イギリス映画談
~チョコレートの魔法にかかる?『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』~

2023年12月8日公開

©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』のシーン
ウォンカと宙に舞うチョコレートを見上げる人々
©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

原作は、奇妙な味の作家ロアルド・ダール

1916年9月13日ウェールズのカーディフでノルウェー移民の両親のもとに生まれたロアルド・ダールは、第二次世界大戦がはじまるとイギリス空軍のパイロットとして従軍している。誤った飛行ルートの指示のためエジプトの砂漠で不時着、重傷を負ったものの生還している。しかし脊髄を負傷し、その後遺症に苦しめられたという。
こうした経験からか、風刺やブラック・ユーモアに満ちた短編小説で作家として認められ、その後冒険小説、ファンタジー、児童文学へと幅を広げてきた。
短編小説集で有名なのは「あなたに似た人」だが、有名な作品は児童文学に多く、その多くが次のように映画化されている。

  • 「チョコレート工場の秘密」⇒「チャーリーとチョコレート工場」等として映画化
  • 「父さんギツネバンザイ」⇒「ファンタスティックMr.FOX」として映画化
  • 「ぼくらは世界一の名コンビ!ダニィと父さんの物語」⇒「ダニー/ぼくらは世界一の名コンビ!」として映画化
  • 「オ・ヤサシ巨人 BFG」⇒「BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」として映画化
  • 「魔女がいっぱい」⇒「魔女がいっぱい」として映画化
  • 「マチルダはちいさな大天才」⇒「マチルダ」として映画化、さらに「マチルダ(Matilda The Musical)として舞台ミュージカル化、それを映画化「マチルダ・ザ・ミュージカル」
  • 「恋のまじない、ヨンサメカ」⇒「素敵なウソの恋まじない」として映画化

これほど多くの作品が映画化されていたとは驚きだ。
さらに、純粋に映画用の脚本を2本書いている。「007は二度死ね」「チキ・チキ・バン・バン」で、どちらもイアン・フレミングの小説からの映画化。ジェームズ・ボンドを生んだこの作家とロアルド・ダールは友人だったという。

ロアルド・ダールは女優のパトリシア・ニールと結婚(1953~83年)していた。彼女は後年「ハッド」(1962年)で米アカデミー主演女優賞を受賞している。しかし、彼女を有名にしたのは「摩天楼」(1949年)で共演したゲイリー・クーパーとの不倫関係であり、そのことでマスコミから袋叩きにあい仕事が来なくなっていた。そんな時、劇作家のリリアン・ヘルマンがロアルド・ダールを彼女に紹介、1953年には二人は結婚した。

小説「チョコレート工場の秘密」の映画化作品群

今回の『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』は「チョコレート工場の秘密」(Charlie and the Chocolate Factory)の3回目の実写映画化になる。

映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』のシーン
ウォンカの作った宙に舞うチョコレートと町の人々
©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

初めての映画化は1971年に公開された「夢のチョコレート工場」(Willy Wonka & the Chocolate Factory)。残念ながら日本では未公開だったが、後にビデオ、DVDが発売された。監督はメル・スチュアート、主演はウィリー・ウォンカを演じたジーン・ワイルダーで、脚本はロアルド・ダールとなっている。しかし、ダールの脚本は映画スタッフによって大幅に改変され、ミュージカル仕立てになったという。ダールはこの改変に激怒、その後の映画化権を与えなかった。音楽はアンソニー・ニューリー、レスリー・ブリッカスが担当しており、ミュージカルファンであれば、この方が気になるところだ。

次に作られたのが、ダールが亡くなって(1990年没)10年以上が経った2005年だ。「チャーリーとチョコレート工場」(Charlie and the Chocolate Factory)で、ティム・バートン監督、主演はジョニー・デップ、ファンタジー色が強くなったとはいえ、音楽はダニー・エルフマンでミュージカルでもあった。但し、この作品ではウンパルンパ以外の人物は歌を歌うことはなかった。

3回目となる今回の『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』(Wonka)は、ダールの原作を基に、オリジナルストーリーでチョコレート工場のはじまりを描く。物語を作り、監督をしたポール・キングは、この映画をウォンカが傘を持った多くの人の中心で一緒に歌い踊る場面から始めている。これは何と言おうとミュージカルの出だしである。

映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』のシーン
町の中心で歌い、踊るウォンカと町の人々
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映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』のシーン
亡き母との約束”世界一のチョコレート店を開く”ため町にやってきたウォンカ
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この原作から作られた映画が、実はもう1本ある。2017年に作られた「トムとジェリー 夢のチョコレート工場」(Tom and Jerry: Willy Wonka and the Chocolate Factory)だ。トムとジェリーと言えば、猫とネズミのドタバタを描くアニメ。トムとジェリーがチャーリーと一緒にチョコレート工場を訪ねるというアニメ映画だ。こちらも残念ながら日本未公開。
いずれにしてもこの小説の人気ぶりがうかがえる。

『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』はミュージカルシーンが詰まったファンタジー

映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』のシーン
ウォンカと彼の魔法を信じる孤独な少女ヌードル
©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

作品には12のミュージカルシーンがある。監督のポール・キングはこの作品をファンタジーと言っているそうだが、実体はミュージカル・ファンタジーと言えるもの。主演のティモシー・シャラメもそれに応えて頑張っている。

作品を見ていて思い出したのは、ロンドンのウエストエンドで50年近くも前に見たロンドンオリジンの舞台ミュージカル。キャメロン・マッキントッシュ製作によるロンドンミュージカルの多くがニューヨークのブロードウェイに行くようになる前の時代の作品。親しみやすいメロディ、特段のミュージカルシーンがないとはいえ、ゆったり落ち着いたテンポで進められる物語。今回音楽を担当したジョビー・タルボットのメロディはそんな作品を思い出させる。

映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』のシーン
ウォンカとチョコを盗む小さな紳士ウンパルンパ
©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

シャラメ以外にも、「Mr.ビーン」で有名なローワン・アトキンソン、「女王陛下のお気に入り」で米アカデミー主演女優賞を受賞しているオリビア・コールマンも出演している。更に特筆すべきは、チョコレートを盗み続けるオレンジ色の小さな紳士ウンパルンパをヒュー・グラントが演じていること。「オペレーション・フォーチュン」に続いて、彼の好調ぶりが楽しめる

ウォンカのチョコレート工場がどんな風に始まったのか、知りたくなりませんか?

『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/wonka/

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海外パッケージツアーの企画・操配に携わった後、早めに退職。映画美学校で学び直してから15年、働いていた頃の年間100本から最近は年間500本を映画館で楽しむ...

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