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イギリスのマーマレードの世界
~マーマレードの由来となったマルメラーダとクインスチーズ~

マーマレードの由来はマルメロで作るマルメラーダから

マルメロの実
洋ナシ形をしたマルメロ(クインス)の実

マーマレードは、ポルトガル語でマルメロのジャムを指す「マルメラーダ(Marmelada)」が由来だといわれています。
マーマレードの歴史では避けては通れない、このマルメラーダ。
まず原料となるマルメロですが、日本にも江戸時代の初めころ、ポルトガルから長崎にマルメロが入ってきたといわれており、日本でもマルメロと呼びます。ちなみに英語ではクインスです。
イギリスでは、15世紀末にポルトガルからイギリスへ木の箱に入ったマルメラーダが運ばれたといわれています。当時としてはとても高価だった砂糖とローズウォーターや麝香(じゃこう)で香りをつけたマルメラーダは、とても貴重なものでした。

カリンと似ているようで似ていない、毛むくじゃらなマルメロ

シシングハースト・キャッスルガーデンのホワイトガーデンで見たマルメロ(クインス)
若い実は、産毛がいっぱい

マルメロはバラ科の植物、日本では10月に収穫されます。一見カリンに似ていますが、洋ナシ型で表面に産毛があるのがマルメロ。日本では長野県や秋田県など寒い地方で栽培されます。マルメロとよく似た果物のカリンは、ツルッとした表面で、楕円形。11月に店頭に出回ります。両者の見分け方は、産毛と形で判断しますが、よく似ているせいか、書籍でもマルメロの事をカリンと翻訳している場合もあり、混同されがちな果物です。
マルメロを半分に切ると、カリンとよく似たジャリジャリとした果肉で、とても硬く、生で食べる事ができません。しかし、マルメロを煮ると「あらっ」という感じに柔らかくなります。これをつぶしてペースト状にし、たっぷりの砂糖とレモン汁を入れて、弱火で水分を飛ばしながら、よく煮つめ、型に入れて冷まします。そうするとマルメロにはペクチンが多いので、しっかりと固まります。
マルメロを煮て、残った液にレモン汁を入れて煮詰めると、プルッとしたジェリーになります。
ジャムのように食べますが、少し赤みがかった色あいと甘い香りで、私は大好きです。

乳製品は入っていないけれど、クインスチーズ

クインスチーズ

さて、マルメロで作ったペースト、ポルトガルではマルメラーダですが、スペインではメンブリージョ、そしてイギリスでは、クインスチーズと呼ばれます。
このフルーツチーズなるもの、リンゴで作ればアップルチーズ、プラムの一種のダムソンで作ればプラム(ダムソン)チーズと呼びます。
チーズといっても乳製品は入りませんが、チーズのような見かけや硬さなので、そんな名前がついたのでしょうか。
クインスチーズは、薄くスライスして食べてみると、クインスの凝縮した濃厚な味わいと甘さ。フルーツの羊羹といった感じですね。デザートとしてそのまま食べたり、チェダーチーズやブルーチーズ、羊のミルクで作られたマンチェゴチーズと一緒にあわせて、または肉料理の煮込みに隠し味で入れたり、好みですがアップルパイの中に少し入れたりします。

ポークパイとクインスチーズ

パクストン&ウィットフィールド

今でこそ、クインスチーズを知っていますが、イギリスの保存食を調べ始めた頃は、私にとって未知なる食材でした。
その頃、ロンドンのセント・ジェームス地区にある「パクストン&ウィットフィールド(Paxton & Whitfield)」のお店へ立ち寄った時のこと。ここは王室御用達のチーズの専門店として、とても有名なお店です。店内には、たくさんのチーズが並び、その香りが漂っていました。チーズ好きにはたまらないお店ですね。

一番右側のビンがクインスチーズ、手前の包みがポークパイ

私はここで販売している、メルトン・モーブレーの町で作られた伝統的なポークパイが買いたくて探していたら、そのポークパイと一緒に置いてあったのが、クインスチーズ。
これがあのクインスチーズだと、発見した嬉しさで、すぐにレジへ直行しました。ポークパイとクインスチーズの組み合わせを見て「ファンタスティック!」と言葉をかけてくれた店員さん。「このお店で買ってよかった」そんな気分になるように、私に気を遣ってくださったのかもしれませんが、その言葉を聞いて、塩味のポークパイと甘いクインスチーズは、ベストなチョイスなんだと嬉しくなったのでした。

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菓子の材料として、肉料理のソースとしてもお勧め。
生ハムやチーズと挟んで、手軽にピンチョスとしていかがですか。

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