イギリスのマーマレードの世界
~イギリスのホームメイドのマーマレード Part2~
サマセットのダンスターにあるB&Bで習ったマーマレード
イングランドの南東部、サマセット州にある、小さな村ダンスター。そこで「コニガーハウス」というB&Bを営んでいたビディさん。彼女はベイキングとマーマレードが上手な人です。今はB&Bは営んでいませんが、その当時、宿に着くと、まずはティータイム、ビディさんの手作りのスコーンやお菓子と紅茶が用意されていて、旅の疲れも癒されるのでした。
そして彼女は、ベイキングだけでなく、マーマレードを作るのも上手。村で開催されたコンテストでも彼女のマーマレードはとてもいい成績で、賞品は村でお買い物ができるチケットだったと話してくれたものでした。
ビディさんからセヴィルオレンジで作る、とても美しいマーマレードの作り方を教えていただきました。
オレンジの果皮をスライスして作るマーマレードの作り方
セヴィルオレンジの果汁を絞り、果皮を薄くスライスします。オレンジの白い綿の部分と種は、ペクチンを抽出するために、モスリンの袋に入れて一緒に煮ます。その後、モスリンの袋は取り除き、砂糖を入れて仕上げる方法。
イギリスでもっとも一般的な作り方です。
分量はセヴィルオレンジ1.2kg、レモン2個、水3.2リットル、グラニュー糖2,500g。これはセヴィルオレンジで作るトラディショナルなマーマレードの分量です。苦みと酸味のあるセヴィルオレンジの場合、低糖度よりは、しっかりとした甘さのマーマレードの方がおいしいです。
大量の砂糖を加える事で、保存性も高まります。イギリスではマーマレードは保存食ですから2年ぐらい保つように、しっかりと甘く作ります。
日本の柑橘でマーマレード作る時は、柑橘の種類によって、水の量を調整し、砂糖の分量も控えめにします。
セヴィルオレンジとレモンの下準備
まずはマーマレードに最適の品種、セヴィルオレンジとレモンを準備。それぞれを半分にカットして、果汁を絞ります。
絞り終わった果皮は、大きさを整えて、薄くスライス。ビンの中に浮かぶオレンジのピールもおいしさのひとつ、ここは丁寧に厚みと長さを揃えます。
さて、マーマレードの中のオレンジの果皮(ピール)の厚みにも、いろいろなサイズがあるのをご存知ですか?
例えば、果皮の幅が8ミリ程度は厚切り(Thick cut)、4.5ミリがミディアムカット(Midium cut)、1.5ミリ程がファインカット(Fine cut)というように分けられています。ちなみにマーマレードのビンにThin cutと書かれていれば、果皮は薄切り、Chunkyは分厚い、というように、イギリスのマーマレードには、オレンジの果皮のサイズにもこだわりがあります。厚くなるほど、果皮の味わいが強くなりますので、これは好き好きですね。私は、やはりオレンジの果皮は薄い方が好みです。
モスリンの袋とは?
イギリスのマーマレードのレシピを見ると、よく「モスリンバッグ」というものが出てきます。
モスリンとは、ガーゼのように少し目が粗い材質のdcdf布です。イギリスの保存食では、このモスリンを使って、果汁を濾したり、マーマレードを作る時に使います。日本では、ガーゼで代用できます。
オレンジを煮て、マーマレードに仕上げる
ビディさんのところでも、プリザービングパンを使ってマーマレードを作りました。
鍋に果汁と水とオレンジの果皮を入れ、モスリンの袋を木製のしゃもじにひっかけて、火にかけること1時間半から2時間。モスリンの袋は鍋の縁から垂らしてもよいのですが、長いしゃもじにかけるのは、ビディさんのアイデア。そうすると、モスリンの袋が常時鍋の中で浮いたようになりますね。
果皮が完全に柔らかくなるまで、中火で沸騰させながら、しっかり煮るのがポイントです。
果皮が柔らかくなったら、モスリンの袋を取り出します。この袋の中にはマーマレードを固まらせるペクチンがたくさん含まれているので、2枚の皿で挟んで、絞ります。
砂糖を入れたら、ぶくぶく沸騰させます。大体15分から20分ほど。
鍋に温度計を時々差し込んで、145.5℃が目安です。そして、事前に小皿を冷凍庫で冷やしておいて、マーマレードの熱い液を注ぎ、冷凍庫に戻す。その後取り出して、マーマレードの液にしわが寄れば、マーマレードが固まったという出来上がりのサインです。これをリンクルテストといいます。火を止めて、アクを取って、5分程放置して、そしてビンに詰めます。
イギリスと日本の違い、あれこれ
マーマレードをビンに詰める前に、日本ではビンをお湯に入れて沸騰させて、煮沸消毒をします。
ところがイギリスでは、乾燥したビンをオーブンやレンジに入れて熱し、熱いビンにマーマレードを詰めます。これは日本とイギリスの風土の違いなんでしょう。
日本は湿気が高く水が豊富なので、煮沸消毒。イギリスは乾燥した気候、そのうえキッチンにオーブンがあるので、乾いたビンを130度程度のオーブンに入れて消毒。文化の違いを感じますね。ビディさんは、もっと簡単な方法として、レンジでビンを1分程温めていました。ただし、レンジでビンを温める時は、ビンに水気が残っていると、割れる危険性があるので要注意です。
マーマレードの上に被せてあるのは、ワックスペーパー。マーマレードやジャムなどの表面が空気に触れず、新鮮さを保つように、ワックスペーパーを被せ、金属のフタをします。しかしマーマレードの場合はワックスペーパーを被せなくても問題はありません。
キッチン道具の楽しみ
イギリスのキッチン用品の店に行くと、ビンに貼るとてもかわいいラベルが揃っています。そして、温度計や木製のスプーン、ジャムやマーマレードを詰めるのに便利なジャムファンネル(Jam Funnel/漏斗)など、欲しくなるものばかりです。イギリスにはLAKELANDという、キッチン・家庭用品を売っているお店があります。湖水地方のウィンダミア駅の横に本店がありますが、イギリス各地に支店がありますので、見かけたら、ちょっと立ち寄るのも楽しいものです。
マーマレードは何といっても手作りが一番
ジェリーの中にオレンジの果皮(ピール)が見える、ビディさんのマーマレード。ビター&スイートな味わいで、トーストを何枚も食べてしまいそうです。
メアリーさんとビディさん、2通りの作り方をご紹介しました。
前回お伝えしたメアリーさんの方法、セヴィルオレンジを丸ごと煮てから果皮をカットするマーマレードは、味は濃厚ですが、マーマレードが濁りがち。ビディさんのマーマレードはとても美しいのですが、その分水分が多いので、メアリーさんのマーマレードに比べると、濃厚さがやや足りない感じもありますが、これは好みの問題。
私は、どんな感じに仕上げたいかを考えて、2つの方法の使い分けをしながらマーマレードを作っています。
マーマレードは大量生産よりは、少量ずつの手作りがおいしい、だから私もプリザービングパンでひと鍋ずつ作っています。
作り手によって味が変わるマーマレードに私も魅了された1人です。そんな不思議なマーマレード、あなたも一度作るとハマってしまうかもしれませんよ。
★★絶賛、マーマレード販売中!★★ EnglishKitchenのYahooショッピングサイトで常時販売しています また、『UK Walkerオンラインストア』でも取り扱わせていただく予定です |