- イギリス生活で日常的に使われる言葉"Sweet"(スイート)
- お菓子専門店"sweet shop"で売られる『boiled sweet』~飴~
- 世界で一番古いヨークシャーの"sweet shop"
- 200年近く続くお菓子屋さんは、50年前にタイムスリップしたよう
- 『The Oldest Sweet Shop in the World』の伝統的なお菓子や人気のお菓子たち
- 「ポンテフラクト・ケーキ」イギリス人であればだれでも知っているお菓子リコリスのひとつ
- 薬として栽培のリコリスから生まれた「ポンテフラクト・ケーキ」
- 偶然のきっかけの産物「リコリス・オールソーツ」と「ジェリー・ベイビー」
- "sweet shop"次回イギリス旅行の際にいかが?
イギリス生活で日常的に使われる言葉”Sweet”(スイート)
イギリスに暮らしていると、日常生活の中でSweetという言葉をよく耳にします。可愛らしい子供を見かければ ‘ She is so sweet.’ と言ったり、時にはスーパーのレジなどで、「How are you today, sweetie?」などと言われると「えっ?私に聞いてるの?」と耳を疑ったりして。甘いもの好きのイギリス人にとって、sweetという言葉は愛情表現にもなっているように思われます。
食べ物に関して言えばチョコレートであっても、”sweet shop”で見かける駄菓子であっても、時にはデザートまでがsweetと呼ばれます。
お菓子専門店”sweet shop”で売られる『boiled sweet』~飴~
イギリスには、”sweet shop”というお菓子専門店があります。昔から比べれば少なくなってはいますが、特に伝統的お菓子に興味を持つ若者、昔を懐かしむ年配の人たちに人気です。
このような”sweet shop”で主に売られているお菓子が『boiled sweet』です。これは日本の「飴」のことで、砂糖を煮詰めて香り、味、色をつけ足したもので、1820年ころから出回っているお菓子です。
世界で一番古いヨークシャーの”sweet shop”
さて今日はイングランド北部ヨークシャーにある世界で一番古い”sweet shop”をご紹介しましょう。イギリスには国立公園が全部で15ありますが、ヨークシャーと言えば野生動物や植物が生息するヨークシャー・デイル国立公園が有名です。広大な緑の田園が広がるヨークシャー・デイル国立公園はハリー・ポッターやダウントン・アビー他、多くの映画やテレビドラマのロケ地ともなっています。
このヨークシャー・デイル国立公園の一角にある小さな町がPateley Bridgeですが、実はここにギネスの世界記録に登録されている世界一古いお菓子屋さんがあります。その名も正に『The Oldest Sweet Shop in the World』(世界最古のお菓子屋さん)。現在のオーナーはご高齢のおばあさんと思いきや、なんと24歳のベン・ハウィーさんです。子供のころ母親とよく来ていたお店を最近買い取ったとのこと。
200年近く続くお菓子屋さんは、50年前にタイムスリップしたよう
お店の入り口に刻まれた1661という数字は建物が建てられた年代です。ここでハーブとスパイスを入れたお菓子を作って売り出したのが1827年のことでした。それ以来200年近く甘党の地元人だけではなく海外にも顧客がいるとか。
こんなに可愛らしいお店です。だまって通り過ぎるわけにはいきません。
中に入った瞬間、そこにはまるでタイムカプセルで50年前に戻ったかのような今とは全く違う世界があります。色とりどりのお菓子が入ったガラスの入れ物が、所狭しと棚に並び部屋の隅々にまで甘い香りを漂わせています。
周りを見ると、そこには昔食べたスイーツを目の前に、夢見心地な気分でノスタルジックな世界に浸っている大人たちがいます。そして多くのスイーツが昔からのレシピで作られています。イギリスで子供時代を過ごし、今は海外で暮らしている顧客にネット販売もしているとのこと。
それではここで『The Oldest Sweet Shop in the World』で売られている伝統的なお菓子や人気のお菓子をいくつかご紹介しましょう。
『The Oldest Sweet Shop in the World』の伝統的なお菓子や人気のお菓子たち
「ルバーブ&カスタード」ボイルド・スイーツと聞けば真っ先に頭に浮かぶ伝統的なお菓子。
「ミント・ハンバーグ」 昔から人気のミントの効いたボイルド・スイーツ。
「ライオン社製フルーツサラダ」フルーツの香りが広がる固めのゼリー(「ガム」という)。
「サワー・アップル」口の奥が痛くなるほど酸っぱいボイルド・スイーツ。
「シャーベット・レモン」 最も伝統的な飴のひとつ。レモン飴の中に粉末のラムネが入っているボイルド・スイーツ。
「ポンテフラクト・ケーキ」イギリス人であればだれでも知っているお菓子リコリスのひとつ
さて、”sweet shop”で売られているお菓子には、ずいぶん古いものがあります。その筆頭に挙げられるのは何と言ってもリコリスではないでしょうか。イギリス人であればだれでも知っているお菓子です。リコリスという植物から作られるお菓子ですが、この植物は11世紀に十字軍や修道士によって薬としてこの国にもたらされました。
リコリスの中でも特に有名なものは「ポンテフラクト・ケーキ」です。
ケーキと言っても皆さんが想像するケーキではなく単に固形と言う意味で使われているのですが、『The Oldest Sweet Shop in the World』から車で1時間ちょっと南東に行ったところに11世紀に建てられたポンテフラクト城があります。そこはイギリスの歴史に残るお城で、シェイクスピアの作品「リチャード2世」「リチャード3世」の中にも登場します。
リチャード2世は1399年にこのお城に監禁された後餓死させられたということですし、16世紀にはヘンリー8世の5番目の妃であったキャサリン・ハワードの情事の場所となり、そして17世紀の市民革命の際は激戦がおこなわれたところなっていますので、暗いイメージは拭い去ることはできません。
薬として栽培のリコリスから生まれた「ポンテフラクト・ケーキ」
ところが18世紀初めにこのお城は全く別の用途に使われることになったのです。リコリスの栽培です。当時、リコリスは薬として使われていて、決して美味しいものではありませんでした。リコリスの長い根を育てるには高台にあるお城が最適で、お城の地下牢獄を利用してリコリスの栽培が始まりました。そして1760年、お城の近くで薬局を営むジョージ・ダンヒルが胃潰瘍、胸やけ気管支炎、更には肺結核にまで効くと言われた薬としてのリコリスに砂糖を混ぜて売り出したのです。これが大成功し、現在の「ポンテフラクト・ケーキ」が出来上がりました。
ポンテフラクトの町では今でも夏にリコリス祭りが行われています。そこではお菓子だけではなくリコリス風味のビール、パン、ケーキなどが売られていて、子供用のイベントや大人のためのリコリスに関する歴史などのレクチャーもあるとか。
偶然のきっかけの産物「リコリス・オールソーツ」と「ジェリー・ベイビー」
リコリスの話は更に広がります。1899年お菓子屋で働いていたチャーリー・トンプソンという人がお客のためにトレイに色々なお菓子を載せて持って行こうとしたときに、何かに躓いてトレイをひっくり返してしまいました。載っていたお菓子がミックスされて「まあ、綺麗!」とお客が喜んだことにヒントを得て出来たのが、「リコリス・オールソーツ」(Liquorice Allsorts)です。
さて、偶然に出来上がったお菓子は他にもあります。「ジェリー・ベイビー」です。
1864年、あるお菓子工場で働いていた人が熊の形をしたゼリーを作るために、その型を作るよう言われました。出来上がった型でゼリーを作ったところ、それは到底熊とは言えず、むしろ人間の赤ちゃんに似ていたので、「いっそのこと、“ジェリー・ベイビー”にしよう。」ということで出来上がったお菓子が「ジェリー・ベイビー」です。
「ジェリー・ベイビー」熊にも見えるし、人間の赤ちゃんにも見えるし・・・・
“sweet shop”次回イギリス旅行の際にいかが?
“sweet shop”の特徴の一つは、今でも昔の量りを使っていること。
お店に足を踏み入れた瞬間から完全に50年前、いいえ、もしかしたらもっと古いイギリスが感じられる、そんな“sweet shop”を是非皆さんも訪れてみてください。
【ショップ情報】
『The Oldest Sweet Shop in the World』
https://oldestsweetshop.co.uk/
39 High St, Pateley Bridge, Harrogate HG3 5JZ イギリス