ポッテッド・シュリンプ(Potted Shrimp)の存在を教えてくれたイギリス人夫婦
イングランド西北部にあるランカシャーと言う場所が発祥と言われる。このお料理は、最近初めて食べた。簡単で美味しくて今まで食べていなかったことを激しく後悔したイギリス料理だ。
主人の親友ご夫婦はかなりの美食家である。子供がいらっしゃらないのもあり、自由に好きなことができる裕福な生活環境だ。二人でいつも仲良く世界を旅しながら美味しいものを食べ歩くという夢のような生活をしている。その彼らが、良質の美味しいと言われるものを手に入れては、私たち家族を招待しておもてなしをしてくれるのである。もちろん、私もこのご夫婦をお招きして、出汁を取り、本格的な和食を丁寧に作っておもてなし返しをする。
言ってみれば、料理の文化交流会ともいえるお付き合いだ。
毎回彼らは本格的なイギリス家庭料理を作ってくれる。なぜなら、彼らは私が日本でイギリス料理を紹介する仕事をしていると知っているのだ。
ポッテッド・シュリンプの美味しい食べ方
イギリスの典型的なディナーの流れは前菜、主菜、デザートという3ステップである。このポッテッド・シュリンプは前菜に出されるお料理だ。手短にこの料理を要約するのなら、「海老入りバター」である。溶かしたバターに小えび、スパイスを加えて再び冷やし固めたものである。驚くほど簡単だ。食べ方は、かりっとトーストしたパンにたっぷりこの海老入りスパイスバターを塗りつける。バターが溶けなければならないのでパンはあくまで温かく。パンにじゅわっと染みるスパイシーなバターと、パンの上にちょこんと残る小えび。それをがぶっと食べる瞬間のあの味わったことのないコンビネーションに感動し、マイブームになった。食べるときは出来れば素朴な味わいのブラウンブレッドがお勧めだ。香ばしさが倍増する。
本格的に作る場合は、ブラウンシュリンプと呼ばれるヨーロッパエビジャコを使う。コエビ下目に属するエビの一種で北東大西洋に広く分布してる。イギリスではもちろん普通にブラウンシュリンプは手に入るが、手に入らない海外にお住まいの方は、小えびを使っても美味しく出来るのでご安心を。イギリスでもこのブラウンシュリンプを使わず普通の小えびを使っていることもある。
恐怖の高カロリー、ポッテッド・シュリンプのさらに美味しい食べ方
さて、この「ポッテッド・シュリンプ」だが、材料表をご覧いただくだけでかなりのカロリーだろうと鳥肌が立つ人も少なくないはず。先ほど要約したように結局のところバターなのだ。今回の前菜に出てきたのが小さなココット型1個分が一人分。私はココット型にたっぷり入ったポッテッド・シュリンプを見たときは、これを家族でシェアするのだと勘違いしたほどだ。
パンを食べる時どう考えたって、ホテルの朝食に出てくるような小さなパックのバターで十分パンは美味しくいただける。
「たっぷりつけて食べてね!」と言われても、私の中でのたっぷりと言う分量をはるかに超えている気がする。恐る恐る私の中の精一杯のポッテッド・シュリンプを塗ってみたのだが、ホストとホステスのご夫婦からしたら残念な食べ方だったらしく、「もっともっと!」とまるで一気一気と煽られた昔の飲み会を思い出す。ビールの一気は好きだが、バターの一気塗りは初めての経験で、楽しい夜になったのである。確かにちょっと塗ったぐらいではこの料理の本当の美味しさは味わえない。このお料理の魅力に取り付かれ、家に戻っていろいろと調べていると、おもしろい話も出てきた。
ジェームスボンドの生みの親も愛する味
イギリスを代表する007ことジェームスボンドの作家イアン・フレミングの大好物だったのだそうだ。映画ではあまりフォーカスされないが、著書の中では食事シーンがかなりリアルに描かれているらしい。小説の中にこのポッテッド・シュリンプが出てくるかは読んでいないので証明できないが、作者のイアンフレミングがこのポッテッド・シュリンプを愛していたことは確かだ。007も食べたかも(?)知れないイギリスのポッテッド・シュリンプ。カロリーを、このときだけは気にせず、いつものバターの3倍塗って食べて頂きたい。
ポッテッド・シュリンプ《レシピ》
材料 4人分(小さなココット形2個分)
バター 90g
小エビ 90g
フレッシュローリエの葉 2枚(フレッシュなものがなければ乾燥でもよい。)
カイエンヌペッパー 小さじ1/4弱(かなりスパイシーなので好みで加減する。)
塩 小さじ1/4 弱
レモン汁 大さじ1
作り方
- 小鍋にバター、ローリエの葉を入れてバターを中火で透明になるまで溶かす。
- 溶けたら、小エビ、カイエンヌペッパー、塩、レモンを入れて全部が馴染んだら火を止める。
- 小さなココット形にローリエの葉を立てて②を半分ずつ入れ、最後にカイエンヌペッパー(分量外)をふりかけ冷蔵庫で冷やし固めて完成。
ポイント
季節によるが、冷やす時間は3時間ほど。前日からの作り置き可能。
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