≪Room to Garden≫
室内と庭を繋ぐ空間”コンサーバトリー”

室内と屋外の両方の機能を備えた贅沢なスペース”コンサーバトリー”

家の設計を考えるときクライアントのライフスタイルに寄り添ってプランを立てますが、もう一つ心がけていることは必ず非日常的な楽しい空間を取り込むことです。コンサーバトリーはその良い例だと思います。室内と屋外の両方の機能を備えた贅沢なスペースは近年日本の家にも積極的に取り付けられるようになりました。

発祥の地、英国でどのように誕生したのか、またイギリス人の暮らしと密接なコンサーバトリーをご紹介します。そして最後は日本で設置した施工例を見ながら注意点をお話します。

ハウスオブポタリーの”コンサーバトリー”

ハウスオブポタリーの玄関から見えるコンサーバトリー

ハウスオブポタリーのコンサーバトリー。

コンサーバトリーの内部は、ハウスオブポタリーの食事やドリンクを楽しめるスペースに

わずか5.5畳ほどのスペースですが天井が無いため狭さを感じません。晴れの日はもちろんのこと曇りや雨の日も明るく過ごせる快適な空間です。
庭につながるもう一つの部屋として暮らしの中に取り込まれているコンサーバトリー。
発祥の地イギリスで今も現役で活躍する建物を訪ねてみましょう。

ロンドンで気軽に訪ねられるコンサーバトリー

ロンドン郊外のハムステッドヒースに建つケンウッドハウスの外観

ロンドン郊外のハムステッドヒースに素敵なオランジェリー(コンサーバトリー)を備えた邸宅、ケンウッドハウスがあります。18世紀半ばに当時のオーナーだった第3代ビュート伯爵ジョンスチュアート卿が南から持ち込んだ植物のために造ったそうです。

日差しが差し込むケンウッドハウスのコンサーバトリー内部

プラントハンターが大活躍した時代のエレガントな建物。当初は地中海地方から届いたオレンジの木を保管するための温室だったので、Orangery (オランジェリー)と呼ばれ貴族の間で流行しました。
初めて建てられたのはロンドンのケンジントンパレス。当時の女王、クイーンアンはオランジェリーの中で様々なお客様をもてなしたそうです。明るく開放的な空間がおもてなしの場所としてピッタリだったこと頷けます。
こちらは現在オランジェリーという名前のお洒落なレストランになっていますので、誰でも当時の優雅な温室の様子を体験できます。その後オランジェリーはオレンジの木だけでなく様々な植物を保管する(Conserve)温室になりました。コンサーバトリー(Conservatory)の名前の所以です。

ビクトリア時代の”コンサーバトリー”

コッツウォルズ地方の友人宅のコンサーバトリー

コッツウォルズ地方に住む友人宅で大活躍しているコンサーバトリー。ビクトリア時代に造られた大きなガラスの温室です。当初は植物や農作物のための保存庫だったとのこと。友人たちがこの家を購入したとき室内から直接入れるように改修しました。

コッツウォルズの友人宅のコンサーバトリー内部、ソファやテーブルも置かれくつろげるスペースに

現在明るいリビングダイニングとして活用されています。日照時間が日本より短いイギリスで1年中明るく雨の日も空を眺めながら過ごせるナチュラルな空間はイギリス人の暮らしを豊かにしてくれるツールです。

コンサーバトリー下部につけられた窓を開閉するためのお洒落な窓金物

窓枠の下端についているアイアンの金物を回して窓の開閉をします。とてもシンプルな構造ですが機能とデザインが見事に一帯になっている英国らしい窓金物に感心しきりです。庶民の暮らしが豊かに変化してきたビクトリア時代を垣間見ました。

日本で造る”コンサーバトリー”その注意点とは?

日本の家屋に建てられたコンサーバトリーの外観

英国と気象条件の異なる日本でコンサーバトリーを造るとき一番気をつけたいことは設置場所の方位です。
新築の設計段階で取り付けることが決まっている場合に私がお薦めするのは、北又は東向きです。夏の激しい暑さや直射日光を避け終日安定した光を室内に落とせる北側と東側がベストの位置だと思います。暑くなる南と西側はお薦めではありません。

しかしながら日本の家屋は南側に建物を向けて建てることが多いため既存の建物に後からコンサーバトリーを付ける場合は必然的に南向きに付けなくてはなりません。その場合はシェードで夏の激しい陽射しを遮ること、日陰を作る落葉樹を植えること等、工夫をすれば快適に過ごせる空間になります。

屋根をクリアガラスで建てられたコンサーバトリー

写真は北側に設置した施工例。直射日光が入らず室内が暗いためリビングの続きに屋根がクリアガラスのコンサーバトリーを設置しました。これによって安定して明るい理想的な部屋が出来ました。

長野県の原村に建つワンズワースの”コンサーバトリー”

ワンズワースの外から眺めたコンサーバトリー

最後にご紹介するのは長野県原村のホテル、ワンズワースのコンサーバトリー。
後付けで建築するとき屋根の形は既存の建物によって決まります。ワンズワースの場合、2階の居室の窓ぎりぎりまで屋根を上げても勾配が緩やかなためシンプルな片流れになりました。また冬季の積雪のことを考慮しガラスでなく雪の重みに耐えられる屋根材で葺いてあります。

ワンズワースのコンサーバトリー内部

中央につけたトップライトのお蔭で平凡な形状の屋根が非日常的に見えます。

ワンズワースのコンサーバトリー、光が差し込む連立させたガラス屋根の下

連立する窓とトップライトにより内部は明るく快適です。

庭へ続くもう一つの部屋、コンサーバトリー。室内と外をつなぐ半屋外的スペースはそれぞれの良い特徴を引き出し合う贅沢な空間です。かつてクイーンアンがオランジェリーでゲストとの時間を楽しんだように私たちもここに居るだけでお客様との会話が弾みそうです。
暮らしを豊かに楽しくしてくれるコンサーバトリー。優しい暮らしの必需品です。

《お知らせ【ENGLISH SUMMER FAIR 2023】》

長野県の八ヶ岳中央高原、原村のカントリーマナーホテル”Wandsworth(ワンズワース)”で、
2023年8月25日(金)13時~8月27日(日)15時の3日間開催されます。
暑さが続く都心を離れ、ぜひこの機会にコンサーバトリーをご覧になりにお越しください。
ハウスオブポタリーも英国アンティークと英国菓子で出店しています。
(UK Walkerもエマ・ブリッジウォーターのテーブルウェアで出店しています!)

詳細は“Wandsworth(ワンズワース)”サイトでご確認ください。

荻野洋子

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英国留学中に体験した現地の暮らしに感銘を受け、1990年に自宅のある鎌倉山にイギリスのライフスタイルを発信するショップ、ハウスオブポタリーをオープン。ショッ...

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