コーヒー&ウォルナッツのお話しとレシピ

お皿にのったイギリスの定番ケーキ「コーヒー&ウォルナッツ」

イギリスの定番ケーキ「コーヒー&ウォルナッツ」

ここ数年、日本でも少しずつイギリス菓子の認知度が上がってきました。ヴィクトリアスポンジケーキにキャロットケーキそしてレモンドリズルケーキなどは、イギリス菓子を謳っているお店でなくとも、カフェやベイカリーなどでよく見かけるようになりました。こういったケーキの他にもシンプルで美味しいお菓子が山のようにあるので、他のイギリス菓子への興味もこれから徐々に広がっていくはず、と思っています。

例えば、イギリスでヴィクトリアスポンジケーキと並んでポピュラーな「コーヒー&ウォルナッツケーキ」。イギリスではどこのティールームやカフェに行っても、マーケットのストールやスーパーのケーキコーナーを覗いても、必ずと言っていいほど置いてあり、家庭で手作りする人も少なくありません。
これはその名のとおり、コーヒーとクルミ味。日本人にとっても、馴染みのある風味ですから、初めてでも違和感なく受け入れてもらえることでしょう。

「コーヒー&ウォルナッツ」はどんなケーキ?

コーヒー色のスポンジケーキ2枚の間にバターと粉砂糖で作るイギリス風のバタークリームがサンドしてあり、上にも同じクリームが塗られています。スポンジの配合はヴィクトリアスポンジケーキと基本的には一緒で、粉と砂糖と卵とバターがほぼ同量。そこにインスタントコーヒーと刻んだクルミをたっぷり入れて、サンドイッチティンと呼ばれる浅いケーキ型ふたつに分けて生地を焼きます。くるみの食感が程よいアクセントになり、食べ応えも充分。しっかり甘いのですが、コーヒーとクルミの苦みが効いているため、大きな一切れも最後まで美味しくいただけます。
とにかく紅茶がすすむケーキです。
紅茶のお供にコーヒー風味のケーキとはちょっと不思議な気もしますが、コーヒーではなく紅茶と合わせることによって、スポンジやバタークリームに入ったコーヒーの香りがより感じられ、奥深い味わいになります。コーヒーを飲みながらだと、折角のケーキのコーヒー風味がかき消されてしまいますから。

コーヒー&ウォルナッツ作りに欠かせなかった「キャンプコーヒー」

その素朴な見た目のせいか、インスタントコーヒーの風味のせいか、初めて食べてもどこか懐かしい、ノスタルジー漂うコーヒー&ウォルナッツケーキですが、このケーキと切っても切れない間柄にあるレトロな食材があります。
それがCamp coffeeというコーヒーエッセンス。

ホールのコーヒー&ウォルナッツケーキと、背景にキャンプコーヒーのボトル

今でこそ、多くの人たちはインスタントコーヒーを使いますが、今でもこのコーヒーエッセンスを使ってコーヒー&ウォルナッツを作る人たちが一定数います。
レトロなパッケージがトレードマークのキャンプコーヒー、なんと発売開始は150年近く前のこと。
正確にはチコリコーヒーとコーヒー、そしてお砂糖を濃縮した液体で、お湯で割ったり、冷たいミルクを入れたりして、コーヒードリンクを作ります。1950~60年代まではとても人気がありましたが、1970年代にフリーズドライのインスタントコーヒーが現れてからはそちらにすっかり座を奪われ、今はスーパーでも、もっぱらお菓子材料コーナーに置かれるのみ。もし今度イギリスのスーパーを訪れる機会があればお菓子材料売り場を覗いてみて下さい。大きめのスーパーならきっとこのキャンプコーヒーシロップが見つかるはずです。

キャンプコーヒーのラベルの裏側。。

今でこそ製菓材料のように扱われているこのキャンプコーヒー、実は世界初のインスタントコーヒーと言われています。
1876年、グラスゴーのPaterson Company という会社が、Gordon Highlanders(スコットランドの歩兵部隊)のインド出征に際して、現地で簡単に飲めるコーヒーが欲しいというリクエストされ開発したのだとか。
ですから、よーく見ると、ラベルにはキルトを履いたスコットランドの兵士とターバンを巻いたインドの兵士が二人コーヒーを飲んでいるという図柄になっています。
いかにも楽し気な雰囲気が漂っていますが、実はこのラベルの裏にはひと悶着が。
昔のラベルはスコットランド兵士が座ってコーヒーを飲んでいる脇に、インド人がトレーにキャンプコーヒーをのせて召使のように立っているという構図でした。それが差別的だという批判を受け、インド人兵士の手からトレーが消えます。けれど、彼は立ったまま、スコットランド兵士は腰かけている、という構図はそのまま。結局批判は再度起こり、近年になってようやく今の、二人並んで座り仲良くコーヒーを飲む、という絵柄に落ち着いたというわけです。

異なるイラストが描かれたラベルのキャンプ&コーヒーボトル

そのうち、二人の手にはコーヒーだけではなく、お皿に載ったコーヒー&ウォルナッツケーキが描かれているかもしれませんね。なにせこのキャンプコーヒーを買う人の大半はこのケーキを作るためと言われていますし、二人の兵士の仲の良さ、立場の平等さを表すにはケーキは最適なメタファーですから。

さぁではそろそろ、笑顔がいっぱい広がるコーヒー&ウォルナッツケーキを作ってみましょうか。
完成の暁には、是非たっぷりの紅茶と共に召し上がれ☆

コーヒー&ウォルナッツケーキ<レシピ>

Coffee and walnut cake

~コーヒー&ウォルナッツケーキ~

直径20cmサンドイッチティン二つ使用
※サンドイッチティンがない場合は普通の丸いケーキ型2台使っても同様に焼けます

下準備

*型に薄くバターを塗り、底にはオーブンペーパーを敷き、側面には強力粉をはたいておく
*材料を全て室温に戻しておく
*オーブン予熱170℃

材料

<スポンジケーキ>

  • 無塩バター___ 225g
  • グラニュー糖___ 225g
  • 卵___ 4個
  • 【A】
    ┏ 薄力粉___ 225g
    ┗ ベーキングパウダー___ 小さじ2
  • 【B】
    ┏ インスタントコーヒー___ 大さじ1 1/2
    ┗ お湯___ 大さじ1
  • くるみ___ 50g

<コーヒーバタークリーム>

  • 無塩バター___ 100g
  • 粉砂糖___ 200g
  • 【C】
    ┏ インスタントコーヒー___ 小さじ2
    ┗ お湯___ 小さじ2

<飾り用>

くるみ___ 適量

コーヒー&ウォルナッツケーキの作成シーン

作り方

  1. Bのコーヒーとお湯を混ぜて溶かし、くるみは細かく刻みます。
  2. バターをボールに入れ、グラニュー糖を数回に分けて加えながら、白っぽくふんわりするまでホイッパーでよく混ぜます。卵をときほぐし、少しずつ加えながらさらによく混ぜます。
  3. Aを合わせてふるいながら②のボールに加え、ゴムベラで混ぜあわせます。軽く混ぜたところで①のコーヒー液とくるみを加え、粉っぽさがなくなるまで合わせます。準備した型2つに等分に入れ、中央を少しくぼませるようにならします。
  4. 170℃のオーブンで25分ほど焼きます。表面を押して弾力があれば焼きあがり。
    粗熱が取れたら型から出して網の上にのせて冷ましておきましょう。
  5. <コーヒーバタークリーム>
    Cのコーヒーとお湯を混ぜて溶かします。
    バターに粉砂糖をふるいながら加え、コーヒー液も加えて、ゴムベラで混ぜます。次にハンドミキサーで全体がふんわりするまでよく撹拌します。
  6. 冷めたスポンジにクリームの半量をのせてならし、もう一枚のスポンジを重ね、
    残りのクリームを上に塗ります。くるみを飾ってできあがり。

安田真理子

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仙台市出身 宇都宮にてイギリス菓子教室「Galettes and Biscuits(ガレットアンドビスケット)」を主宰。イギリスの暮らしに息づくお菓子の味・...

プロフィール

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