料理が苦手な義理母が作ってくれたケジャリー
このお料理は私にとってイギリス料理に興味を持ったきっかけになった思い出の1品。
私が国際結婚を決める前、主人が「イギリスのことを気に入るか分からないから、一緒に行こう」との提案で婚前旅行をした。初めてイギリスで泊まった先は義理の母のところだった。彼女はキャリアウーマンで女子の全寮制寄宿学校の校長だった。私は彼女を誰かに例えるなら鉄の女「マーガレットサッチャー元首相」ばりの出来る女性だと尊敬している。しかし主人から話は聞いていたが、料理はからっきし苦手らしかった。仕事はできるが、日々忙しく、料理と向き合う時間がなかったのも容易に想像できた。
初対面の義理の母もあっさり「私は料理が苦手なの。」と素直に告白。ただし、日本人の考えるお料理が苦手というレベルをはるかに超えていた。茹で過ぎの野菜と焼きすぎた肉料理、アルデンテとは程遠い柔らかいパスタの上に市販のソース。彼女も一生懸命作ってくれてのは伝わるのだが、そろそろ食事を期待するのをやめそうだった3日目。あれ?これはなに?美味しいじゃない!と予期せぬパンチを食らったのがこのお料理である。
イギリス料理「ケジャリー」
細かいことを言えば、義理母はライスは炊くのではなく茹でて作っていたので柔らかく、パーフェクトな米の状態ではなかったにせよ、全体的な味のバランス、使っている食材が、とにかく日本人に合うものだった。海外旅行のときにやはり米が食べたくなるというのも美味しいと感じた理由ではあったが、それにしてももっと食べたい!と思った義理の母の最初
のおもてなし料理だった。
一言でこの料理を表現するなら【魚のカレーチャハン】。イギリスは島国なので魚の種類は豊富である。フレッシュな魚はもちろん売っているが、燻製という製法によって生臭さを押さえ、調理しやすくして売っている魚も多い。このケジャリーに使うタラも、燻製にしたもので作るのが本場の味なのだ。塩漬けや生のタラよりも燻製にすることでより味に深みと熟成されたうまみが凝縮される。この燻製のタラとゆで卵を具にして作るのだ。燻製の塩気を感じるタラとゆで卵のやさしい風味と食感がとてもよいハーモニーをかもし出している。バターで炒め、そこにカレー粉を加えて更に炒めると食欲をくすぐる香りが家中に広がる。彩りのパセリにしてもイギリスにしては気が利いているではないか。
アングロインディアン料理
イギリス料理の中にアングロインディアン料理と言うカテゴリーがある。これは植民地だったインドからの影響を受けたもので、イギリスには数多くカレーやスパイスを使う料理やお菓子が存在するのである。ケジャリーはイギリス領インド帝国から帰ってきたイギリス人によりイギリスに持ち込まれたと言われている。インドではキチュリ、キチャリと呼ばれ、お米やレンズ豆を主に使った料理が元になってのだそうだ。
思いがけない美味しさに出会えた私。ここでイギリス料理をもっと知りたいと好奇心が湧き上がった。イギリス料理に属するアングロインディアン料理のエキゾチックな魚のチャーハンに感謝の気持ちだ。料理のポイントはしっかり炒めて玉ねぎ本来の甘さを引き出す。こうすることでカレーのスパイシーな中に甘みを感じてアクセントになるのだ。
私が太鼓判を押すこの1品。だまされたと思って一度食べて頂きたい。
作りやすいように生のタラを使うが、燻製のタラを使うとより本格的な味わいで楽しめる。
その場合は燻製のタラは塩味がすでに付いているので、塩の量を少なくすることをお忘れなく。
ケジャリーレシピ
材料 2人分
- 生タラ 250g
- 水 300ml~350ml
- バスマティライス(日本の白米でも可)1合
- フレッシュローリエ(ドライでも可)2枚
- 卵 3個
- 有塩バター 25g
- サラダ油 大さじ1
- 玉ねぎ 小1個(約100g)
- カレー粉 小さじ2強
- 冷凍グリンピース 50g
- 生クリーム 大さじ3
- 塩 小さじ1/2
- 粗挽き黒胡椒 小さじ1/4
- パセリ 10g
- レモン汁 大さじ1強
作り方
- 鍋に皮と骨を取り除いたタラを入れ、水、ローリエを加えて強火で沸騰寸前まで温め火を弱めて約8分加熱してタラを取り出す。茹で汁は取っておく。
- 米を洗い炊飯器に入れておき、1の茹で汁を(ローリエも一緒に)普通に米を炊く分量を加えて炊く。
- 沸騰した湯の中に卵を入れて約8分茹でて水で冷やし皮を剥いて、1個は粗みじん切り、2個は4等分のくし切りにしておく。
- フライパンを中火にしてバター、サラダ油を加えて熱し溶けてきたら玉ねぎのみじん切りを加えで中火弱で焦がさないようにしながら約5分ほど炒める。
- 4の中にカレー粉を加えて更に約2分炒める。
- 5の中に2の炊いたご飯を加えて具となじませ、生クリーム、塩、粗挽き黒胡椒、グリンピースを加えて炒める。
- 6の中に軽くほぐした1のタラ、刻んだゆで卵、パセリ、レモン汁を加え、ご飯と混ざるように優しく炒める。このとき味をみて必要であれば塩(分量外)を加える。
- 7の上にくし切りのゆで卵を乗せて完成。
ポイント
出来上がったらすぐ食べずアルミ箔又は蓋をして落ち着かせてから食べるのが本格的。
《ライター》エリオットゆかりの著書紹介(一部)
★★Emma Bridgewater★★
ケジャリー(Kedgeree)の料理名がデザインされたエマ・ブリッジウォーターのプレート
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