『ジェイン・オースティン』ゆかりの地を訪ねて

19世紀初めの世相を表現した作家、ジェイン・オースティン

ジェイン・オースティン(Jane Austen)と言えば19世紀初めのイギリスのアッパーミドル階級の人々の社会構成、特に当時の結婚観を、少し皮肉を含めて表した作家です。
するどい洞察力で観察してはいますが、その作品は愛情にあふれています。彼女の作品の中でも「高慢と偏見」「分別と多感」「エマ」などは昔から映画やテレビドラマにもなっていて、いつの時代でも人々を魅了しています。

ハンプシャー、スティーブントンでの幼少時代

ジョージアン時代の1775年に生まれ、41歳と言う短い生涯の中で後世に残る数々の作品を残したジェイン・オースティンは、ハンプシャーのスティーブントンで牧師の娘として生まれ、子供時代を牧師館で過ごします。

スティーブントンの村の看板
スティーブントンの村の看板

スティーブントンの村の入り口にある看板には「ジェイン・オースティンの生誕地」と書かれています。

聖ニコラス教会
ジェインの洗礼の儀式が行われ、また彼女が礼拝に通っていた聖ニコラス教会
聖ニコラス教会の内部
聖ニコラス教会の内部 左に花で飾られたジェイン・オースティンのメモリアルタブレット(記念額)がある

驚きのバース移住

父が退職した後、一家は一時的に保養地であるバースの町に移り住むことになりますが、田舎育ちのジェインはその話を聞いた時にあまりのショックで気絶してしまったという話は有名です。
実際にバースでの生活がジェインにとって幸せなものであったかどうかは専門家が議論するところです。でも、当時おしゃれな町であったバースに結婚相手を求めてやってくるアッパーミドル階級の人たちの様子を彼女は細かく観察し、それが後の作品に大いに反映されていることは否定できません。

エイヴォン川にかかるパルトニー・ブリッジ
1774年に完成したバース市内のエイヴォン川にかかるパルトニー・ブリッジ
ジェイン・オースティンが1801年から1805年まで住んだバースの町

晩年の生活を送ったチョートン

父の死後、一家はサウサンプトンに移り住みますが、その後、裕福な家庭の養子になった兄がチョートン村で所有していた家に移ります。ここが仮住まいを繰り返すジェインにとっては最後に出会った理想の住処となるのです。

ジェイン・オースティンが晩年を過ごしたコテージ
ジェイン・オースティンが晩年を過ごしたコテージ

ジェインが最後に落ち着いた理想の住処、チョートンのコテージです。

ジェイン・オースティン・ハウス博物館

ジェイン・オースティン博物館の看板
壁には、ジェイン・オースティン・ハウス博物館の看板が

現在は、ジェイン・オースティン・ハウス博物館になっています。
では中に入ってみましょう。

ダイニングルーム
ジェイン・オースティン・ハウス博物館内のダイニングルーム
ジェイン・オースティン・ハウス博物館内のテーブル
執筆に使われたテーブル

ダイニングルームに置かれたテーブルで、オースティンは朝食後執筆に励みました。

ジェイン・オースティン・ハウス博物館内のベッド
ジェインのベッドルーム

ジェイン・オースティンを思いながらカフェでお茶を飲むひととき

ジェイン・オースティンが住んだ家の向かいは、現在カサンドラズ・カップというティールームになっています(Cassandra’s Cup )。
カサンドラとはジェインの母、そして姉の名前です。ここでお茶を飲みながら過ごす時間・・・・・「向かいのコテージから、広いひさしのボンネットをかぶったジェイン・オースティンが籠を下げてヒョイと表れるに違いない。」そんな錯覚に陥るのは私だけでしょうか?

カサンドラズ・カップのティールームの中からジェイン・オースティン・ハウス博物館を眺める
カサンドラズ・カップのティールームの窓辺でお茶を飲みながらからジェインの住んだコテージを眺める
カサンドラズ・カップのティールームの内部
カサンドラズ・カップのティールームの内部
カサンドラズ・カップのティールームの内部

当時としては稀有な考えだったジェイン・オースティンの結婚観

ジェインが生涯で一度だけポロポーズされた相手は広大な土地を所有し、ジェインにとっては将来が保障された結婚になったことでしょう。ところが彼女は一旦結婚を受け入れたにもかかわらず、翌日には断っています。後に姪の一人から結婚の相談を受けた際に、「愛情のない結婚は避けた方がいいのではないかしら?」というアドバイスをしています。

女性は自ら生活の糧を作るのではなく、結婚によって得るものという当時の中流、上流社会の風習や習慣に流されることなく、本当の幸せを真に考えたジェイン・オースティンの勇気に大きな拍手を送りたい気持ちです。

毎年開催されるジェイン・オースティン・フェスティバル

チョートンに移り住んで6年経った頃からジェインは体調を崩し、治療のためにウィンチェスターに行きます。そこで41歳という短い生涯を終え、ウィンチェスター大聖堂に埋葬されました。あまりに短すぎる一生でしたが、彼女のレガシーはその後もずっと生き続けることでしょう。

世界中のジェイン・オースティンが集まるジェイン・オースティン・フェスティバルは毎年バースの町で10日間にわたって行われます。
https://www.janeaustenfestivalbath.co.uk/

ジェイン・オースティン・フェスティバルで仮装した人々
バースにゆかりのあるイギリスの小説家ジェイン・オースティンのフェスティバル
まるで作品の中から抜け出したようなコスチュームに身を包んだジェイン・オースティンのファンが集まります

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高慢と偏見(上)(ちくま文庫)
ジェイン・オースティン (著), 中野康司 (翻訳)

¥935(Kindle版)
¥1,045(文庫)
上巻と下巻の2冊構成、下巻はこちらより

元気はつらつとした知性をもつエリザベス・ベネットは、大地主で美男子で頭脳抜群のダーシーと知り合うが、その高慢な態度に反感を抱き、やがて美貌の将校ウィッカムに惹かれ、ダーシーへの中傷を信じてしまう。ところが……。ベネット夫人やコリンズ牧師など永遠の喜劇的人物も登場して読者を大いに笑わせ、スリリングな展開で深い感動をよぶ英国恋愛小説の名作。

エマ(上)(ちくま文庫)
ジェイン・オースティン (著), 中野康司 (翻訳)

¥935(Kindle版)
¥1,210(文庫)
上巻と下巻の2冊構成、下巻はこちらより

エマ・ウッドハウスは美人で頭が良くて、村一番の大地主のお嬢さま。私生児ハリエットのお相手として、美男のエルトン牧師に白刃の矢を立てる。そしてハリエットに思いを寄せる農夫マーティンとの結婚話を、ナイトリー氏の忠告を無視してつぶしてしまう。ハリエットはエマのお膳立てにすっかりその気になるのだが――。19世紀英国の村を舞台にした「オースティンの最も深遠な喜劇」。

分別と多感 (ちくま文庫)
ジェイン・オースティン (著), 中野康司 (翻訳)

¥1,650(文庫)

「分別」のある姉エリナーと、「多感」な妹マリアン。エリナーが思いを寄せるエドワードは、ぱっとしないが誠実な青年。マリアンが激しい恋をするウィロビーは、美貌と気品を兼ね備える情熱の男性。この似合いのカップルに、それぞれ不似合いな人物が複雑に絡み、姉妹の結婚への道は紆余曲折する。19世紀英国の田園を舞台に繰り広げられる恋愛小説の傑作。

木島タイヴァース由美子

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1977年英国政府観光ガイド資格であるブルーバッジを取得。以来、現在にいたるまでイギリス全土にわたって旅行者を案内。2015年にカルチャーツーリズムUKを立...

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