国王のクリスマススピーチ

代々12月25日の午後(英国時間)に放映される、イギリス君主によるクリスマスメッセージ。1932年にラジオ放送で始まり、エリザベス女王御在位中の1957年からはテレビ放映もするようになったこのメッセージは、もともとイギリスとコモンウェルス各国の多くの国民が耳を傾けるクリスマスの習慣でした。近年は世界中どこにいてもネット上で聴くことができるようになりましたね。
私も女王さまのファンとしてここ数年は毎年聴いては発音について解説したりしてきましたので、今回のチャールズ国王の初のクリスマスメッセージもとても楽しみに拝見しました。

オープニングのタイトルは “HM The King”

クリスマスメッセージは毎回、国歌の演奏で始まります。女王さまの時代は大きく”The Queen”とだけ文字が出ていましたが、今回は “HM The King”に変更。HMは His Majesty、日本語なら「陛下」にあたりますが、じゃあ The Queen だけでは失礼にならないのかというと、このタイトル表記ならそうでもないのが面白いところです。

The Royal Family Channel のYouTubeより

冒頭の国歌演奏、今年はウィンザー城チャペルの聖歌隊とオルガニストです。

オープニングの国歌斉唱

女王御逝去直後の公式行事以来、2022年後半のスポーツの大会などでもGod Save The “King” を聴く機会も増え、QueenからKingへの歌詞変更に私もだいぶ慣れてきました。

収録はウィンザー城のチャペルで

女王さまの収録は、近年は毎回城内のお部屋でしたが、今回はお亡くなりになった年でもあるので、チャールズ国王は母君が埋葬されているウィンザー城の聖ジョージチャペルにて、聖歌隊席からお話しなさいました。

英国王室公式YouTubeチャンネルより
公式の映像には英語の字幕が付いています

最初にエリザベス女王のご逝去に際して寄せられた多くの弔意に感謝なさり、家族や身近な人々が集うクリスマスはいなくなった人の存在を特に痛感する、と続けられます。

キーワードは「光」

続けて「有名なクリスマスキャロル、O Little Town of Bethlehemの歌詞にもあるように」と引用、「light 光」という言葉に注目なさいます。ここでのキリスト教的「光」とは、イエス・キリストのことです。

「母女王もこの『光(=キリスト)』を信仰の礎としてきましたが、母は人々に対しても大いに信じる心を持っていました。」

国王のおっしゃったfaithという英語を日本語にすると、宗教と人に対しては言葉が違うのでニュアンスがちょっと難しくなりますが、ここでは「女王には、神に対する信頼と人々に対する信頼が、同じようにあった」という意味でおっしゃっています。

そして国王は、戦争やインフレなど具体的なことはおっしゃいませんが現在苦しい生活をしている人たちに心を寄せ、彼らを助ける医療機関や軍隊などの人々に「光を当て」られます。
そして、隣人を助けるという愛ある行為こそが「暗闇に光を灯す」、将来の希望になる、と。

そう、今回のメッセージのテーマは「光」です。

王室に受け継がれる「光」

これはエリザベス女王も何度かお話しなさっていたテーマです。今回この文章を書くにあたり昔のクリスマスメッセージについて調べてみましたら、1939年、兄君の退位により王位継承したばかりのジョージ6世(エリザベス女王の父君)の最初のクリスマスメッセージでも、神の助けという文脈での「光」という言葉が使われ、このくだり(ある詩の引用)が有名になったそうです。

君主のクリスマスメッセージで脈々と受け継がれる、キリスト教での「光」という言葉ですが、クリスマス=キリスト教、では済まされない今日この頃。チャールズ国王はもちろん他の宗教にも触れ、そして「無宗教の人も」とまでおっしゃっているのは流石でした。

締めのお言葉は?

女王さまは、近年は毎年 “I wish you all a very happy Christmas” とおっしゃるのが恒例で、イギリス全体のクリスマスの挨拶がHappy Christmas からMerry Christmasに取って代わられた最近でもそうおっしゃっていたのが、昔ながらのHappy表現にこだわっていた私には毎年嬉しい瞬間でもありました。
チャールズ国王も同じようにおっしゃるのかなと思っていましたが、終わりのお言葉は文の構造が若干違って Happy Christmas とはつながらず、こうおっしゃいました。

“With all my heart, I wish each of you a Christmas of peace, happiness and everlasting light.”
「皆さんひとりひとりにとって、クリスマスが平和と幸せと永遠の光に満ちたものになりますように。」

映像の終わりは毎年クリスマスキャロルで締めくくられますが、今年はお話の中にもあった O Little Town of Bethlehem でした。

読者の皆様にとって、2023年が幸せな光に満ちた年となりますように。


《ライターさんの告知情報》1月14日夜

23年1月14日夜、年末に行ってきたイギリスの様子について、日英バイリンガル進行でお話しするzoom会を予定しております。お申込み受付は後日SNSやLINE公式でお知らせいたします。
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高島まき

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イギリス英語発音スクール British English House 代表。日本では数少ない正統派イギリス英語発音の専門家として定評があり、自身のスクール主...

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