イギリスで驚いた犬事情! Part.2 ~意外だったイギリス人男性のペット観~
パート1でご紹介した通り、日本から愛犬を連れて渡英した筆者ですが、渡英したばかりのころはイギリスと日本のペット事情の違いから驚く事が多々ありました。
今回はそのパート2という事で、イギリスに来てみて初めて知ったイギリスの犬事情をご紹介していきたいと思います。

意外だったイギリス人男性のペット観
イギリスに来てから絶えず感じるのは、とにかく犬好きのイギリス人が多いという事。愛犬を連れて外に出れば、沢山の人が声をかけてくれ、目を細めて愛犬を眺めてくれ、何か困った事があれば助けてくれる。基本的には、犬を飼っていた事によって心温まるエピソードの方が断然的に多いのですが、そんな愛犬家の多いこのイギリスで一つとても意外だった事がありました。
ダンディーなイギリス人紳士の衝撃なひとこと
今から10数年前の事ではありますが、当時、筆者はロンドンのCityで日系の商社に勤務しておりました。そこそこ大きな会社で従業員の約半数が英国人、残り半数が日本人、アジア人、ヨーロッパ人と多国籍な会社でした。
筆者の所属する部署の隣には、英国人でほぼ占める別部署があり、その部署の部長もまた英国人という日系の商社にしては珍しく英国人で占める割合の高い部署でした。 その部署の部長は、いかにもイギリス人紳士といった感じでいつもダンディーな服装と気難しさとイギリス人らしいウィットにとんだユーモアを持ち合わせた60代手前の男性でした。
ある日、その部長が筆者の席に浮かない顔をしてやってきました。
そして深刻な表情で、
「まさこ、我が家に大変な悲劇が起きた」
と言うではありませんか。
てっきりご家族に何か不幸でもあったのかと思い、
「え、何があったのですか?」と心配して聞くと
「妻が君が飼っているのと同じ犬を買ってきてしまった」
と言って、筆者のデスクパソコンの待ち受けになっている我が家の愛犬ミニチュアダックスフンドの写真を指差しました。

思わず「は?」
悲劇と言っていたけど、何かの聞き間違いかと思い
「ダックスフンドを飼われるんですか!? 素晴らしいじゃないですか!?ダックスフンド、可愛いですよね」と同じ犬種を飼う事になった事に喜びを感じた筆者は目を輝かせてその部長に言うと
「とんでもない!!考えてみてくれ、こんないい年をした男がこんな愛玩犬のような愛らしい犬を散歩に連れていく事になるんだぞ!?なんて悲劇だ!」
と本気で憂いているご様子。
「僕はもっと大きくて立派な犬が欲しかったんだ。こんな可愛いだけの犬なんて・・・。 恥ずかしくて散歩なんて出来ない」
と同じ犬種を飼っている筆者に喧嘩を売っているのか?と言いたくなる暴言。
しかも、それが失礼な発言になるという事を全く気付いていないかのような落ち込みようです。

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そして大きなため息をつきながら隣の部署に戻っていかれました。
犬はアクセサリー?
今までイギリス人は犬をとても愛していて、そしてどちらかと言えばその接し方は、ぬいぐるみのように可愛がるのではなく「犬」の尊厳を守り「犬は犬らしく」愛しているように感じていたので、この部長の発言には非常に驚きました。
「愛玩犬のような愛らしい犬を散歩するのは成人した男性として恥ずかしい」
「自分のような紳士が連れて歩くには大きくて立派な犬がふさわしい」
と彼は言っているのです。
まるで「犬」をアクセサリーのように思っているみたいではありませんか?
この時は、このイギリス人部長だけの価値観だろうと憤慨していたのですが・・・。
ある時、イギリス人と日本人カップルの友人宅へ犬連れで遊びに行かせていただく事がありました。
その日は、友人宅近辺の公園で愛犬をお散歩させてから友人宅でランチをご馳走になる予定だったのですが、公園を散歩中、筆者と友人が話に夢中になり、愛犬のリードは友人の旦那様が持っていてくれていました。
あまりにも話に夢中になっていた事に気が付きふと後ろを振り返り、友人の旦那様と愛犬の様子を伺うと、なんと旦那様はとても憂鬱そうな表情。
それに気づいた友人も「どうしたの?」と声をかけると
「みんなが僕とミルキー(筆者の愛犬の名前)を見ていく。それにさっきから沢山の人に可愛い犬だと声をかけられる・・・」と憂鬱そうに言ったのち・・・
「まるで僕がこんな可愛らしい犬を飼っているみたいで恥ずかしい」と言い放ちました!

思わず「ジーザス、お前もか・・・」と言いたくなりました。
彼はまだ20代後半の若い男性だったのですが、前述の部長同様、「愛らしい犬を連れて歩くのは男性として恥ずかしい」と言っているのです。
彼もまた自分で犬を飼うならラブラドールやゴールデンなどの大きな犬の方がいいというのです。

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筆者がびっくりしたのは、好きな犬の種類は人さまざまですし大きな犬を好むのはあくまでも個人の自由なのでいいのですが、その理由がお散歩している時にさまになるからという理由だった事です。
イギリス人男性が意外にも「犬」をアクセサリー感覚に考えていた事に衝撃を受けました。
とはいえ、ここまではたまたま身近にいた、たった二人のイギリス人男性のご意見。
試しにイギリス人の旦那様がいらっしゃる別の友人に、この話をしてどう思うか聞いてもらったところ、彼もまたチワワのような小さくて可愛いだけの愛玩犬を連れて歩くのは恥ずかしいという意見だったそうで、犬を飼うなら断然大きい犬が良いとの事。
ここまででもたった3人のイギリス人男性が言っている事なので、イギリス人男性全体の意見とは全く言えませんが、少なくとも小さい可愛らしい犬を連れて歩くのは恥ずかしいと思っている男性が身近に3人いたという事実は確かです。
たった3人とは言え、飼っている犬の種類で見栄を張りたいイギリス人男性もいるのだなぁと興味深い発見でした。

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イギリスと日本の人気の犬種の違い
ちなみにイギリスで人気の犬種トップ10は以下の通りです。
1位 ラブラドールレトリバー
2位 フレンチブルドック
3位 コッカ―スパニエル
4位 ミニチュアダックスフンド
5位 ブルドック
6位 ゴールデンリトリバー
7位 イングリッシュスプリンガースパニエル
8位 ジャーマンシェパード
9位 スタッフォードシャーブルテリア
10位 ミニチュア・シュナウザー
【引用】Most Popular Dog Breeds in the UK in 2025 https://articles.hepper.com/most-popular-dog-breeds-uk/
また、日本での人気犬種トップ10は下記の如くのようです。
1位 ミックス犬 (16kg以下の小型犬)
2位 トイプードル
3位 チワワ
4位 柴犬
5位 ポメラニアン
6位 ミニチュアダックスフンド
7位 ミニチュア・シュナウザー
8位 フレンチブルドック
9位 マルチーズ
10位 ヨークシャーテリア
【引用】人気飼育犬種ランキング2025年版 https://wanpedia.com/dog-ranking-2025/
やっぱりイギリスに比べて小型犬が多い順位ですね。
日本とイギリスの住環境も影響していると思われます。

犬を飼う事はステータスのひとつ
また、これも知人のイギリス人から聞いた話ですが、イギリスでは犬を飼う事がステータスでもあるそうです。
なぜなら、大型犬であればあるほど、広い庭に大きな家に住んでいる必要があり、高額な獣医(またはペット保険)なども支払えないといけないので、犬を飼えるという事はある程度裕福であるというステータスになるという訳です。

その一方でホームレスの方が犬を連れて物乞いをしている姿もよくみかけます。嘘か本当かわかりませんが、中には同じ犬をホームレス仲間同士で貸し合っているという話も・・・。もちろん、犬連れという事で同情をひきお金をもらえやすくなるという理由だそうです。
また、10数年前の話になりますが、いわゆる反社会的な若者が狂暴な犬を連れて他人を攻撃したり脅しに使うという事が社会問題になった事がありました。
その時もニュースなどで犬を「脅しのアクサセリーとして連れ歩く」というような表現が使われておりました。
下記の犬種は現在イギリスでは飼う事を禁止されています。
① ピットブルテリア
② 土佐犬
③ ドゴ・アルヘンティーノ
④ フィラブラジレイロ
⑤ XLブリー
国によってペット事情は様々ですが、一つだけ言える事はどんな事情であれワンちゃんにとっての幸せは飼い主さん次第というのは世界共通。
イギリスのワンちゃんも、日本のワンちゃんもそれぞれの環境にあった飼い方が出来ればと思っております。