ロンドン、変化していく南の下町を散策
変わりゆくロンドンの下町
中心部を軸に、東西南北でさまざまな顔を見せるロンドンの街。
セントラルからテムズ川の向こう側はロンドン、数十年前まで下町エリアという括りだったロンドン南部でしたが、セントラルロンドンへのアクセスの良さもあり、最近は再開発が進み、大きな変化を見せています。
21世紀に変わるミレニアムの頃のシティ周辺の東ロンドンがどんどんと開発され、すっかりトレンディ化していったように、今のロンドンのテムズ川の南側にも同じような現象が起こりつつあります。
ナインエルムズ(Nine Elms)
ウエストミンスターやベルグラビアから反対のエリアのナインエルムズ。
数年前にアメリカ大使館が移転、10月には新しい地下鉄の駅がオープンされ、みるみるうちに高級マンションが立ち並ぶ地域に変化を遂げつつあります。
イギリスの100年ほど前の産業革命の時は工場街や倉庫街だったバターシー地区の川の反対側は議員や貴族たちなどの富裕層が住んできた、チェルシーエリア。
時代の移り変わりとともにこちらの街の変化が現れています。
現在、新富裕層や世界中の投資家などがバターシーに不動産を所持するようになり、最近では、ビルとビルをつなぐ空中プールなどのマンション建築も話題でした。
そのインダストリーで重厚な趣から長い間テムズ川のアイコン的存在だった、バターシー火力発電所(Battersea Power Station)。
こちらは1930年代の建築物で、ミレニアム以降はテートモダンになった元サウスバンク発電所と同じ建築家の手によって、90年ほど前に、この発電所は完成しました。
1980年代以降、火力発電所としては長い間使用されていなかったのですが、この独特な存在感を持つ建築はロンドナーにはとても人気があり、ピンクフロイドのアルバム、「アニマルズ」の表紙にもなったり、数々の映画やドラマのシーンにも使われている場所であります。
バターシー発電所は長い年月をかけてショッピングセンターやシネマ、そしてプライベートシネマやプライベートクラブなどの施設を含んだ高級マンションとして生まれ変わりつつあります。
ナインエルムズのテムズ川沿いの広場にはいくつものレストランやカフェが並びます。
セレブシェフのゴードンラムジーの経営するカジュアルなピザレストランやこの数年はロンドンで定着している豚骨ラーメン店の他に、ワインとともにシーフードを楽しめるオイスターバーなど、この他にもそれぞれ個性豊かなチョイスの飲食店に加え、小さなシアターやシネマ、VRで楽しめる施設、室内ミニゴルフなど、様々な年齢層が楽しめる場所が設けられています。
今年の10月から地下鉄の駅が開通しましたが、こちらのナインエルムズ地区、ロンドン交通局の水上バス”テムズクリッパーズ”(Thames Clippers)の船着場があるので、テムズ川の東側に位置する人気の観光地、ロンドン塔やボローマーケット、サウスバンクからのアクセスになると、アクセスが良いだけでなくテムズ川をクルーズ気分で下っていく方が眺めも楽しめるという利点もあります。
バターシー発電所の前の広場はテムズ川は目の前。
ロンドンで人気のレストランの支店が続々オープンしています。
晴れた日には、このエリアの住民らしいスタイリッシュな装いのグループがワイン片手に談笑しているグループの姿がテラス席に見られます。
トゥーティング(Tooting)
数年前、世界一のシェアを誇る旅行ガイドブック「ロンリープラネット」で、Tooting(トゥーティング)が世界でクールな街のトップ10内にランキングされたという記事は、ロンドナーたちを少し驚かせたニュースでした。
“Tootingはどこ?”と言いますと、高級住宅街ウィンブルドンより少し東の地域、現在のロンドン市長のサディク・カーンが住む街であり、主にインド系移民が多い地域です。
ロンドンでインド系の移民の街のレストランというと東ロンドンのブリックレーンが有名ですが、こちらの街のインディアンレストランは観光客やシティのビジネスマン向けのランチというよりは、ロンドン在住のインド移民向けという雰囲気です。
現在のロンドン市長、サディク・カーンもお気に入りという、レストラン。
東ロンドンのインドカレーがバングラディッシュ系のものが多いのに比べ、こちらの街のカレーは南インド系のものが多いです。
https://www.lahorekarahi.co.uk
トゥーティングが注目されているのは、インド系のレストランだけが理由ではなく、威勢の良い掛け声やエキゾチックなBGMの喧騒で賑わうハイストリートにちょっと目を引く入り口が見つかります。
「トゥーティングマーケット」(Tooting Market)、「トゥーティングブロードウェイ」(Tooting Broadway)
その外観からは一見、内部には何があるかわからない、二つの室内アーケードは隣り合っていますが、入り口は別になります。
中に入っていくと、そこに現れるのは、先程のインド移民の街の光景とはまったく違うカフェや洒落たビストロ、カクテルバーが軒を並べています。わかりにいくい意外な場所に現れるスタイリッシュな雰囲気を目にすると、この街の持つエキゾチックな街の印象が180度変わるから不思議です。
ペッカム(Peckham)
この数年、家賃が高騰する東ロンドンからクリエイター達が移り住むようになってから、「ペッカム」(Peckham)の名前を聞くことが多くなりました。
10年前までは、荒んだイメージの強かったペッカムですが、年々スタイリッシュなお店が増えつつあります。こういったお店はこちらもトゥーティング同様、一見しただけでは少しわかりにくい場所にオープンしています。
アーティストやクリエイターの人口が多い地域の傾向にある、廃墟だった隠れ家的な空間にコワーキングスペースなどを作り、そこにフードコートやルーフトップバーなどもオープン。
それらを代表する場所の一つに、「ペッカムレベルズ」(Peckham Levels)があります。
以前は立体駐車場のビルだった建物がすっかり、クリエイティブなものとなって、今時のロンドンを感じることができます。
https://peckhamlevels.org
ペッカムには、ロンドンの金融街シティのビル群を眺められる景観を生かした、ルーフトップバーが数多く出現しています。
ギャラリーイベントやシネマイベントなどが催されるなど、昨今何かと話題にのぼるエリアです。
ハイストリートから少し狭い、横丁を入るとちょっと廃墟感のあるビルの秘密めいた入り口が。
この場所もペッカムレベルと同様、ペッカムで注目を集めている「ブッセービル」(The Bussey Building)。
現在は、クリエイターたちのオフィスやワークショップ、常設されるマーケットのほかに、イタリアンレストランやバーを楽しむことができ、これからはお好み焼きのレストランなどもオープンの予定だそうで楽しみです。
そしてイギリス人による、イギリス産の日本酒の醸造所やレストランなど、少し驚きがここにあります。
19世紀後半に建てられた、元々はスポーツ用品の工業用の建物でしたが、当時からペッカムで一番高く、大きな建物だったという特徴を活かして、こちらの屋上のルーフトップバーにも注目が集まっています。
屋上に上がると、そこにはシャードやシティの金融街の灯りが瞬く光景が広がります。
https://www.copelandpark.com/
中心部や高級住宅街とは、全く違う顔を持つ南ロンドンですが、今、現在栄えている町だって、100年前、50年前などは全く注目を浴びていなかったはず。
労働者の街とされていた東ロンドンがこの20年で大きな変化を遂げたように、ロンドナーたちは時代が残した遺産を再利用して新しい定番を作り上げていってるのでしょう。
2017年頭、ロンドン南部ペッカムに英国初のクラフト日本酒醸造所を立ち上げ、旋風を巻き起こした「カンパイ」。『マイクロ・サケ・ブルワリー』と呼ばれる小規模な清酒醸造所です。
2018年にはタップルームを併設した新たなマイクロ醸造所を開業し、サーバーから一杯ずつ小売りすることで、より多くの人に酒を親しんでもらおうと工夫を凝らしています。
南ロンドンの新スポットとして注目されています。