イギリス映画談 ~誰でもなれる?・・・かも!『BETTER MAN―/ベター・マン』~

2025年3月28日公開

© 2024 PARAMOUNT PICTURES. All rights reserved.

イギリスにそんな大スターがいたとは知らなかった。ソロアーティストとして全世界で8,500万枚というアルバムセールスを記録したというのだから。この映画のサントラ盤で15枚目の全英No.1を記録、ビートルズと並んで歴代1位となったというのだから。
ロビー・ウィリアムスを知っていますか?

ロイヤル・アルバート・ホールでのロビー・ウィリアムス
© 2024 PARAMOUNT PICTURES. All rights reserved.

歌うシナトラから始まった

ロイヤルドルトンやウェッジウッド、エマ・ブリッジウォーターなどの陶器を生み出したイギリスのストーク・オン・トレントに、ピーター・ウィリアムスとジャネット・ウィリアムズの子どもとして、ロバート・ピーター・ウィリアムスが生まれたのは1974年2月13日。後のロビー・ウィリアムスである。しかし3歳の時、両親は離婚してしまい、姉と一緒に母との3人暮らしで育てられた。多分祖母も近くにいただろう。

おばあちゃんと子供の猿・ロビー・ウィリアムス
© 2024 PARAMOUNT PICTURES. All rights reserved.

父親のピーターは歌うことが好きだった。特にフランク・シナトラを好きだった。家のテレビでシナトラが歌っているのを見ているところから始まる。ロビーも一緒に見ているから、離婚前のウィリアムス家だ。歌っているのは「マイ・ウェイ」。フランスの歌手クロード・フランソワの楽曲にポール・アンカが英語詞を付け、シナトラが歌いヒットさせたのが1969年。シナトラの代表曲の一つだ。映画の中で、大人になったロビーが父親のピーターと一緒にこの曲を歌う場面も描かれている。

父ピーターと歌う子供の猿・ロビー
© 2024 PARAMOUNT PICTURES. All rights reserved.

ロビーは猿

この映画を見てもロビー・ウィリアムスの顔を見ることはできない。子供の頃から成長して大人になり、歌手として成功するまで描かれるが、どんな時も猿として描かれている。

ロイヤル・アルバート・ホールで歌う猿・ロビー・ウィリアムス
© 2024 PARAMOUNT PICTURES. All rights reserved.

顔面だけでなく、体全体も毛におおわれている猿だ。これには見る誰もが何故?と思うだろう。
ロビーはステージでパフォーマンスをする自分を猿に例えていて、何故猿かという問いには、自分は他の人とは違うからだと答えている。監督のマイケル・グレイシーはロビーを「我々が見ているロビーの姿でなく、ロビーから見た自分自身の姿」で描きたかったと明かしている。

ネブワースの野外ロックコンサート会場で演奏する猿・ロビー・ウィリアム

© 2024 PARAMOUNT PICTURES. All rights reserved.

勿論歌っているのはロビーであり、演じているのも大人になってからはロビーだろうが、それを確かめるすべはない。
どうしてもロビー・ウィリアムスの顔を見たければ、予告編(1分31秒版)にだけほんの一瞬現れる。予告編はこの映画の公式サイト(映画『BETTER MAN/ベター・マン』公式サイト)で見ることができる。

ロンドンの各所でダイナミックな歌と踊り

リージェント・ストリートでのダンス群と前に立つ猿・ロビー・ウィリアム

© 2024 PARAMOUNT PICTURES. All rights reserved.

ロンドンのリージェント・ストリートと言えばロンドンの主要ストリートの一つ。エロスの像があるピカデリーサーカスから北上して、オックスフォードストリートと交差するオックスフォードサーカス迄のゆっくり弧を描く曲線が有名だ。このリージェント・ストリートを封鎖して、500人以上の人たちが同時に踊る場面が前半でのクライマックスの一つになっている。

リージェント・ストリートに立つ猿・ロビー・ウィリアムス
© 2024 PARAMOUNT PICTURES. All rights reserved.

映画自体は前半にはずんだ群舞が集中している。
ロンドン中部、ケンジントン公園に面して建つロイヤル・アルバート・ホールは、円形(正確には楕円形らしい)の建物が異色で目立つ建物。1871年の開場以来、様々なイベントが行われてきた。クラシックからポップス迄の音楽コンサートから、ボクシングやテニスのスポーツ、更に日本の大相撲公演が1991年以来久しぶりに今年秋に予定されていたりする。8,000人収容できるという、このロイヤル・アルバート・ホールで行われたロビー・ウィリアムスの公演も映画に登場する。

ロイヤル・アルバート・ホールでのコンサート
© 2024 PARAMOUNT PICTURES. All rights reserved.

さらに、ロンドンから北に45㎞ほどにあるネブワースの野外ロックコンサート会場で行われたロビー・ウィリアムスの公演は、3日間で37万5千人を動員という、史上No,1の記録を作った。この時の記録映像と、今回3万人を超えるエキストラによる撮影映像をミックスして、映画はこのコンサートの模様を見せてくれる。

ネブワースの野外ロックコンサート会場で逆さづりになった猿・ロビー・
ウィリアムス
© 2024 PARAMOUNT PICTURES. All rights reserved.

マイケル・グレイシーという監督

言ってみればロビー・ウィリアムスのワンマンショー的な内容に、人間味あふれる彼の半生を加えた作品に仕上げたのはマイケル・グレイシー監督。1976年オーストラリアのメルボルン生まれ。今までの映画作品には、2017年の「グレイテスト・ショーマン」しかない。今回の作品が2作目となる。どちらの作品も音楽を中心とした内容だ。

マイケル・グレイシー監督
© 2024 PARAMOUNT PICTURES. All rights reserved.

VFXの製作会社で視覚効果を手掛けた後、2002年にミュージックビデオ(MV)を初監督、それが好評で有名ミュージシャンのMVを手掛ける。コマーシャルの監督としても多くの賞を獲得、その仕事でヒュー・ジャックマンと知り合い、2017年の「グレイテスト・ショーマン」につながったという。
「グレイテスト・ショーマン」の製作時にロビー・ウィリアムスと出会い友人になったという。その出会いについて次のように語っている。

“ロビーは天性のストーリーテラーであるだけでなく、とてつもないエピソードをいくつも持っている人だとすぐに見抜きました。そのすべてが非常に魅力的かつ、彼のウィットと合わさってさらに心を掴むエピソードになっていました。私が会話の度に録音したこれらの物語が、ロビーの半生を描いたこのミュージカル映画の土台となっているのです。パワフルかつセクシーなパブリックイメージと対照的に、内向的で自意識が高く、しばしば波乱に満ちた人生との間のバランスを取る能力があるおかげで、ロビーの物語はより深く魅力的なものなっています。”

ロビー・ウィリアムスをよく知らなくても、弾んだ歌や踊りが楽しめるミュージカル映画を体験してみませんか?

『BETTER MAN―/ベター・マン』公式サイトhttps://betterman-movie.jp/

ROKU

41,753 views

海外パッケージツアーの企画・操配に携わった後、早めに退職。映画美学校で学び直してから15年、働いていた頃の年間100本から最近は年間500本を映画館で楽しむ...

プロフィール

ピックアップ記事

関連記事一覧