イギリスのクリスマスの伝統
イギリスでのクリスマスツリーは、ヴィクトリア時代から
今、私たちが取り入れているイギリスのクリスマスの伝統、習慣の多くは19世紀のヴィクトリア時代に始まったものです。
例えばクリスマスツリー。
ヴィクトリア女王の夫君で、ザクセン・コーブルク・ゴータ出身であった(現在のドイツ)アルバート公が故国から持ち込み、ウィンザー城に飾っている絵が1840年代前半に公表されたのがきっかけで国中に広まりました。
1843年、初のクリスマスカードがイギリスで発売
一方、クリスマスカードが、初めて発売されたのは1843年のことです。
このカードは、3代にわたってクリスマスをお祝いしている家族が描かれていました。両側には貧しい人に食べものと着るものを与えているチャリティーの光景が描かれています。
余談ですが、良く見ると真ん中の小さな女の子は姉と思われる人にワインを飲ませられているようです。ヴィクトリア時代は特にモラルに厳しい時代で、このカードが一部の人の間で批判されたというのも頷けます。
最初のクリスマスカードが発売された1843年は、ヴィクトリア時代の人気作家であったチャールズ・ディケンズが小説『クリスマス・キャロル』を出版した年でもありました。そして、この小説が現在のイギリスのクリスマスに大きな影響を与えたのでした。
イギリスのクリスマスに大きな影響を与えた『クリスマス・キャロル』
当時、産業革命の真っただ中で、機械の発明によりイギリスは農業国から工業国に変化していった時代です。農業も、機械化されたために職を失って都会に流れ込む人が多くなり、都会の人口が急に増えて住宅も不足しました。衛生環境のよくない住宅に、大勢の人がくらしていたのです。また工場では女性、子供までが長時間安い賃金で働かされていました。
ディケンズは、そのような子供や貧困者の生活を『クリスマス・キャロル』の中で描きました。ケチで、冷血で、お金儲けしか興味のない老人スクルージが、夢の中で過去、現在、未来の幽霊によってさまざまな場面に連れて行かれる物語。そこで見た光景から、自分の生き方が間違っていたことを悟り、最後に心を入れ替えて善良な優しい人間になるというストーリーです。
この小説で、チャールズ・ディケンズはクリスマスを楽しむことと同時に、恵まれない人たちへのチャリティーの心を忘れてはいけないことをおしえてくれています。
“God Bless Us Every One”
幽霊はスクルージの事務所で、低賃金で長時間働かされているボブ・クラチットの家にスクルージを連れて行きます。彼の家族は貧乏ですが、そこには幸せがあふれています。
七面鳥がアメリカから入って来たのは1520年代と言われますが、この小説がきっかけで一気に広がり、今ではクリスマス・ディナーの主役になっています。
それは小説の中で、改心したスクルージが最後にボブ・クラチットの家族にターキーを贈ったことに始まったクリスマスの習慣と言えるでしょう。
『クリスマス・キャロル』の小説の最後は、ボブ・クラチットの末息子で足が不自由なティムの言葉で締めくくられています。”God Bless Us Every One”
「私たち皆に神のお恵みがありますように!」この言葉が、クリスマスの精神を見事に表していると言えるでしょう。
イギリスに根付くチャリティーの習慣
この時期、イギリスは募金運動が一番活発に行われる時期です。特に孤独なホームレスの人たちにはせめてクリスマスだけでも美味しい食事と暖かな寝床を提供しようと、さまざまなチャリティー団体が募金活動を行います。
最も伝統的な募金活動としては、救世軍による(The Salvation Army イギリスで誕生し、慈善事業をしながらがらキリスト教の伝道をする団体)生活困窮者支援のための募金活動です。日本では「社会鍋」として知られています。
私の住む町でも、クリスマスに近づいたころに教会でチャリティーのためのクリスマス・キャロルのコンサートが開かれます。ディケンズの小説の題名にもなったクリスマス・キャロル(Christmas Carol)とはクリスマスに因んだ音楽のことです。例えば「きよしこの夜」は日本でも有名ですね。
町の中心の広場では子供たちがクリスマス・キャロルを歌って募金運動をしています。
クリスマスはもうそこまで来ています。
Merry Christmas!
日本の救世軍サイトは、こちらからどうぞ
1,000円からオンラインでの寄付も可能です
日本でも、より多くの方がチャリティー活動に関心をいだいていただきたいと願っております