原作者と主人公の故郷、オックスフォード
タイトルがイメージ先行の『不思議の国のアリス』は英国オックスフォード大学の数学教師ルイス・キャロルが原作者。「アリス」という実際に存在する女の子に、ある夏の日、即興で作った物語がメインの世界的に有名な著作は各国で翻訳されています。ただ、ディズニーのアリスのインパクトが強いので米国で生まれたお話と勘違いされていらっしゃる方もいますが、物語の誕生は英国、オックスフォードが舞台なのです。
お茶会をテーマにしてレッスンやレクチャーをしている私にとって「アリス」は永遠のテーマ。オックスフォードは大学都市というより「アリス」原作者&主人公の故郷の街として渡英の際には、つい足を運んでしまいます。ロンドンから電車で約1時間と便利で日帰り旅もOK。色彩豊かな街は”ファンタジー”が生まれる要素に溢れています。
アリスファンの「聖地」へ
まずは ガイドブックにも掲載されているクライスト・チャーチ斜め前にある「Alice’s Shop」、アリスファンの「聖地」のようなお店は観光ルートとしてもアクセスも良いので立ち寄ってみると大人も楽しめる人気スポットです。
十数年前からずっと店内写真撮影禁止でしたが、昨夏はSNSの影響もあるのか撮影可になっていました。そして日本人スタッフがいて、普通に日本語でお買い物ができる環境になっていたのには驚きました。雑貨の種類も増えて小さなスペースですが夢がぐっと詰まった空間でのお買い物は時間を忘れてしまうほど。
街中で”アリス”を探せ
一方、街の中央のアーケードには「マッド・ハッター」「ホワイトラビット」が大胆にディスプレイされていて「ご当地」感があるのですが、特にアリス関係のお店があるわけではなく、洋服屋さんや、食料品店が並びます。天井のディスプレイのみがアリスキャラクターの浮遊物で、その素朴な造りが、ノスタルジック。スタイリッシュにリニューアルしてしまう昨今の流行から離れている空間は、このまま保持してほしいなと願ってしまいます。
街中のお土産屋さんもアリス専門店以外は、ハリー・ポッターのほうがメインになっているので、「Alice」という文字も、つい夢中に追ってしまいます。
高級な「ランドルフホテル」に潜入
さて、昨夏「ランドルフホテル」で「アリス アフタヌーンティー」という情報を目にしたのがきっかけで、レッスンネタになるかもと取材に出かけました。
ランドルフホテルは、オックスフォードの中心部にあり、ヴィクトリア時代の壮麗な建物が歴史を物語る五つ星ランクです。「アリス」という名のレストランやバーがあり、高級ホテルであるにも関わらず気軽に利用できる感覚が、ひとり旅には、おすすめのスポット。
“アリス”という名のブラッスリー
まずは夕食に、「The Alice(ジ・アリス)」というブリティッシュブラッスリーへ行ってみることにしました。どんなメニューがあるのか?期待は膨らみます。
パステルカラーで描かれた店内のイラストは、とてもラブリー。おなじみジョン・テニエルの画でないのが残念でしたが、逆にレアな雰囲気のアリスのキャラクターたちの表情もユニークで金の額装に天井からはシャンデリアとゴージャス。ただテーブルや椅子はカジュアルで、それは、ある意味「不思議空間」なのかも?店内は大賑いで家族やグループ客が盛り上がっていて活気あるオックスフォードの週末を肌で感じました。
こちらのThe Aliceレストランでもアフタヌーンティーはできるのですが翌日、同じメニューを同ホテルの「ドローイングルーム」でいただきたいので、こちらではフィッシュ&チップスをメインにチョイスしました。メニューには興味ある英国料理がたくさん並んでいましたよ。
念願のドローイングルームにてアフタヌーンティー
ホテル正面ロビーの左手がアリスのブラッスリー、右手にはマントルピースのあるドローイングルームがあり、ずっと憧れの場所だったのです。
ストライプの壁紙にシャンデリア、カラフルなソファーは計算されつくしたコーディネートでクラシックとモダンの融合が素晴らしい。郊外ならではの空間のゆとりは、それだけでワンダーランドへの誘いでもあるのです。
Webでの「おひとりさま」予約でしたので、前日にも「明日はドローイングルームでアフタヌーンティーをお願いします」と念のためホテルスタッフに確認しておきました。それにも関わらず、当日予約の時間に到着すると、昨日行ったアリス・ダイニングのほうへ案内されそうになります。そんな際、過去の体験の数々から、お席の妥協はせずに、Web予約の際のコメント、前日に確認した件を話し、落ち着いて対応。少し待つことで、念願のお席に座ることができました。個人予約は毎回スムーズにいかないこともあるのです。オンシーズンで混雑していたから仕方ないことではありますが、晴れて、贅沢な空間を享受できたのです。
ティーセットは英国の高級陶磁器メーカー「ウィリアム・エドワーズ」。シンプルな白のティーウェアより、水色のストライプがモダンでクラシックな空間との調和が絶妙です。気になるアフタヌーンティーのお値段もロンドンの五つ星ホテルに比べたら半額くらいでコスパ上々。満面の笑みが広がります。
スリーティアーズでサーブされるアフタヌーンティーは残念ながらアリス物語にちなんでいるわけではなくスタンダード。
下段はコロネーションチキンやスモークサーモン。単独のキューカンバーではなくエッグマヨと共に、お味のハーモニーはお見事でした。
中段にはスコーン2種とジャム・クロテッドクリーム。上段の英国菓子も定番ものに、バッテンバーグケーキがピスタチオとラズベリーのカラフルバージョンで、ひときわ目を引きます。ホテルメイドのお菓子は甘さも適度で、どれも美味しい。
ただ、サービスの質はロンドンと比べたら「カントリーサイド」らしく?ゆる~い感じ。あッ、それが時間を気にせず、くつろげる良さですね、きっと。
日英「アリス」アフタヌーンティーの違い
最近の日本でのアフタヌーンティー人気はとどまることを知らず、そのなかでも「アリス」のテーマは全国どこかで展開されているほどの大人気のテーマです。ビッフェ形式も多く、イギリス人が見たら「これ、アフタヌーンティーなの?」と驚くものばかりかもしれません。それぞれ工夫をこらし物語のキャラクターがお菓子に変身したり、イメージを広げたドリンクやティーフードの数々は目を見張ります。
保守の国、英国、ここオックスフォードでは、ときめくアフタヌーンティーフードにはお目にかかれませんでしたが、同じ英国でもロンドンなど他の都市では近年、「アリス・イン・ワンダーランド」をテーマにしたアフタヌーンティーも増えてきています。ロンドンで、数ケ所訪れた経験がありますが、さすがのクオリティでした。
オックスフォードでは場所そのものが「アリスファンタジー」の街なので「トラディショナル」アフタヌーンティーで勝負できてしまう余裕があるのかもしれませんね。まさに「アリスの故郷でアフタヌーンティー」というタイトルどおり?
次回は、そんなオックスフォードが「アリス」に染まる?1日、「Alice’s Day」のレポをお届けしたいと思います。