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イギリス映画談 ~シェークスピアと、その妻、その家族を描く『ハムネット』

2026年4月10日公開

©2025 FOCUS FEATURES LLC.

超有名人シェークスピア

劇作家としてこれほど有名な人はいないだろう、シェークスピアである。
いや、劇作家かどうか知らない人でも、シェークスピアの名前を知っているだろう。舞台演劇を見たことがない人でも、彼の作品名をいくつか挙げることができるはず。それくらい彼とその作品は世界に知られている。

ウィリアム・シェークスピア(ポール・メスカル)
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シェークスピアは数々の戯曲を書いた。「ロミオとジュリエット」「ハムレット」「オセロー」「リア王」「マクベス」と、今でも世界で上演される多くの作品を書いている。これらの作品には普遍的なテーマが上手く書かれていて、たとえばミュージカル「ウエストサイドストーリー」は恋愛・悲劇という意味で「ロミオとジュリエット」の現代版と言われたりする。
シェークスピアの4大悲劇とされる作品では、「ハムレット」が叔父に父を殺された王子ハムレットの復讐とそれによる苦悩を、「オセロー」は軍人オセローがライバルに騙され妻の不貞を疑い殺してしまう悲劇を、「リア王」は老いた父王が後継者選びに失敗し全てを失うという悲劇を、「マクベス」は欲に目がくらんだ将軍マクベスの転落劇を描いている。現代にも通用するテーマで、いずれの作品も舞台だけでなく、度々映画化もされている。

シェ―クスピアは1564年4月26日(正確な誕生日は不明で、これは洗礼日)にストラットフォード・アポン・エイヴォン(生家が残っていて見学できる)に生まれ、同地で1616年4月23日に51才で亡くなっている。18歳のシェークスピアは1582年に8歳年上のアグネス・ハサウェイと結婚している。
彼女はこの時妊娠3か月で結婚を急いでいたようだ。

舞台に詰め寄る人々の中央にアグネス
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この映画はこの妻アグネスを中心に描かれている。アグネスからウィルと呼ばれているシェークスピアも、もちろん登場している。

ウィルとアグネス、3人の子どもたちの物語

森を愛し一人森の中で時間を過ごすアグネス、合図をすれば鷹が空から彼女に近づき腕にとまる。子供たちを教えていた教室の窓から、シェークスピアが鷹を腕に止まらせ歩いてくるアグネスを見染める。

森の中のシェークスピアとアグネス
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鷹を操る少し変わった神秘的な女性アグネスとシェークスピアは恋に落ち、結婚し3人の子どもを授かる。長女スザンナの下に男女の双子の次女ジュディスと長男ハムネットの3人だ。

シェークスピア家の食卓 シェークスピア、アグネス、長女スザンナ、
うしろ向きは双子の次女ジュディスと長男ハムネット
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題名の「ハムネット」は長男の名前だったのだ。Wikipediaによればハムネットとジュディスは1585年に生まれている。そしてハムネットは1596年に11歳で夭折してしまう。
シェークスピアが「ハムレット」を書き、上演されたのは1601年だった。息子のハムネットの死から5年後のことだ。

ハムネットと遊ぶシェークスピア
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映画の始まりにハムネットとハムレットは同じ名前だという引用が入る。シェークスピアの書く劇に出演したいと言っていたハムネット、その思いを汲んでシェークスピアは「ハムレット」を書いたのだろう。

ハムネット 11歳
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ジェシー・バックリーという女優

今年のアカデミー賞でシェークスピアの妻アグネスを演じたジェシー・バックリーが主演女優賞を受賞した。シェークスピアに多くのインスピレーションを与えたアグネスを静かに、熱く神秘的に演じて栄誉に輝いた。

シェークスピアの妻 アグネス(ジェシー・バックリー)
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1989年12月28日アイルランドのキラーニーに生まれた。2008年BBCのオーディション番組に出演し芸能界入り、アイルランドやロンドンの舞台に出演したという。2017年には「Beast」という映画で初主演したが、残念ながら日本では公開されなかった。2018年に「ワイルド・ローズ」に主演、日本でも見ることができた。グラスゴーを舞台に、カントリー歌手になる夢を抱くローズという女性を演じている。ロンドンやカントリーの本場アメリカのナッシュビルまで出かける物語だ。この作品での彼女の圧倒的な歌唱力には驚いた。
この後今回の「ハムネット」までに10作以上の作品に出演し、日本公開されたものもあるがそれほど目立つ作品はなかった。唯一歌を歌った可能性がある「Scrooge A Christmas Carol」というアニメのミュージカルファンタジー(声の出演)は、残念ながら日本公開はされなかった。
Wikipediaによれば、2021年ロンドンのウエスト・エンドでの舞台「キャバレー」にサリー・ボールズ役で出演し、ローレンス・オリヴィエ賞のミュージカル主演女優賞を受賞したとある。あの歌唱力なら当然でしょう。見たかった。
今回の「ハムネット」は4月10日公開だが、1週間前の4月3日に公開される「ザ・ブライド」にも主演している。

映画を作った人たち

監督は中国・北京出身のクロエ・ジャオ。15歳でロンドンの寄宿学校へ、卒業後はロサンゼルスの大学で政治科学を学び、のちにニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・アートで映画製作を始めた。2015年に長編映画監督デビューし、3作目の2020年「ノマドランド」でアカデミー賞監督賞を受賞している。
原作の小説「ハムネット」(日本でも出版)の作者マギー・オファーレルは、映画の監督と共同で脚本も書いている。小説も数々の賞を受賞、ベストセラー1位にもなったという。
映画の製作者にはスティーヴン・スピルバーグ、サム・メンディスが名を連ねる。今年のアカデミー賞授賞式を見ていたらスピルバーグが確か「ハムネット」陣のところに座っていた。クロエ・ジャオも製作者の一人になっている。つまり三人の共同製作だ。
撮影監督はポーランドのウカシュ・ジャル、「COLD WARあの歌、2つの心」「関心領域」等の作品がある。

シェークスピアの時代の愛と悲しみの物語をご覧ください。

公式サイトhttps://hamnet-movie.jp/

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