イギリスでのフィッシュ&チップス
イギリスでは、どの村にも、町にもこのフィッシュ&チップスのお店がある。
そんな国民食とも言える料理だが、残念ながらイギリス人にとって、このフィッシュ&チップスは家で作る習慣はない。フィッシュ&チップスを食べようと思ったら、テイクアウト専門店とテイクアウト&イートイン(店内で食べられる)できるお店がある。そしてガストロパブのメニューでも見かける。揚げ物を家でする習慣がないのは、私がケータリングをしている時代にお客様から聞いたところによると、火災が怖いというのである。確かにイギリス料理には揚げ物の料理がほぼない。フィッシュケーキと言う、日本的に説明すると魚のコロッケと言える料理があるが、フライパンの深さ半分ぐらいまで油を入れる揚げ焼きに近い形で調理される。
フィッシュ&チップスのお店
このフィッシュ&チップスは老若男女に愛されている。私が見てきたイートインができる専門店の多くは、明るいガラス張りで開放的がある。誰もが入りやすいのが特徴だ。(違う店構えのお店もあるだろうが・・・)中から町の景色と雰囲気を楽しみながら食事をしている方も多い。逆に言えば外からも中が丸見えなのである。私の以前住んでいた町にもご他聞にもれず、ハイストリート(町のメインストリート)の目立つ場所にフィッシュ&チップスのお店があった。その前を通るときは自然に歩き方もゆっくりになり、横目で観察するのが私の決まった行動になっていた。そこで確信を持ったのは、老人もフィッシュ&チップスが大好き!ということ。もうかなりお年を召した方でも、大きなお皿にはみ出した大きなフィッシュと、お皿から溢れんばかりのもりもりのチップスを美味しそうにほうばる姿は微笑ましい。仲良く手をつなぎながら店に入る老年カップルやお一人様も珍しくない。そんな高齢になってから私だったら、きっと油で揚げた魚とじゃがいもをオーダーする気にはならないだろう。でも小さな頃からなじみのあるこのフィッシュ&チップスは、年齢に関係なく食べる、食べたくなる料理なのであろう。義理の父も今年90歳になるが、ガストロパブへ行くと必ずフィッシュ&チップスを注文する老紳士のひとりである。
オリジナリティーを出すための工夫
イギリスはコンテストがとにかく好きである。毎年イギリスでいちばん美味しいフィッシュ&チップスを決めるコンテストが行われる。たかが揚げ物、されど揚げ物。参加者がそれぞれこだわりを持って作るのだ。バターと呼ばれる衣のタネを作るときの材料の配分が勝負どころ。フィッシュ&チップスは衣の中に地ビール入りも多い。小麦粉をビールで溶くと、衣の中にビールの泡が程よくが入る。油で揚げたとき、泡だった部分が空洞になりすきまができた分、食べたときにサクサクとした軽い歯ざわりになる。そして、何よりイギリスの地ビールはとても味わい深い。私はイギリスの地ビールを飲むときは、飲むと言う感覚より食べて味わう感覚である。この地ビールを使うと衣の色も程よく黄金色になりやすく、風味も地ビールによってかなり違ってくるので、この地ビールの銘柄にこだわる作り手も少なくない。私は日本にいたころ普通の日本のビールで試したことがあるが、それでも美味しくできるのでお勧めしたい。
フィッシュの種類
魚は種類が豊富です。
タラやハドックと呼ばれるタラが定番で人気ですが、そのほかへイクと呼ばれるお魚も目にしする。プレイスやレモンソールなどのカレイ類もあっさりしていて美味しい。そして驚くのはハスと呼ばれるサメの一種、そしてスケートと呼ばれるエイの一種の珍しい魚まで食される。一口にフィッシュ&チップスと言ってもこれだけのバリエーションがある奥が深い料理だ。
王道フィッシュ&チップス
かりっと揚がったビール入りの衣と揚げた白身魚には、二度揚げ(三度揚げのお店もある)したチップス、茹でたグリンピースか、えんどう豆をつぶしたマッシーピーズが添えられる。タルタルソースやレモン、イギリスのモルトビネガーをかけて食べるのがイギリススタイル。モルトビネガーで一気にイギリスの香りがするとも言えるのだ。レモンだけでも十分美味しさを堪能できるが、このモルトビネガーはネットで購入できるようなのでぜひ本場の味を自宅で再現していただきたい。
フィッシュ&チップスとミルクティー
最後に、フィッシュ&チップスはガストロパブのメニューにもあると書いた通り、もちろん揚げ物とビールの組み合わせは言うまでもない。しかしイギリスのフィッシュ&チップスの専門店では、お酒類を販売できるライセンスがないお店もある。そんなとき周りを見渡すと、紅茶と一緒に頂いている方がかなり目立った。ビール大好き人間の私だが、お店のメニューにないので仕方なくミルクティーを注文。紅茶を飲みながらお料理を待つ。そして熱々のからっと揚がったフィッシュ&チップスが運ばれてくる。美味しくからっと揚がったとは言え、少し口の中が油に飽きてくる。そのときを見計らって紅茶を飲む。これがなんともいえず違和感なく美味しいのだ!
これはイギリスに来てナンバー3に入る驚きの発見でもあった。ビールも良いが、ミルクティーでフィッシュ&チップスの組み合わせもぜひお試しあれ。
フィッシュ&チップス レシピ
《「フィッシュ&チップス」レシピ》
材料 2人分
じゃがいも (でんぷんの多い男爵いもなど)___皮をむいて300g
氷水 ________適量(じゃがいもをしっかり冷すことが重要)
サラダ油 _____約500ml
タラ切り身 ___2切れ(各120~130g)
薄力粉 _________大さじ2(タラに衣をつける前にまぶす分)
モルトビネガー ___適量
冷凍グリンピース _100g
【A】(衣)*ビールは混ぜる直前に加える
┏薄力粉 ___________70g
┃ベーキングパウダー _小さじ1/2
┃塩 ______________小さじ1/2
┗ビール(冷やしておく) _110ml (炭酸の多いものでも地ビールでもよい)
作り方
*オーブンを200℃に余熱しておく。(揚げた魚の保温用)
- じゃがいもの皮をむき1,5㎝の棒切りにして、氷水に浸す。
- タラの水分をキッチンペーパーで抑え薄力粉をまぶす。
- 1の水気を切ってキッチンペーパーでしっかり拭き取る。
- 鍋に揚げ油を入れ、3を入れて低温でじっくりを約10分ほど揚げキッチンペーパーに取り出し置いておく。
- 【A】を泡立て器でよく混ぜ、2をくぐらせ中温に熱した油の中で5分ほど揚げ、バットに取り出しオーブンの中で保温する。
(揚げ時間は魚の切り身の厚みなども関係するので様子を見ながら行う) - 4を再び揚げ油の中に入れ中温でこんがり黄金色になるまで揚げて取り出す。
- グリンピースを茹でる。
- 器にフィッシュ&チップスと茹でたグリンピースを盛り付け完成。モルトビネガーと塩(分量外)をかけて食べる。