情緒あふれる岸壁の漁村「ロビン・フッド・ベイ」

英雄ロビン・フッドの言い伝え

北ヨークシャーにあるロビン・フッド・ベイは、名前の由来は定かではないが、言い伝えによると、ロビン・フッドが漁船、漁村を略奪したフランスの海賊に遭遇、海賊を降伏させ、村の貧しい人々に戦利品を返還したと言われている。
これに因んでこの漁村をロビン・フッド・ベイと呼ぶようになった。しかしながら、仮に実在したとしても、英雄ロビン・フッドがこの村の近辺に本当にいたかどうかは疑問が残っている。ロビン・フッド・ベイは、作家レオ・ウォルムスリー(1892-1966)の生まれ育った村で、同作家著『スリー・フィーバーズ』を原作にした映画『ターン・オブ・ザ・タイド』(1935)のロケ地である。 映画ではこのほか『ワイルド・チャイルド』(2008)、『ファントム・スレッド』(2017)のロケ地にも使われている。また、この漁村のおどろおどろしい岸壁が、1897年にアイルランド人、アブラハム・ブラム・ストーカーによって書かれた古典『ドラキュラ』の舞台にもなっている。

イギリス東西横断コース最終地

この村にはかつてスカボロー・アンド・ウィットビー鉄道のロビン・フッド・ベイ駅があったが、1885年に開通した鉄道は1965年には閉鎖された。旧鉄道の線路は現在、歩道と自転車道になっている。最寄りの駅はウィットビーにある。 ウィットビー駅からロビン・フッド・ベイまで10km離れており、タクシーだと15分、アリバ社X93番のバスだと22分、バスは1時間に1本走っている。夏は1時間に2−3本と増える。ロビン・フッド・ベイは、ウェインライトの「Coast to Coast Walk」の東側の終着点であり、

ロビン・フッド・ベイは「Coast to Coast Walk」の東側の終着点
全長292.2kmの「コースト・トゥ・コースト・ウォーク」
イギリスの東西横断コース 最終地がロビンフッド・ベイ

また、長距離ハイキングコースであるクリーブランド・ウェイの海岸部に位置する。「Coast to Coast Walk」とはここから真西にまっすぐ線を引いてイギリスの北西、アイルランド海沿岸のセント・ビーズ・ヘッドを出発点とし、そこからまっすぐ東に向かった全長292.2kmのウォーキングコースをいう。一つ言えることは、大きな観光街ウィットビーよりも、ロビン・フッド・ベイが遥かに情緒があり見所が多い。

海辺の小さな村「ロビン・フッド・ベイ」

この小さな漁村ロビン・フッド・ベイは、2つの険しい崖の間の割れ目に位置している。

ロビン・フッド・ベイ
ロビンフッドベイの街全景 崖と崖の間に挟まれている

村の家々はほとんどが砂岩(sand stone)でできており、屋根は赤瓦。村のメイン・ストリートはニュー・ロードと言って、マナー・ハウスや新しい家々、セント・スティーブン教会のある辺りからどんどん下っていく。

ロビン・フッド・ベイ
ビクトリア・ホテルを出て、急な坂をぐんぐん下っていく
ロビン・フッド・ベイ
坂の途中のアイスクリーム屋さん

ニュー・ロードは、キングス・ベックを横切って村を通り抜け、海岸に流れ出るウェイフットと呼ばれる石畳の滑り台で海岸に達するところで終点となる。

ロビン・フッド・ベイ
坂の終着点、ウエイフィット

カラフルでかわいい街並みがつづく「ロビン・フッド・ベイ」

実際はロビン・フッド・ベイに到着するのはタクシーでもバスでも崖の上、ここから畝った急な坂を下っていく。車が一台通れるだけの細い道で、両手には古い家とお土産屋さん、小物店が並ぶ。

お土産屋さんや小物店がならぶロビン・フッド・ベイ
レストランの入り口は花であふれている

どの店も村の古い町並に馴染んでいて、入り口のドアのみカラフルで、可愛らしい。途中、ニュー・ロードに面して小さな博物館があったのだけれど、私が行った時は残念ながら閉まっていた。外からは隣接の家に同化していて、まさか博物館には見えない。

ロビン・フッド・ベイの博物館
ニュー・ロード沿いにあるロビンフッド・ベイ博物館入り口

この日は、イギリスでコロナウイルス対策ロックダウンが段階的に解除された9月頃で、レストランやバーもマスクを着用して座ることができた。店舗もあちこち開いており、観光客で少しばかり賑わっていた。観光客は普段もイギリス人が多いようで、穴場の観光スポットといえよう。

漁村の景色を楽しめる「ベイ・ホテル」

海岸まで畝り坂のお店や花々に気を取られながら歩くと、

ロビン・フッド・ベイの街並み
坂の途中にある民家 風情のある石畳が続く
ロビン・フッド・ベイの街並み
ニュー・ロードの坂と並行し 民家の静かな通りが

ウェイフットの上に終点と言わんばかりの「ベイ・ホテル」、またパブがある。

ベイホテル
ウエイフィットから「ベイ・ホテル」を見上げて
ベイホテル
坂の下にそびえる「ベイ・ホテル」

ここから海岸を近くで眺めることができる。
ここまで来ると漁村らしく、網やウキが並び、小さな船着き場だと分かる。

フィッシュ・アンド・チップスがおススメ「ヴィクトリア・ホテル」

「ヴィクトリア・ホテル」の入り口

日帰り旅行で時間がない場合は、ここから来た道を戻って登っていくことをお勧めしたい。2回通っても楽しさは変わらない。
崖のてっぺんにあるホテル、「ヴィクトリア・ホテル」(4つ星)のレストランは、過去食べたどれよりも美味しさ、大きさ、食感、またこの伝統的料理に欠かせないマッシュ・ピー、どれにおいても最高のフィッシュ・アンド・チップスを出していた。また大きさが2種類あって、大と並。私は並を注文したが、この大きさと言ったら!大を注文した夫は途中少しばかり奮闘していたものの、サクサクの食感と新鮮なタラに大満足。

イギリス最強のフィッシュ・アンド・チップス 手前が大サイズ、奥が並サイズ、サクサク感がたまらない
獲れたてのタラにシック・カットのチップス、本場タルタルソース、マッシュ・ピー、どれを取っても最高レベル

レストラン内は海岸側の壁が全面ガラスで、どのテーブルに座っても、崖に叩きつける荒波と海岸を眺めることができる。

ホテル「ヴィクトリア」
「ヴィクトリア・ホテル」内のレストラン
大きなガラス越しにロビンフッド・ベイを眺めていると、波が崖に打ち付ける様子につい見入ってしまう

またホテルの海岸を望む庭には鳥かごの形をしたフォリーがあり、ミニチュア・イングリッシュ・ガーデンに囲まれて紅茶を楽しむのも素敵な時間の過ごし方。

ホテル「ヴィクトリア」の鳥小屋の形をしたフォリー
ビクトリア・ホテルの庭にある鳥かご型のフォーリー 夏はここでアフタヌーンティーを楽しめそう

ヨークシャーの他の観光地とのアレンジがおススメ

ロビン・フッド・ベイはロンドンから前述のウィットビー駅経由の電車で行くとなるとロンドンキングスクロスから2回乗り換えで5時間半かかるため、お出かけの際は他の北ヨークシャーの観光地、例えばハロゲイトなどと合わせて泊りがけで行くのがお勧めです。
あるいは、長距離ハイキングに自信のある方は是非Coast to Coast Walk をお試しあれ。

ロビン雀円

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ロンドンに20数年在住。現在はベッドフォードシャーの田舎に引っ越して5年目。現役建築士。イギリスの大聖堂や教会はじめ、古い建物大好き。2年前購入したカンパ―...

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