蒸留所に訪れるだけの静かな港町となっているようだった。
愛好家が選ぶモルトウイスキートップ10のひとつ『スプリンングバンク蒸留所(Springbank Distillery)』
この街にスプリングバンク蒸留所がある。 先に訪れたアラン蒸留所のデビッドさんに、このスプリングバンク蒸留所へ の紹介をお願いしてあったので、スムーズに中を見学することができた。現れたガイドは50歳ぐらいのドイツ人でウイスキーづくりに興味をいだき、ドイツからわざわざ勉強を兼ねて働きに来ていた。シングルモルトはドイツでも人気があり 愛飲家が増えていると教えてくれた。
スプリングバンクのウイスキーは中程度にピート焚きした麦芽を使い、合計2回半の蒸留行程をだどるという。海の塩、オイリーさ、ココナッツのようなフレーバー、複雑さを伴うスプリングバンクは、ほとんどすべてのウイスキー愛好家が選ぶ上位10のモルトの中の1つに入るウイスキーである。
》スプリンングバンク蒸留所:http://springbank.scot/
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Springbank (スプリングバンク) ヘーゼルバーン 10年 [ ウイスキー イギリス 700ml ]
¥19,900
ニッカウヰスキーが学んだ街、キャンベルタウン(Campbeltown)
キャンベルタウンには20世紀初頭たくさんの蒸留所があり繁盛していたという。ニューヨークとの間に蒸気船の定期航路もあり、輸出用のウイスキーもたくさん作られていた 。日本のウイスキーの発展に尽くしたニッカウヰスキーの竹鶴政孝氏は、このキャンベルタウンのヘイゼルバーン蒸留所でウイスキー作りを学んだ 。しかし1930年には閉鎖された。今ではスプリングバンクを含め2箇所の蒸留所だけになっており当時の面影はない。
ヒトよりも鹿の多い島、ジュラ島(Jura Isle)
アイラ島のアスケイグフェリー乗り場から東に1キロにも満たない近さにジュラ島が横たわっている。10台も乗ればいっぱいになる小さなフェリーに乗って、ほんのわずか10分程度の船旅だが、この2つの島の間にある海峡は海流が激しく渦を巻いていた。ジュラ島は南北に約38キロ、東西に約13キロの細長い形をしている。「ジュラ」とは鹿を意味する北ゲルマン語群の言葉からきていると言われている。実際200人にも満たないほどの人の数よりも、野生の鹿の数の方が多いそうだ。
所長自らが案内してくれた『ジュラ蒸留所(Isle of Jura Distillery)』
島の南のクレイグハウス村にジュラ蒸留所がある。海沿いに立つ比較的新しい蒸留所で内部の撮影をしたい旨をつげると、こころよく許可され所長自らが案内してくれた。
撮影した後にも実に親切に何か他に撮りたいものがないのかと聞いてくる。ならば”グラスの中にウイスキーを入れて香りを嗅いでいるシーンを”とお願いすると、鼻をグラスに近づきすぎて咳こむほどに協力してくれた。
わずか2時間ほどの滞在だったが充実した取材が出来た。
非常にライトでピートの煙の香りを漂わせているが、幾分シェリーの甘さもある。甘い干し草のようで、蜂蜜のような甘いクリーミーさが口の中に広がっていく。
》ジュラ蒸留所:https://www.jurawhisky.com/
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アイル オブ ジュラ 10年 700ml
¥3,333~
ヘブリディーズ諸島最大のスカイ島(Isle of Skye)
スカイ島は「翼のある島」と呼ばれ、島が翼を広げたような形をしている。ヘブリディーズ諸島最大の島である。島にはゲール語と英語の併記された標識があり、今でも2つの言語が使われていた。自分たちのルーツに、今でも誇りを持っているようだ。
昔ながらの冷却槽にこだわる『タリスカー蒸留所(The Talisker Distillery)』
スカイ島には、島で唯一のタリスカー蒸留所がある。
タリスカーをテイスティングすると、こめかみがカッと熱くなる。舌の上で爆発するという表現が使われている。
蒸留所は島の西側、ハーポート湖(Loch Harport)添いの浜辺にある。ここでいう湖(ロッホ・Loch)は、実際には海につながった入江だ。
タリスカーのウイスキーは、アイラウイスキーやベルベットウイスキーに匹敵する独自の地位を保ったスタイルであると格付けされていた。1928年には、それまでの3回から2回の蒸留製法に転換しているが、モルトウイスキーの特徴は残されたままだ。タリスカーは「ワーム・タブ」と呼ばれる昔ながらのコイル状の冷却槽を使用している。これは近代的な冷却に比べて時間もかかるが、より充実したフレーバーを生み出すことで知られている。
タリスカーのウイスキーは、明るい琥珀色がかった赤でスモーキーさが強調されている。まろやかで、海藻をイメージさせるような風味が口に広がる 。
》タリスカー蒸留所:https://www.malts.com/en-gb/distilleries/talisker
マル島(Isle of Mull)と、その西に位置する小島アイオナ島(Iona)
インナー・へブリディーズと呼ばれる南西部の島々の中で2番目の大きさの島、マル島。
マル島は、その西に位置するアイオアナ島へ行く人の足がかりとなっている。
アイオナ島は長さ5.6キロほどの小島だが、故郷のアイルランドを追われた聖コルンバがたどり着き、キリスト教布教の拠点としたことから、スコットランドにおけるキリスト教の中心地と言われている。聖コルンバが修道院を建てたのは西暦563年。この小島から、スコットランド全土にキリスト教が広まった。
ウイスキーの蒸留技術も、このころ一緒に到来したと言われている。
マル島にはトバモリーという港町があり、それが地元蒸留所の名前になっている。ゲール語の意味は「安全な港」として知られている。
閉鎖と再開を繰り返す歴史の『トバモリー蒸留所(Tobermory Distillery)』
トバモリー蒸溜所の起源は1795年まで遡る。その歴史は断続的であり、また所有者は数多く変わってきた。幾多の蒸留所閉鎖と再開を経て、現在は1993年のバーンスチュアート社による再開後の経営で、蒸留所名の”トバモリー”と、”レダイグ”の2種類のモルトウイスキーブランドを製造している。
“トバモリー”は、大麦自体を全くピート乾燥していない麦芽を使用している。一方”レダイグ”は、ピート炊きした麦芽を使用する。
“トバモリー”は、かすかにピートを感じ、ミントのよう甘い気付け薬を思わせる。”レダイグ”は、甘くスモーキーさの中に強いピーティーさと、その中にあるほのかな海の香りを感じさせるものだった。
》トバモリー蒸留所:https://tobermorydistillery.com/
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トバモリー 12年 46.3度 700ml
¥5,780~
レダイグ10年 700ml
¥5,612~
後編では、スコッチのもう一つの聖地「アイラ島」のシングルモルトウイスキーを、その蒸留所とともにご紹介しているので、こちらもご覧いただきたい。