
どんな料理?
バブル・アンド・スクイーク(Bubble and Squeak)は、イギリスの家庭で親しまれる素朴な料理である。もともとはローストディナーの翌日に残った野菜を再利用する料理として生まれた。主な材料はローストポテトや茹でにんじんやキャベツで、塩と胡椒で味付けするだけのシンプルさが魅力である。
私が初めてこの料理を自分で作ったのは、イギリスに住み始めてすぐの頃である。日曜のローストディナーを家族と食べ終えた後、残り物をどうしようか迷っていた私に、義理の母がにこやかに教えてくれたのがこの料理であった。「残った野菜を無駄にしないのよ」と言われ、翌日のランチとして作ってみた。フライパンに入れた瞬間の調理する音に心が弾んだのを今でも覚えている。
名前の由来
「バブル・アンド・スクイーク」という名前の由来は、焼くときに出る泡(bubble)と、じゃがいもや野菜がフライパンの中できゅっきゅっと音を立てる様子(squeak)から来ていると言われている。18世紀の料理書『The Art of Cookery Made Plain and Easy』にも記述があり、ロースト肉の残りを少し加えることもあったそうだ。
イギリスの食卓で
イギリスでは日曜に家族そろってローストディナーを楽しむ。その翌日、月曜の朝や昼に登場するのがこの料理である。残り物を大切に使い切る「賢い家庭の知恵」が込められた一皿で、香ばしさと野菜の甘みがしっかり味わえる。私自身も、義理の母から教わった作り方を思い出しながら、自分の家族にも伝え続けている。
私流アレンジ
イギリス料理のバブル・アンド・スクイークにベーコンやチーズを加えたり、ぴりっとスパイシーに私流にアレンジすることもある。ローストディナーの残り物の野菜を炒めて作る伝統的なイギリス料理であるが、材料をわざわざ用意して作り、おつまみとしてワインやビールと一緒に楽しむこともできる。フライパンでさっと作れるので、日本の皆さんにも気軽に楽しんでいただける一品である。今回はローストポテトではなくマッシュポテト、キャベツ、玉ねぎ、ベーコン、チーズという身近な食材で作ろう。
バブル・アンド・スクイークのレシピ
材料(2人分)
- 男爵などのデンプンの多いじゃがいも……250g
- キャベツ(太めの千切り)……35g
- 玉ねぎ(薄くスライス)……50g
- ベーコン(1cm幅)……40g
- チーズ(すりおろし)……35g
- バター……15g
- 牛乳……大さじ3
- 粗挽き黒胡椒……小さじ1/2
- 塩……小さじ1/4
作り方
- 皮をむいて4等分にしたじゃがいもをたっぷりの塩(分量外)を加えた湯で柔らかくなるまで茹で、ざるにあけて水気を切る。鍋に戻して牛乳を加え、マッシャーまたはフォークの背で潰してマッシュポテトを作る。
- フライパンにバターを溶かし、玉ねぎとベーコンを炒める。キャベツ、塩、胡椒も加えてさらに炒める。
- 1のマッシュポテトの入った鍋の中に2の具材とチーズを加えてよく混ぜ、再び2のフライパンに戻す。スプーンの背を使って円形に成形する。
*必要であれば少量のオリーブオイルをフライパンに熱して作る。
- 中火で片面に程よく焦げ目がつくまで約4分焼き、裏返してさらに4分焼く。焦げ目のつき具合は目安なので、様子を見ながら焼き時間を調整する。