ケント州のワイナリーを訪れよう”ファミリー経営の小規模ヴィンヤード”編《Discovering English Wine》

新規のワイナリー、ヴィンヤードが次々と生まれているイギリスですが、その中には「小規模サイズ」そして家族で経営をされている所も多くあります。
今回はまるで知り合いのお宅に招かれたような温かみを感じるおもてなしが嬉しい、家族経営の素敵なヴィンヤード2軒をご紹介します。

ウッドチャーチ・ワイン・エステート(Woodchurch Wine Estate)

ウッドチャーチ・ワイン・エステートのブドウの木

まずウッドチャーチ・ワイン・エステート(Woodchurch Wine Estate)のご紹介から。
グラハムとドナ・バーバー夫妻(Graham and Donna Barbour )によって2009年設立され、2010年に1万本のブドウの木を海抜20メートルの場所に植えたところから始まりました。
除草剤や殺虫剤は使用せず、その他の化学薬品も最小限に抑えるよう努力されているほか、野生動物や野生の草花を育てるため、ブドウ畑の外周の草丈を長く保つなど、自然のバランスを保ち、環境に優しいブドウ園を運営されています。

初ヴィンテージは2015年、様々な受賞歴を持つスパークリングワイン、そしてスティルワインを生産しています。
*こちらには醸造設備はないので、英国を代表するワインメーカーにより、最新鋭のワイナリーで醸造されています。

どんなワインが造られているの?

クラシック・ブリュット(左端)をはじめとしたウッドチャーチのワイン

クラシック・ブリュット NV(Classic Brut NV)は2024年デキャンター・ワールド・ワイン・アワード(Decanter World Wine Award)で「銀賞」受賞。同じく、2024年 小規模生産者イングリッシュワインのアワード(Independent English Wine Awards)でも「銀賞」を受賞しています。

「クリーミーで鮮やかで、繊細な泡立ち。口に含むと美しいサリニティ(塩味)と、豊富なペストリー、パン菓子のニュアンス、ストーンフルーツ、レモンシャーベットが感じられる。」 デカンター・ワールド・ワイン・アワードより
“Creamy and bright. with delicate bubbles. A lovely salinity on the palate with plenty of pastry, bready notes, stone fruit and lemon sorbet.” Decanter World Wine Awards 2024

ロゼ・ブリュット 2020

ロゼ・ブリュット 2020(Rosé Brut 2020)も同じく2024年デキャンター・ワールド・ワイン・アワード銀賞を受賞しています。またこのワインは英国で最高のワインメーカーの一人、ダーモット・スグルー氏(Dermot Sugrue)によって造られているという事もあって「飲んでみたい」と思われる方も多いのでは?

私が好きなシャルドネ・ブリュット

個人的にはChardonnay Brut 2017も大好きです。

他にもシャルドネ、ロゼ(シャルドネ50%、ムニエ50 %) 、ブレンド白ワイン(バッカスとシャルドネ )も作られています。

ローカルフードを使った美味しい軽食

ウッドチャーチで楽しめるローカル食材を使った軽食

私がこのヴィンヤードに通ってしまう魅力の一つが、「自然の中の静かさ」、そして「ホッとする空間」を楽しみながらワインを味わえる事。またケント州、ローカルの食材を使ったチーズボードやシャルキュトリなど、とっても美味しい「軽食」ものんびりと味わえる事にもあります。
土曜日は薪窯のピザも提供されていますよ。

ウッドチャーチのテラス席ではブドウ園の景色を楽しみながらの食事が

レストランは室内とバルコニー&テラス席があります。どちらの席も開放感があり、目の前のブドウ園を楽しめます。

スタイリッシュな内装のテイスティングルーム

こちらはティスティングルーム(室内)の風景。スタイリッシュな内装です。

そして開園時間にも注目なんです。
イギリスの小規模のワイナリーやヴィンヤードは土日のみと、週末しかオープンされていない所も多い中、こちらはなんと木曜から日曜まで、11am~ 5pmの週4日間一般客を受け入れてくれています。

ウッドチャーチのブドウ畑

ツアーは、地図をもらって自分たちでブドウ園を散策する「セルフガイドツアー」と、創業者でオーナーのグラハム・バーバー氏によるテイスティング付きのガイドツアーがあります。
ガイドツアーは土曜日を中心に行われていようです(4種のワインのテイスティング付きで£25)。
予約はこちらから可能:https://woodchurchwine.co.uk/products/tours 
プライベートツアーも3ヶ月前以上の早めの申し込みを受け付けています。

50mlグラス3杯楽しめるWine Flightは£12.5
クラシック・ブリュット 、ロゼ・ブリュット& ロゼ 

ブドウ園の美しい風景、静かな空間にて是非美味しいワインと軽食を楽しんでみてくださいね!

Woodchurch Wine Estate
Susan’s Hill
Woodchurch
Ashford TN26 3RE

  • Tel: 01233860276
  • ウッドチャーチ・ワイン・エステート公式サイト:https://woodchurchwine.co.uk/
  • 開園時間:木曜ー日曜 11am~ 5pm

ウェイファーラー・ワインズ (Wayfarer Wines)

お次はイギリスでは珍しい「スティルワインに特化した」ヴィンヤード&生産者のウェイファーラー・ワインズ(Wayfarer Wines)のご紹介です。

ウェイファーラーのワイン

ウェイファーラー・ワインズは、アシュフォード家による家族経営の小規模のブドウ園です。

イングリッシュスパークリングワインに注目が集まる中、「ケント州からから傑出した、イングランドで最高のスティルワインを!」というビジョン、”量より質” をモットーと共に、まさに「スペシャルな」スティルワインの生産者として数々の素晴らしいワインを生み出しています。

【スティルワインとは】私たちが普段飲んでいる泡立たないワインの総称です。泡立つワイン(スパークリングワイン)と区別するために使われる言葉です。

2016年、ジェフ・アッシュフォード氏 (Jeff Ashford)はソフトウェア業界で成功し退職した後、家の裏手に3,000本近くのワインの木を植えたのがウェイファーラー・ワインズの歴史の始まりとなりました。

こちらはまだ数年の若いブドウの木たち

ジェフの息子で、現在ヴィンヤードのマネージャーでもあるマット・アシュフォードも、父親のジェフ氏と同じく、英国の卓越したブドウ栽培とワイン醸造学の拠点ともいえるプラムトン・カレッジで学びました。アシュフォードファミリーのエマ、カレン、リンダがそれぞれの得意分野を活かし、またヴィンヤードドッグとして活躍するメープルとクローバーの2匹も加えて、ウェイファーラー・ワインズは家族ぐるみで運営されています。

私自身、ウェイファーラー・ワインズの存在を知ったのは3~4年前なのですが、初めて口にしたのは2024年とやや間が空いてしまいました。
「素晴らしいクオリティーのスティルワインの生産者が生まれたよ」とローカルタクシーの方に教えてもらっていたのにも関わらず、タイミングが合わずにその時は訪れることができませんでした。数年後にたまたま訪れたケント州のイングリッシュワインの専門店にて、「オススメのワイン」と紹介いただくまで、口にする機会を設けることをしなかった自分を叱ってやりたいと今では深く後悔しております(笑)

その時に味わったワイン 「ワンダリング・ウェイファーラー ・バッカス2022(Wandering Wayfarer Bacchus 2022)だったのですが、このワインはイギリスワイン協会が主催するコンペティション2024年WIneGB Award、そして “Kent Wine of the Year”とともに金賞を受賞し、あっという間に売れ切れてしまいました!

あっという間に売れ切れのワンダリング・ウェイファーラー ・バッカス2022
現在は2023年ヴィンテージが売り出されている

今現在はWandering Wayfarer Bacchus 2023を始め、3種のロゼ、ピノ・グリ、シャルドネ、バッカス&オルテガのブレンド白ワインなど7種が販売されています。

ウェイファーラーを訪れてみよう

ショップ兼テイスティングルームの建物

小さなヴィンヤードですが、可愛らしいショップ兼テイスティングルームを併設しています。
ワインはもちろんチーズボードややシャルキュトリなども一緒に楽しむことができます。

ショップの棚にならむワインの数々

ショップでは様々なチーズや、自家製の蜂蜜なども売られています。

ブドウ畑の横にベンチ、テーブルやパラソルが用意されている

ブドウ畑の横にはいくつかのベンチやテーブルもあります。
天気の良い日は外でいただくのもオススメです。

ヴィンヤードツアー

ヴィンヤードは金曜~日曜(祝日)にオープンで、ワインティスティング付きのヴィンヤードツアー£20やオイスター&ワイン、BBQ&ワインなどの特別イベントも時々開催されていますので、ぜひ公式サイトのカレンダーをチェックしてみてください。

Wayfarer Wines
Highfield Farm
Lower Susans Hill
Little Robhurst
Woodchurch
Kent
TN26 3TA

  • Tel: 01233 220314
  • ウェイファーラー・ワインズ公式サイト:http://www.wayfarerwines.com
  • 開園時間:金曜~日曜(祝日)11am~5pm

ケント州のワイナリー 場所と行き方

今回ご紹介させていただいた2つのヴィンヤードは歩いて25分程度、車で2分というお互いとっても近い距離に位置しています。

そして、以前ご紹介したチャペル・ダウン(Chapel Down) やガズボーン・エステート(GUSBOURNE ESTATE)からも車で13~15分と近い場所にありますので、私は午前午後に分けて一緒に訪れることも多いです。

小規模ながらどちらも軽食を楽しめるので、まずはこちらでワイン&軽食、そして午後はチャペル・ダウン(こちらもレストランはありますが)、ガズボーン・エステートなどといったホッピングも楽しめるかと思います。朝から頑張れば、急ぎ足になりますが4つのヴィンヤードを回ることも可能です。

ロンドンからはセントパンクラス駅(London St Pancras) から毎30分ごとに出ている特急電車でアシュフォードインターナショナル駅(Ashford International)まで36分、そこからヴィンヤードまではタクシーで20分ほどと、アクセスも良い場所にあります。私も何度がタクシーで回っていますが、事前に予約して廻ればとてもスムーズにヴィンヤード&ワイナリーホッピングを楽しめますよ。

ぜひ、みなさまも季節の良い夏から秋にケント州のワイナリーへ足を伸ばしてみてはいかがでしょうか!

大島理恵子

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英国サリー州在住 英国メディカルハーバリスト/アロマセラピスト/リフレクソロジスト 1994年英国に移住。 ロンドン市内のセラピールーム及び癌センターで施術...

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