ウッドストックの『マールボロ・アームズ(The Marlborough Arms hotel)』
日本から家族や友人がイギリスにやって来て旅行する場合、イギリスらしい宿泊施設を探します。今日は「イギリスでしか経験できないようなホテルに泊まりたい!」と、それが目的でイギリスにやってきた友人と泊まったホテルのことをお話しましょう。
場所は世界遺産になっているブレナム宮殿のあるウッドストック。この町はオックスフォードから車で20分くらいのところで、通常は車やバスで通り過ぎるか、またはブレナム宮殿を見学して帰るのですが、ちょっとだけ時間をとってイギリスらしい町並みを散策するのもいいもの。30分も歩けば町全体が歩けるほどの小さな町です。
ウッドストックで友人と泊まったホテルは朝食だけを提供する小さめのホテル『マールボロ・アームズ(The Marlborough Arms hotel)』です。この場合のarmsとは紋章を意味します。また公爵の名前のみを使う時は「マールバラ」ではなく「モルバラ」になります。複雑ですね。
仕事柄私は800年前に建てられたお城や、18世紀の貴族の館がホテルになっているところにも泊まりました。でもそういうホテルは、客室は完ぺきにモダンになっているところが多く、客室は特に「古い!」というイメージはあまりありません。今回このホテルを選んだ理由は、普通っぽい建物ですがなんとなく内装も古そうですし、1469年に建てられたと聞いて、もしかしたら客室もその時代の物かも?という期待があったからです。もしそうであれば、シェイクスピアが生まれる100年も前のことです。予約時に、「古さを感じられるお部屋」とお願いしておきました。
私たちの泊まった部屋は3階にありました。そこは屋根裏部屋です。日本からいらっしゃる方は屋根裏部屋と聞くとメイドさんのお部屋を思い出すのか、あまりうれしそうではありません。でも、そういうところにイギリス的な素敵な部屋があるのです。
保存しなければいけない建物のリストに登録されているこのホテルは、簡単に床に穴をあけてエレベーターを作るわけにはいきません。
ハーハー息を切らせながらスーツケースを持って3階に上がります。部屋のドアを見てまずびっくり。いくら古くても、「ウン?ドアの下に隙間!ドアの一角が短すぎる!隙間風が入ってくる!」
と、思ったのですが、問題はドアではなく、床が歪んでいる事に気が付いたのは、部屋に入ってからでした。部屋の中はとても心地よさそうなベッドやソファーがあります。そうだった!「床に合わせてドアを作ればドアが開かない。」ということになるのです。
でも窓を見て二度びっくり。ずいぶん高いところに小さな窓があります。なんだかゾクゾクしてきました。窓が小さいのは、古い証拠。改築もされていないようです。
窓の外はどんな感じ?と椅子の上に乗って外を眺めると、向かいの家も古そうで屋根に波が打っています。
そして柱と言う柱は白い石膏のようなものが塗られています。木の梁のある古い部屋はよく見かけます。そのような梁は、木肌がそのまま見えるもの、茶色や黒で塗られているものが多いのですが、もっと古いのは石膏が塗られている梁です。これは木に虫が巣くらないようにと考え出された中世の人の知恵です。
友人は、ただただ古い様子に感激していたようですが、私にはそれに加え、昔ここに住んだ人たちのことを想像しながら、まるでタイムマシーンでタイムスリップした感覚です。
ガラスも当時のもの?まさか!と思いながら近づくと、それはやはり新しいものでした。
でもビンの底のような丸い模様。昔は板状のガラスはビンを伸ばして作られていて、当時のビンの底が残ったものが多かったようです。現在では、飾り用としてわざとビンの底の模様がついているガラスもよく見かけます。ここの物は、オリジナルではないにせよ、古い内装に調和がとれるよう作られていて、そんな心遣いもうれしいものです。
で、気になるのはバスルーム。いくら何でもバスタブは新しいのかも?と、中に入ってみると、実に近代的なバスルームでした。でも古い建築をうまく使ってデザインされた心地良いバスルームでした。
イギリスには300年くらい前に建てられたホテルやBBですと沢山あります。そんなところで昔の人々を想像しながら一泊するのも、イギリス滞在の特別な思い出になるのではないでしょうか。
The Marlborough Arms hotel
26 Oxford Street
Woodstock,Oxfordshire,
OX20 1TS
ホテル公式サイト:https://themarlborougharms.co.uk/
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