イギリス人に愛されるお菓子“ミスター・キプリング”
イギリス人に浸透するお菓子メーカー、ミスター・キプリング
1967年、食品店で簡単に買えるケーキとして売り出したのがミスター・キプリングのミニケーキやパイです。それまでは家庭で焼くか、ベイカリーで買うものだったケーキが、簡単に食品店、スーパーで買えるようになり、10年後にはイギリスで最大のケーキメーカーになりました。
2013年の調査ではその年、イギリスで10世帯の内6世帯がミスター・キプリングのケーキを買ったという結果が出ました。
あまりにも有名で、特に記事にすることもないほど気に留めていなかったミスター・キプリングのお菓子。でも考えてみると、手ごろな値段で、簡単にどこでも買えるこのお菓子は60年近くイギリスの食文化の大事な役割を果たしてきたのです。
プラチナジュビリーで登場したフェルトのミスター・キプリング
そんなミスター・キプリングを改めて考えるきっかけとなったのは、先月バッキンガム宮殿を見学した時でした。
宮殿に入館する前に「イギリス伝統のピクニック・フード」と題して6メートルのテーブルにはピクニック用のお菓子、料理が並べられていました。それらは本物のようによく出来てはいますが、実は女王ご即位70周年を記念したあるイベントのためにテキスタイル・アーティストであるルーシー・スパロウさんがフェルトで作った作品です。
そこで目に留まったのがミスター・キプリングのお菓子でした。昔は、スーパーで頻繁に買っていましたが、ここ何年もの間ご無沙汰していたお菓子です。何でも甘さ控えめの食べ物が好まれる時代です。次第にミスター・キプリングも私の生活から遠のいていきました。
イギリス人にとっての幼いころの思い出、ミスター・キプリング
多くのイギリス人にとっては、ミスター・キプリンは単にお菓子というよりは幼い頃の思い出そのものです。ケーキを作る時間のない小さな子を持つお母さんたちにとっては、ミスター・キプリングは強い味方でした。
実はミスター・キプリングがこれほどイギリス人に愛される理由がもう一つあります。それはテレビのコマ―シャルから流れる「Mr. Kipling, Exceedingly Good Cakes.」というスローガンです。低い男性の声で流れるこの言葉を聴けば、お茶を淹れるためにお湯を沸かし始めたことも一度や二度ではありません。
そして近年このスローガンが企業の新しい販売作戦のために、使われなくなることが発表された時は、ちょっとした騒ぎになりました。「あのスローガンなしにはMr. Kiplingはあり得ない。あのスローガンがあってこそのMr. Kiplingだ!」と消費者は猛反対。そこで結局このスローガンは、それまで通り使われることになりましたが、生産者側は、このスローガンの陰に隠れた本当の意味を伝えています。
スローガンの裏側
「The Little Things that sometimes mean the most.」
素敵な言葉だと思いませんか?「小さなことが時には最も大きな意味を持つ。」
ミスター・キプリングの小さなお菓子が、一緒にいただくお茶を更に美味しくして、とても幸せな気分にしてくれます。
でもこの言葉は、お菓子に限らず、暮らしの中で多くの場合に当てはまることばではないでしょうか? つまり、すぐそこに幸せに感じられるものがあるのに、それに気がつかないことってよくありますよね。
ミスター・キプリングのいわれ
さて、肝心のミスター・キプリングという人物ですが・・・・
私はてっきりミスター・キプリングというケーキ職人が始めたケーキと思い込んでいました。ところが、実はメーカー側が作り上げた架空の人物だったと知った時は、なんだか裏切られた気持ちになったことを覚えています。
最近は低脂肪、低糖分のミスター・キプリンが販売されています。時代と共に味は消費者の好みに合わせて変わっていくものですが、お茶と一緒にいただくあの甘―いキプリングのフレンチ・ファンスィーズはあのままでいて欲しいと思うのは私だけでしょうか?
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