シェパーズパイとコテージパイ、あなたはどっちら派?

ひき肉で作るイギリス料理

イギリス人のパイ文化とその種類

イギリス人はパイが大好きだ。実際、「イギリス人の好きなイギリス料理」の中で、パイは必ずトップ3に入るほど人気が高い。イギリスのパイ生地には主に3種類あり、それぞれに特徴がある。「パフペーストリー」はサクサクで層が多く、手の込んだ生地として有名だが、家庭ではあまり作られない。市販のパイ生地を使うことが多い。一方、「ショートクラストペーストリー」は、ほろっとした食感で、家庭でもよく作られる。さらに、イギリスでは具材をマッシュポテトで覆って焼く「パイ」もある。これにはシェパーズパイやコテージパイが含まれる。

マッシュポテトを乗せて作るパイ

シェパーズパイとコテージパイの違い

シェパーズパイとコテージパイは、見た目や調理法が似ているため、しばしば混同される。違いは「ひき肉の種類」である。シェパーズパイはラム(子羊)のひき肉を使い、コテージパイは牛ひき肉を使用する。この違いが、二つの料理を完全に区別するポイントとなる。ラム肉で作る、シェパーズパイはイギリスらしい風味を楽しむことができる。日本ではラム肉があまり普及していないためなのか、シェパーズパイが牛ひき肉で提供されることがよくあるが、これは本来のシェパーズパイとは異なる。こうした違いに気づくと、イギリス料理の理解がさらに深まるだろう。

シェパーズパイの誤解と日本での実情

日本でもイギリス風のパブが増え、シェパーズパイを目にする機会が増えている。しかし、シェパーズパイを頼んだのに、出てくるのは牛ひき肉のコテージパイというケースが多い。これは、本来のシェパーズパイの定義に反しており、少し残念な気持ちになることがある。もしこれを和食に例えるなら、海外の和食店で牛丼を頼んだのに豚丼が出てきたような感覚だろう。もちろん、シェパーズパイもコテージパイも、どちらも美味しい料理であるが、料理に対する忠実さを保つためには、きちんと区別してほしいと思う。

コテージパイの家庭的な味わい

私は家では食べやすい牛ひき肉で作るコテージパイが食卓に登場することが多い。ジューシーな牛ひき肉に野菜が加わり、その上に滑らかなマッシュポテトを乗せて焼き上げるこの料理は、食べごたえがあり、温かみのある味わいが楽しめる。イギリスの家庭では、誰でも一度は作ったことがあると言われるほど親しまれている。食べるほどにその魅力がじんわりと広がる、心温まる料理である。

日本の食卓にも取り入れやすいコテージパイ

コテージパイは、日本の食材や味付けに合わせてアレンジしやすい料理である。例えば、醤油やみりんを使って肉じゃが風に仕上げたり、カレー粉を加えてカレー風味にしたりすることができる。これにより、日本の家庭の味にもぴったりと合う料理へと変わるので、アレンジ次第で多様な楽しみ方ができるのが魅力だ。

今日は日本で作りやすいコテージパイをレシピとしてを紹介するが、牛ひき肉をラムひき肉に変えて作ることもできる。
シェパーズパイとコテージパイあなたはどっちら派?

コテージパイ レシピ

こんがり焼けたコテージパイ

【材料】5~6人分

*2~3人分の場合は、半分の量で調整してください。

マッシュポテトの材料

  • じゃがいも 皮を剥いて600g
  • 牛乳 80ml
  • バター 20g
  • 塩 小さじ1/2
  • ナツメグ 少々
  • 黒胡椒 少々

具の材料

  • 牛ひき肉 500g
  • 玉ねぎ 150g(粗みじん切り)
  • にんじん 70g(粗みじん切り)
  • セロリ 50g(粗みじん切り)
  • にんにく 15g (大1片)(みじん切り)
  • フレッシュタイム 2枝(葉の部分を使う)
  • フレッシュオレガノ 2枝(葉の部分を使う)
  • ドライローリエ 2枚
  • オリーブオイル 大さじ1と1/2
  • 赤ワイン 50ml
  • ウスターソース 大さじ1と1/2
  • トマトピューレ 大さじ1と1/2
  • 薄力粉 大さじ1と1/2
  • 固形スープストック(固形コンソメでも良い)1と1/2個
  • 卵黄 1個

【作り方】

しっかりマッシュして滑らかにするのがポイント

① マッシュポテト

  1. じゃがいも(皮むき)を4等分し、塩の入った湯で約10分~12分柔らかく潰しやすいぐらいに茹でる。
  2. 湯切り後、バターと牛乳を加えてマッシュし、塩、黒胡椒、ナツメグで味付けする。

② 具材作り

  1. スープストックをぬるま湯(250ml)で溶かしておく。
  2. フライパンにオリーブオイルを熱し、牛ひき肉を強火で炒め炒め、ポロポロになったら野菜(玉ねぎ、にんじん、セロリ)を加えて更に炒める。
  3. 中火にしてにんにく、ハーブ(オレガノ・タイム・ローリエ)、ワイン、ウスターソース、トマトピューレを加え馴染ませる。
  4. 3の中に薄力粉を加え混ざったら、1を加えて強火で水分を飛ばしながら煮詰め程よく水分が飛んだら火を止める。
    (とろみがついたらローリエを取り除く)
このぐらいまで煮詰める

③ 組み立て&焼き

*オーブンを220℃に予熱する。(ファンオーブン・コンベクションオーブンの場合は200℃)

  1. 耐熱皿に具を敷き、マッシュポテトを乗せて平らにしてフォークの背で模様をつける。
  2. 卵黄を塗り、220℃で25~30分焼く。
模様はこんな感じにするとイギリスらしい

④ 盛り付け

焼き上がったコテージパイとお好みで茹でたグリンピースやにんじんを添えて完成!

野菜を添えたコテージパイプレート

エリオットゆかり

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イギリス在住料理研究家 イギリス人の夫、23歳の日本在住の長男(現在ロンドン在住)、21歳の長女の4人家族。 2000年にイギリスに移住 食をメインにイギリ...

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