エリザベス女王が愛するアフタヌーンティー
女王の朝は一杯の紅茶から
即位70周年プラチナジュビリーを迎えられたエリザベス女王。
大の紅茶好きとしても有名な女王の朝は、一杯のベッドティーからはじまります。
イギリスメディアの情報によると、女王が飲むお目覚めの一杯はアールグレイ。
砂糖もミルクも入れずにストレートで飲むのがお気に入りとのこと。そして、紅茶と一緒にビスケットも用意されるそうです。
紅茶にビスケットをペアリングする習慣は古くからの伝統。
お茶がイギリスに入ったのが17世紀の1650年頃、当時は秘薬として王侯貴族たちの間で流行しました。英国王室の中にお茶を飲む文化を持ち込んだのが、チャールズ2世のもとに政略結婚としてお輿入れをした王妃キャサリン・オブ・ブラガンザ(1638~1705)。彼女はハンドルのないティーボウルで東洋からやってきた秘薬=お茶を手にし、飲む時には胃に負担がかからないようにと、パンやビスケットと一緒にいただくという習慣を宮廷内に広めたのです。
今でも紅茶とビスケットは、大の仲良し。日本でいえば煎茶とお煎餅のような関係です。
ただし、イギリスは階級社会なので、口にするビスケットも違いがありました。昔は特に、白い砂糖と粉は大変貴重なものでしたので、お茶を飲むような上流階級のかたがいただくビスケットは、真っ白で焼き色も薄めのホロホロとしたやわらかい食感。
一方、労働者階級の人々が食べるビスケットは主に保存食として発展をしたもので、日持ちを目的として水分を減らし固く焼き締めた、乾パンのようなものでした。
現在の市販のビスケットは柔らかいものが多いのですが、それでも階級によっては紅茶に浸す=ダンキングをして食べる人も多いのも事実。これは、当時の習慣の名残りともいわれています。
ちなみに、女王の起床時間は朝8時~9時頃、バグパイプの音で目覚めるそうです。
演奏するのは王室専属のバグパイプ奏者。この習慣は、1843年にヴィクトリア女王とアルバート公が初めてスコットランドのハイランドを訪れ、テイマス城に滞在したときから続くものといいます。
写真のティーカップ&ソーサーは女王がウィンザー城で愛用されているといわれている、
ロイヤルクラウンダービーのロイヤルアントワネット。エリザベス女王のお目覚めの一杯というイメージでコーディネートしてみました。
バグパイプの生演奏の音色とともにベッドティーが運ばれてくる…そんなシーンを想像しただけで心が弾みます。
バッキンガム宮殿でのアフタヌーンティー
プラチナジュビリーのイベントで、世界中の話題となったのが英国王室からのサプライズギフト、「エリザベス女王とくまのパディントンくんのアフタヌーンティー動画」です。
バッキンガム宮殿でのお茶会に招かれたパディントンくん。
ドローイングルームのティーテーブルでジェントルマンを気取るも、緊張からか数々のマナー違反を連発します。大きなティーポットから紅茶を一気飲みしてしまったり、椅子の上に立ちあがったと思ったら、ケーキのクリームをバトラーの頬に飛ばしてしまったり…。
様々な失態を見かねてバトラーは咳払いで注意をしますが、女王は微笑み、「大丈夫よ」
と優しい声をかけます。
ケーキを台無しにしてしまったパディントンくんは、帽子の中にこっそりと忍ばせておいた非常用のマーマレードサンドイッチを女王にすすめます。
パディントンくんといえば、マーマレードが大好物。スーツケースの中には、ルーシーおばさんが作ったマーマレードの瓶がぎっしりと詰まっていて、普段から緊急事態に備えて、帽子の下にマーマレードサンドを隠し持っているのです。まさか、女王のまえでそれをお披露目することになるとは…。
それ以上に驚いたのが女王のひとこと。
「 私もね、ここにあるのよ 」そう言いながら、ご愛用のロウナーロンドンのハンドバッグからマーマレードサンドを取り出してみせたのです。まさかのまさか、女王まで非常用のマーマレードサンドを忍ばせていたとは!
バトラーが窓の外をのぞくと響いてきたのが伝説のロックバンドQueenの名曲”We Will Rock You”ドン・ドン・パッ にあわせた国民の手拍子。
するとエリザベス女王もリズムにあわせて、スプーンでティーカップを叩きます。
最後にパディントンくんは帽子を取って、「 女王陛下、プラチナジュビリー、おめでとうございます。そして、心からすべてに感謝いたします。」とジェントルマンの姿を見せます。
何とも微笑ましいショートムービーですが、<バッキンガム宮殿のアフタヌーンティー>という視点で見てみると、宮殿バックヤードでの紅茶の入れかたやバトラーのトレイでの運びかた、そしてロイヤルドルトンのティーセットなど、また違った角度から色々な発見がありそうです。
エリザベス女王の午後のお茶
そして、エリザベス女王が毎日欠かさないものがアフタヌーンティーです。
そう聞くと、女王はじめ、王室や貴族の人々は毎日3段スタンドのアフタヌーンティーをしているの?と思うかもしれませんが、それは間違ったイメージ。
王室専属シェフの話によると、四季を彩るさまざまなレシピがお目見えします。
一口サイズのきゅうりやサーモン、卵のフィンガーサンドイッチや、イギリスのペニー硬貨くらいのサイズに円形にカットしたパンにジャムを挟んだジャムペニーなど、少なくとも2種類のサンドイッチ。そして、女王の好きなチョコレートケーキやビスケットなどが用意されるそう。
つまり、フルアフタヌーンティーではなく、アラカルト。紅茶と一緒に数種類のフィンガーフーズをつまみ、午後のティータイムを過ごされているようです。
ただし、食べる順番に関しては、「セイヴォリー(塩味)はペイストリー(甘味)より先」は徹底されているようで、健康に良いものを食べてから甘いものを食べるべき、完璧なティーテーブルには、その両方の組み合わせが必要…、とも語っています。
紅茶を飲みながら、生活のリズムを刻むイギリス流ティーライフ。
そこにも、女王のモットーでもある英国らしい「伝統と継承」が色濃く感じられますよね。