今、英国ワイン業界が熱い!~ブドウの収穫の季節~《 Discovering English Wine》

ブドウの収穫に参加しよう

9月に入り、ワインの収穫期を迎えている英国です。年々ブドウ園(ヴィンヤード)が増えている英国です。以前ご紹介させて頂いた記事で、2023年ブドウ園は1,030軒とご案内しましたが、さらに増え、2025年現在英国には1,100以上のブドウ園があり、2024年比で7%増加しています。

☆2024年のコラム『イングリッシュワインとは?&その現状』も、よろしければ参考にご覧ください。

年や地域によって異なりますが、9月~10月(年によっては11月前半まで)が収穫時となり、収穫時には「pickers」と言われる収穫チームによって作業が進められていきます。

収穫前のブドウ園 熟したブドウの果実達

ブドウ園の多くは傾斜がある場所にある為、また良質のワインを作るために手摘みでの収穫を行うとこが多く、この時期”手摘みボランティア”を募集するところがあります。

例えばサリー州にあるオーガニックワイン作りで有名な「ALBURY ORGANIC VINYARD」、こちらは今年もブドウの手摘みボランティアを募集されています(9月10日現在)

ALBURY ORGANIC VINYARDhttps://www.alburyvineyard.com/blogs/events/harvest-2025

Albury Vineyard
Silent Pool, Shere Road
Albury, Surrey, GU5 9BW

傷んだところはないか?しっかりチェックされる手摘みされたブドウ達

実はこのボランティア募集、土日の予定日はすぐに募集人数が集まってしまうほど人気なのです。
年によっても異なりますが、8月の中旬くらいから「ブドウの手摘み収穫ボランティアに興味ありますか?」というお知らせがWEB サイトやニュースレターで届きます。

わたしも参加したことありますが、チームリーダーさんの丁寧な指導もあり初めての方でも安心して参加できます。通常は気温が高くなる前の朝から始まる収穫。多くのブドウ園は傾斜があるので、慣れていないとかな~りの重労働となります。
が、達成感と収穫後のご褒美?のワインは格別となるのは間違いありません!

慣れないうちはまごついたが、次第にスピードアップして手摘みできるように

気になる方は「harvest(収穫) volunteer(ボランティア) vineyard(ブドウ園)」のワードを入れて検索してみてください。お近くのブドウ園で今年のボランティアを募集されているかもしれませんよ。

手軽に楽しみたい方向け「ブドウ収穫体験」

ボランティアには躊躇してしまうが、ブドウの収穫の体験をしたいという方には、ウエスト・サセックス州、チチェスターにある「Tinwood Estate」さんで行われているコーヒーとケーキ、そしてスパークリングワイン&ランチ付きの「ブドウ収穫体験」イベントはいかがでしょうか?

Tinwood Estate https://www.tinwoodestate.com/experience/events-calendar/

Tinwood Estate
Tinwood Farm, Halnaker, Chichester, West Sussex PO18 0N

2025年のヴィンテージに期待!

2025年は記録的な猛暑となった英国。ブドウ生育期も暖かな気候に恵まれたおかげで、2025年に生まれるワインは「かなり有望な」ヴィンテージとなりそうだと業界では期待されています。
*ヴィンテージ=「年」その年で収穫されたブドウを使って醸造されたワイン

ワイン作り(=ブドウの栽培)は天候に非常に左右されます。
春の霜や雨、湿気によるベト病 ”糸状菌(カビ)が原因で植物に発生する代表的な病気の一つ” による被害、など様々なチャレンジと向き合って作られています。

収穫直前のブドウ園で今年のブドウの出来を説明してくださるスタッフ

過去のイングリッシュワイン・ヴィンテージはどうだった?

  • 2024年:雨天が多く収穫量がかなり激減した年、品質に関してはまだ不明
  • 2023年:英国史上、最大の収穫量を記録した年
  • 2022年:暑く天気も乾燥した年であったが、収穫時期に雨が多く例年の水準に及ばないものもあった年
  • 2021年:春霜、そして生育期の悪天候が続いた非常に困難の年であったが収穫時期の温暖な気候に恵まれ、一部では優れたワインが生み出された年
  • 2020年:開花期の霜と強風によって収穫量が大幅に減少した年であるが、品質は2018年同様に優れたワインが作られた年
  • 2019年:暖かく乾燥した冬によりブドウの木の芽吹きが早かった年。雨による病害、夏の猛暑、収穫時の雨など困難が多かったたが一部では非常に良いスパークリングワインが作られた年
  • 2018年:温暖な夏の恩恵で、スパークリングだけでなくシャルドネや良質のピノ・ノワール等のスティルワインが作られ、現代最高のヴィンテージとなった年。

参考:https://www.jancisrobinson.com/learn/vintages/england

と、見てお分かりのように天候によって品質にかなり差が出てきます。
(作り手達は天候からの影響を考慮の上、毎年ワイン作りに励んでいます)
今年の収穫から作られるワインがどのような品質のワインになるかは数年ほど待たないと分かりませんが、この収穫時期に雨が沢山降らないことを祈るばかりです!

イングリッシュ・スパークリングワインの飛躍

英国産ワインといえばやはりスパークリングワインが人気ですが、つい先日の9月9日に開催された「ワイン界のアカデミー賞」とも呼ばれるインターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC:International Wine Challenge)の品評会にて、イギリスのワイナリー「ナイティンバー(Nyetimber)」のスパークリングワイン『ブラン・ド・ブラン マグナム 2016』が、最優秀スパークリングワイン賞を獲得というセンセーショナルなニュースが飛び込んで来ました。
シャンパーニュ産以外のワインがこの賞に輝くのは実に史上初めてのことです。

英国ワインが一堂に集まるテイスティング会

この素晴らしいニュースが飛び込んできた前日の9月8日には英国ワインの生産から事業を支える団体、WineGB(英国ワイン協会)による『全国の業界関係者及び報道関係者向けの試飲会/The National Trade and Press Tasting』がロンドン市内で開催されました。

1フロアーに収まらず、2フロアーに渡っての試飲会 テイスティングノートをじっくりと書き込みながら、生産者さんと話をされる方々で熱気に溢れた一日

WineGBに所属している80の生産者の出展と500人以上の業界/報道関係者が参加という過去最大規模となった試飲会は、ロンドン市内のワイナリーからウェールズやコンウォールなど、普段はなかなか足を運べない遠方の生産者の方々と、試飲をしながら直接お話ができる貴重な機会です。
日本からお見えになられた方もいらっしゃいました。

アーバンワイナリー
ロンドン市内にある「BLACKBOOK WINERY」

BLACKBOOK WINERYhttps://www.blackbookwinery.com/

「Camel Valley」のワイン

コンウォールにある「Camel Valley」は、 王室御用達/ロイヤルワラント(ROYAL WARRANT)マークで有名ですね。

Camel Valleyhttps://www.camelvalley.com/

ウェールズにもワイナリーが増えているのをご存知でしたか?

WineGBに所属しているワイナリーやヴィンヤードがあるウェールズの州の地図

WineGB に所属されているワイナリーも数軒参加されていらっしゃり、多くの方から質問を受けていました。

「Ancre Hill Estate」のワイン

ウェールズにあるバイオダイナミック&オーガニックワインの作り手「Ancre Hill Estate」のワイン達。

Ancre Hill Estatehttps://ancrehillestates.co.uk/

オレンジワインはアルバリーニョ種(Albariño)も使われていて、日本へも輸出されるそうです。

WineGBの品評会にて受賞したワインのブースは。かなり多くの方々で賑わっていました。

ベストプレミアムスパークリングワイン賞の “ゴールドトロフィー”を受賞されたドーセット州にある「Langham Wine Estate」。このワイナリーの『Perpetual NV』は、Wine GB受賞歴史上で初めて”99ポイント”と言う高得点を得たワインです。又ベストノンヴィンテージ・スパークリングワインやベストBlanc de Blancsワインでもゴールドトロフィーを受賞したワイナリーと言う事で、ひときわ注目が集まっていました。

「Langham Wine Estate」 のブースにて、どの様にワインが作られたか、こだわり等を拝聴
こちらも日本からの注文が増えているとの事

Langham Wine Estatehttp://langhamwine.co.uk/

会場ではイギリスの「テロワール」、「赤ワインの躍進」、ワイングラスメーカーリーデル社によりイングリッシュ・スパークリング用のグラスを使ったマスタークラスなど、非常に興味深いミニセミナーも開催されていました。

ブドウ園が多く集まる主な地域のテロワール(土壌、気候、地形)などのセミナーより
リーデル社のグラス

写真右は、リーデル社(Riedel)が作ったRIEDEL Veloceイングリッシュ・スパークリングワイングラス。写真左のシャンパン用グラスで入れて、時の香り味わいの差に皆が驚いていました。
リーデルの日本サイトではこちらのグラスは売られていないようなので、お土産としてイングリッシュ・スパークリングワインと一緒に購入されると、ワイン好きには喜ばれること間違い無いですね。

イギリスの赤ワインも年々品質が向上している

ここまで多くの英国のワイン生産者さん達と一堂に会える機会はまたとないこと。日本の市場ですでに販売されている生産者もいらっしゃいましたが、まだまだ日本では知られていない所も多くあります。
ワインを勉強されていらっしゃる方々やワイン業界の方には、宝物発見気分でぜひ一度楽しんでいただけたらと思う1日でした。

大島理恵子

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英国サリー州在住 英国メディカルハーバリスト/アロマセラピスト/リフレクソロジスト 1994年英国に移住。 ロンドン市内のセラピールーム及び癌センターで施術...

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